膝の絆創膏
あの頃の僕は君の憂鬱に惚れていたし、君だって僕との会話に少しはときめいていたんじゃないの?
秒速で進んでいく時計の針に、君はいつだって逆らっていたね。
僕はいつもそんな君をみて君の髪を切りたいと思っていた。君の少し右に曲がった前髪はきみの気持ちだったのかもしれない。
教科書の落書きも、机に書いた好きな歌詞も、小テストの赤いインクも、汚れたカーテンも、全部全部きみが作ったものだった。
鍵の閉まった屋上のドア。
その前で君は短いスカートも気にせずあぐらで座って、その絆創膏を見せつけていた。
あと3分待って。
君は首を傾げて僕を鬱々とした表情で微笑む。
秒針が音を鳴らす。
僕はきみに近づきたくて、階段を一歩登る。
君が僕をフレームに入れて
そこがいいかな、と呟く。
僕は無意識に君の目を見る。
君も僕をみて。
5時の1分前。
秒時が止まる。
チャイムが今、息を吸った。
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