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電車に乗って

今日は、久しぶりに電車に乗っておでかけ。

といっても、3ヶ月に一度の歯科検診という、全くかわいくない用事だ。歯医者さんに診せるだけだしな、と迷った末に一応薄く化粧はしてきた。眉を描いてファンデをのせる。ただそれだけだ。


電車に乗って、驚いた。すれ違う女の子たちの、みんなかわいいことに。

マスクで隠れるから、なんて言い訳せずに、お肌は輝いているしアイシャドウがきらきらしている。紐がひっかかって気になるだろうに、耳元にはピアスも揺れている。今日は少し涼しいけれど、サンダルの足元にはスカイブルーのペディキュアがしっかり塗ってあった。

隣の恋人と仲睦まじく話している彼女以外、その行き先はわからない。久しぶりに会う友人かもしれないし、ちょっと遠出して穴場のカフェに行くのかも。

でも、理由はなんであれ、彼女たちには心待ちにする用事があって、その気分を盛り上げるためにかわいく綺麗に着飾っている。その姿が、とても眩しかった。


待ちあわせ、というのをずいぶんしていない。

「会おうよ」の一言から約束を取り付けて、じゃあ来週ね、とやりとりを終える。どこに行こうか。何を着ようか。楽しい時間は、約束ができた時から始まっている。

夫婦ふたりの生活は、穏やかだ。朝から晩まで一緒にいて、たまにケンカもするけれど、また明日、と眠りにつく。

でも、約束をして、「一番かわいい私」になって、待ちあわせするあの瞬間。改札の前できょろきょろ探しながら、早く会いたいような、まだ見つけたくないような。そんな時間がいとおしく、なつかしく思える。


彼女たちが、今日を楽しく過ごせるといいな。

そんな思いで、車窓をぼんやり眺めていた。


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