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詩や小説

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自作の詩や小説です。読んでいってくださいな。
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記事一覧

noteから引越しします

こちらで文章を載せ始めてから数年が経ちました。それまでは詩書きとして詩関連のサイトなり媒…

芦野夕狩
2年前
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夏の火花【小説】

「ゴム買ってきてよ、コンビニで」 暗い部屋に男の声がそっけなく響いた。女は「え~~~」と…

芦野夕狩
2年前
4

ねこの向こう側【ポエム】

お昼に食べきれなかったフライドポテトを口へ運んで ページを捲ろうとした右手がぎりぎり停止…

芦野夕狩
3年前
4

終末のシルエット

この町で ジャパニーズヤクザとチャイニーズマフィアの抗争が始まり もう何日経ったのだろうか…

芦野夕狩
3年前
3

巨人が踊っている

僕たちは幼い子供のように紐靴のかかとを踏みながら、聞き取ることのできない中国語をかき分け…

芦野夕狩
3年前
7

みミから出たサビしい

自販機から出てきたアサヒスーパードライと ヒールの折れた靴でバランスを取ろうにも 身体はど…

芦野夕狩
3年前
4

トマトにもカロリーがあると知る春の日

今日も今日とて体重計に乗る。若木がほっそりとしなやかに枝を四方に伸ばすのとは反対に、年輪の如く蓄積されていく、脂肪が、不摂生が。 エルビス・プレスリーがホットドッグを食べ過ぎて死んだという噂があるけどあれは不正確だとこの歳になって気付く。ホットドッグを食べ過ぎて死んだんじゃない、ホットドッグを食べ過ぎる速度にカラダがついていけなくなったのだ。生きることに速度を出し過ぎたものたちの末路だ。 一方、生きるのに速度を出し過ぎた人たちとは違って、男はベルトの上に乗る腹の肉に慄く。

おしりるんるん (詩・ポエム)

おしりるんるんはひとりぼっちでは息が出来ないから 夏の風のなかで尾びれを泳がせて君がつか…

芦野夕狩
3年前
5

就職の神

ハロワで障碍者向けの就職説明会があると言われて名古屋まで行ってきたのが先週か先々週だった…

芦野夕狩
3年前
6

羽の生えた帽子の国

彼女の首の後ろに穿たれた穴を塞いでいる金属がどんなものなのか僕は知らない。3年前のあの日…

芦野夕狩
4年前
7

キッチン

親子丼ですね、はい、分かりましたよ。そう言ってしばらくの間なにもできないでいるのは、あな…

芦野夕狩
4年前
8

おりこうさんまつり

地道におつりをもらうので富豪になりそうだった男が逮捕された 俺はおつりは一度しか受け取ら…

芦野夕狩
4年前
4

木は旅が好き

 駅前に植わっていたニシキギの紅葉が終わった。錦鯉が鯉の代名詞であるように、錦木が木の代…

芦野夕狩
4年前
6

間違った呪文で

高層ビルの屋上にはヘリポートがあるんだと思ってたよ、というアヤコの言葉を遮るように遠くに見える港に夕日が落ちていく。その光がアヤコのもう随分やせてしまった身体を空間から切り抜くように私たちの目の前に存在させるから、どうしようもないほど強い風になびく髪を抑えつけていたナナエは、その時間を失ったかのような光と影の彫刻のなかで、かたくなに影に染まっていく背中に一歩一歩近づいていくしかなかった。やわらかな双球がアヤコの背中で押しつぶされて、このまま落下してしまうことに堪えがたいあこが