Yu Matsubara

趣味の垂れ流しです

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  • 海と山の往復書簡

    • 5本

    ”海”に住む者と、”山”に住むもの。相反する両者が”言葉”を通じて響き合う。

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自著『氾藍』_あとがき公開

自著『氾藍』について .  昨年ミニマム自費出版をした自著『氾藍』のあとがきを公開します。  当初は本を手にしてくれた一部の人に見せるだけで充分だったのですが、より外へ開くことの重要性を実感したので。笑  第2刷、ほしいと連絡をくださった皆さんありがとうございます!!  ですがちょっと自分のお財布事情により、4月の印刷とさせてください(T_T)笑  実際本を置いてくれそうな場も見つけつつあるので、また追って連絡します!!  今後noteにも有料でエッセイと詩と小説を分けて載せ

    • 消えた弔い:あとがき/解説

      優しい文章が書きたい。 表現するということは、誰かに伝えるということです。 せっかく伝えるなら、その誰かにとって救いになるものをつくりたい。 これは、私が表現する上でのひとつの指標です。 長年かけて、好きな小説や作家さん、映画や絵画などのアートを振り返って言葉にできました。 そういえば、数年前の面接で 「あなたの夢は何ですか?」と聞かれて、 「自分のつくったもので誰かを救うこと」って答えたなぁ。 その前の面接では、 「あなたにとって幸せとは何ですか?」って質問に 「自分で

      • 消えた弔い

         俺は公衆電話を使ったことがない。  いや、使ったことはあるか。中学生の頃は携帯電話を持っていなかったから、生徒玄関に設置されていた公衆電話でたまに親の迎えを呼ぶことがあった。ただ、自転車での帰宅が困難なほどの天候悪化などに見舞われない限り、基本的にはその緑の物体を目で捉えることすらなかった。  だから、多分実際に使ったことがあるのも数えられる程度だと思う。それに今になって気付いたが、俺が言いたかったのは「公衆電話を使ったことがない」ではなく、「電話ボックスに入ったことがな

        • 生きるしるべ:「私の言葉をつむぎ、世界平和を実現する」

          生きるしるべができた。 最近、本当に色んな人たちのおかげで、私が生まれた頃からずっと抱いていた思いや考えが、ゆっくりと蕾になり始めている。 「私の言葉をつむぎ、世界平和を実現する」 これが、私の生きるしるべ。 状況や物事はたくさん揺らいで刻々と変わっていくけれど、 この時代に生きる私、あるいは私たちにとって、 きっとこのしるべは芯をとらえているはず。 それだけはずっと信じているし、信じていられる。 【解説】 ◯私◯ 1993.11.17に日本(福井)で生を受け、「松

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        • 海と山の往復書簡
          5本

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          【第二夜】海と山の往復書簡 2022.10.08

          怜生くんへ 海と山、どちらが大人でどちらが子どもか。 私たちの意見は今のところ違っていて、それが私にとってはとても興味深いことです。 人と意見を異にすることは、どちらかというと私が反射的に避けてしまうことではあるんだけど、 今回の違いはなんだかとても奥が深そうで面白く感じました。なんでだろうね。笑 ひとくちに「海」や「山」といっても、色々あるよね。 私は三国で育ったから、海といえば荒波が規則的な柱状節理に激しくぶつかって水飛沫をあげるものでしかありませんでした。 だから、

          【第二夜】海と山の往復書簡 2022.10.08

          【第一夜】海と山の往復書簡 2022.08.18

          怜生くんへ お手紙ありがとう。 日々があまりにも慌ただしく、怜生くんが一通目を書いてくれた日から、 もう一週間もの時間が経ってしまいました。 無理矢理に設計したような余白であることは分かりながらも、 こうやって筆を執り自分の内面を見つめる時間は、 やっぱり私にとって心落ち着く大切なものなのだと再認識しています。 怜生くんは、手紙を ”相手を見ていながらも、自分を見つめている。矛盾した営み” だと言っていましたね。本当にその通りだなぁと思う。 そして私は個人的に、会話におい

          【第一夜】海と山の往復書簡 2022.08.18

          決戦の時

          いざ、決戦の時。 この日のために全力を尽くしてきた。 長年のライバル、対F高戦。 試合開始の笛が鳴る。 俺は鼻から大きく深呼吸をした。 頭の中を空っぽにするため、 相手コートの中央を見つめる。 俺の得意技、フローターサーブ。 エースが得意とする時間差攻撃。 チームの持ち味でもあるクロス攻撃。 練習してきた数々の攻撃パターンが俺らを支える。 しかし、 たった一球で運命が変わる。 時が止まったかのようなその瞬間。 俺は生涯忘れないだろう。 ボールが自陣のコートに落ちる。 信じられ

          決戦の時

          喪失の日

          「ねぇ、これユリの家の近くじゃない? 大丈夫?」  奈々からそのメッセージが送られてきたのは19時37分。メッセージの前に着信があったが、電車の中だったので無視してインスタを眺めていたところだった。  さすがに気になる投げかけだったので、奈々とのトークルームを開く。メッセージの前に、動画が一つ送られていた。  家が燃えている。ニュースが、異様で、しかし確実に見慣れた風景を映していた。奈々の予想は大方正しい。一つだけ間違えていたのは、燃えているのが私の家の近くなのではなく、

          喪失の日

          降る

          まただ。 なんの脈絡もない 赤い鳥居 十数年前は向こう側にいた交差点 夕刻へと差しかかる群青の空 灯りを点け始める車たち このありふれた風景の 一体何が引き金だったのか 鳩尾のあたりに突然降ってきた哀愁 意識はいつも後から追いつくことしかできない そうか、もうすぐ君が いなくなるから

          隙間に花 その2

          彼は花を植えている。 家に帰ると、時たま花を植えているのだ。 それは完璧に不定期で、 数週間後に違う花を植えたり、 半年以上後にまた別の花を植えたりする。 その花の意味に気づいたのは、いつ頃だっただろう。 彼は何かとても幸福なことがあった後、 花を植えるのだと気づいた。 最初は、幸せな人だと思った。 それらは満ち足りた思いを祝福する花。 でも、花に水をやり、間引きや剪定をし、 枯れた苗を捨てる彼を見ているうちに、 どうやらあれは祝福の花ではないと分かった。 一度、酔っ

          隙間に花 その2

          隙間に花 その1

          花を植えている。 今日はピンク色のシクラメンを植えた。 あの人との思い出の花など、特にない。 ただ、その喪失に気付いた季節に咲く花を ホームセンターの売り場の中から選ぶだけだ。 喪失は確実に訪れる。 そしてその瞬間を意識的に見つめることもあれば、 過ぎ去った後、振り返るしかできないこともある。 例えば誰かと巡り会って、 その人といる時間が積み重なるということは、 その分誰かが私たちの傍から消えたということ。 時間が積み重なれば積み重なるほど、 私たちは今までの誰かを、

          隙間に花 その1

          手紙

          誰かに手紙を書きたくなりました。 あなたはいつかのあの人かもしれないし、未来の私かもしれないけど、 きっと私は今、生身の人間ではないあなたに、話を聞いてほしいのです。 ”生身の人間ではない”と書きましたが、 あなたも私も、もちろん生身の人間です。 ただ、私がこれを書く時、対話しているのは空想上のあなたであり、 あなたがこれを読む時、対峙しているのはただの紙切れであって、 私が言いたいのはつまり、そういうことなのです。 ここまで書いていて、あることを思い出しました。 いつか