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【今でしょ!note#80】 社会保障問題に対する明快な提言

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

先日、日本の社会保険料の現役世代負担がますます上がっていくという問題に対して、自分なりに基本的な知識は付けておかないと思い、記事にまとめました。

また、現状の社会補償制度がどのような経緯・考え方で成立したのか理解しておきたく、戦前からの社会保障制度の歴史について、全3回に渡り整理しました。

これらについてまとめた時には、少子高齢化が進む中で、明らかに現状にマッチしていない制度自体にエラーがあるというところまでは理解できました。一方で、具体的に何をどのように変えていく必要があるのか、という点までは、恥ずかしながら全く考えが及びませんでした。

梅澤高明さんの放送で、今後この問題をどうしていけば良いのか、という点について、3つの提言という形で明快にまとめてくれていました。
世の中には、こんなに頭がいい人がいるのか・・!と正直感動しました。

梅澤さんの話を聞いて気付いたことと合わせて整理しておきます。

前提知識付けてから話を聞くと理解度が全く違う

本題に入る前に、梅澤さんは数回に渡り社会保障について話をされてますが、上記で引用した記事を書いたあとで話を聞いたので、理解度が全く違いました。

その話は確かにその話は厚労省のレポートにあったな、と頷きながら聞いてましたが、数ヶ月前は、社会保障の詳細なんて理解できてませんでしたからビックリです。

本来、社会保険料が改革の本丸

まず、2024年度の税制改正で、所得税および住民税で一人当たり40,000円、総額約5兆円の減税が行われますが、過去の同様の減税効果を見ると経済浮揚効果は限定的であることを指摘しています。

一般的な共働き世帯の税・社会保険料の全体負担は収入の29%で、うち本人負担社会保険料と雇用主負担社会保険料が全体の20%で圧倒的に多いからです。

その後、消費税、住民税、所得税の順と続きますが、消費税は4%程度になり重要論点ではありません。

上述した「今でしょ!note#68」でもご紹介しているとおり、2023年度の社会保障給付総額は、約134兆円です。
年金60兆円、医療42兆円、介護13.5兆円と続きますが、これらの対GDP比率は23.1%、OECD平均の22%に近く、日本は中福祉の国だと言われています。もっと言うと「中福祉・低負担の国」。

年金60兆円は、各世代との長年にわたる約束なので大幅な削減は困難ですが、医療42兆円はGDP比9.6%で他の先進国と比較して高い比率となっており、ここを最初のターゲットとすべきとコメントされていました。

確かに、以下の記事でもご紹介したとおり、国民皆保険はかなり手厚い制度でしたから、医療保険は見直す余地がありそうです。

梅澤さんの3つの提言

国民皆保険制度自体は、日本国憲法第25条の生存権の保障するものであるため、維持する前提に立って、制度の持続可能性を高めるために以下3つの提案をされています。

  1. 生存権を保障する「福祉としての医療」と、「高度サービスとしての医療」を区別して制度を設計運用する

  2. 小さなリスクは自助、大きなリスクを制度で支える方針とする

  3. 不要・過剰な医療提供を誘発する制度の見直し

医療保険の二階建て

「医療保険の二階建て」として、一階部分に皆保険、二階部分は任意加入保険として、国民がオプションとして選択する考えを示されています。

どこかで聞いたことあるな、と思っていたら、以下の記事で整理した「基礎年金制度」の考え方と類似していますね。

1階部分に基礎年金、2階部分は厚生年金など

以前、国民皆保険が十分手厚いから、さらにプラスで民間保険は不要では?という考えに至っていたのですが、現状の国民皆保険の上にさらに民間保険に入っているというのは、3階部分を自分で作り出して、民間保険に入っているようなものだと理解しました。

高度サービスに該当するのは、高齢者に投与する高額な抗認知症薬や、安価な選択肢があるのにあえて選択されるロボット支援手術、ジェネリックがある高額な先発薬の利用を指しています。確かに、これらは生存権の保障という観点で公的に支援する内容としては過剰感があるので、望む人にはそれなりの負担をしてもらうという考え方は納得です。

また、医療費増加の要因としてしばしば高齢化の進行が指摘されますが、最大の要因は医療高度化による単価アップのようです。

大和総研の以下レポートによると、「2040年の医療費は、現在の約1.5倍増加する見込み」とありますが、高齢化要因で説明できるのは、その半分に満たないと指摘しています。

日本医師会のレポートによると、昔からあるX線撮影は1回1,000円程度ですが、MRI撮影は1回4,000円程度(今はもっと上がってるかも)になっているそうです。

二階建てにすることで高額医療の多くを公的な社会給付の対象外にできるので医療費抑制効果大きいと考えられます。

ジェネリック使用は、2000年代から継続的に推進され、使用割合は2005年の32.5%から2023年には80.2%と倍増以上です。

厚生労働省 「後発医薬品の使用割合の目標と推移」

二階建てにすることで、残り20%部分についてもジェネリックへの移行が進むことが予想されますから、仮にジェネリックが先発薬の半分以下の価格だと仮定した場合、さらに1兆円程度の圧縮効果があるそうです。

不要・過剰な医療供給見直し

梅澤さんは、タダだから・安価だからとりあえず診てもらう、という安易な通院を抑制する考えを示しています。

特に年金生活の高齢者は日中暇でしょうから、市販薬買って家で休めば治るものでも通院したり、何となく調子が悪いといった理由で通院する人も一定いそうです

1973年に70歳以上の老人医療費を無料化した時にも、「病院のサロン化(病院が暇な高齢者の溜まり場になる)」と「社会的入院の増加(医療の必要性が薄いのに長期入院を続ける)」が問題化しました。

当時は介護インフラが未整備で、老人病院が増加し、要介護者の無料の受け皿となってしまったことも背景にあります。

その後何度かの制度改正を踏まえて出来上がったのが、現在の窓口負担割合原則3割の仕組みです。

現状、70歳以上、75歳以上で、2割または1割負担になる仕組みとなっていますが、所得に応じて支払い能力がある人は年齢関係なく、原則3割とする案が提言されています。

引用されている研究結果では「窓口負担増により、真に必要な医療サービスへのアクセスは変わらない一方で、そうでないものは低減した」という事案が紹介されています。

そのように考えていくと、「変えようのない少子高齢化の前にただ立ち尽くすだけ」と思っていましたが、まだまだ無理なく改善できるポイントがあることが分かり、希望が持てますね。

まとめ(学びの観点から)

内容としては、社会保障制度の改善の方向性ということで、具体的な提言内容に沿って、補足データを付加してまとめてみました。

学びの観点からの気付きは、物事を理解するときには、やはり一定の自分で書いて理解してベース知識を付けるプロセスが出発点にあるべしということです。

吸収力が全然違う。

また、どうしようもないと感じている問題も、構造を分解して数字で理解することで、手の打ちどころが見えてくるというのも、今回の話から学ばせてもらいました。

自分も、これがすっと出来るようにトレーニングしていきます。

それでは、今日もよい1日をお過ごしください。
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