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香りと記憶。

香りと記憶というのは密接に関係しているという。

よく香りを嗅いで、懐かしい記憶や当時の感情が鮮明に蘇ったりすることがあるのではないだろうか。

この現象を『プルースト効果』と呼ぶらしい。

確かに香りを嗅ぐことで鮮明に記憶が蘇ったりする。

海外の洗剤の香り。
みんなと過ごした教室の香り。
入れたてのコーヒーの香り。
あの人のつけてた香水。

どちらかというと切ない思い出が蘇ることが多い気もするのだけれど。

特にあの人がつけていた香水は忘れることができない。
何のメーカーで何と言う香水なのかもわからないのだが、それでも時々同じ香水をつけている人と街ですれ違ったときは一気に思い出が溢れ出すからそれはそれでたまらない。

懐かしいなという思いと、ついあの人なのかなといるはずのない人を目で追ってしまう。

ただ私は逆にそれを利用していることもある。

本当は同じ匂いをずっと纏っている方が誰かの記憶に残りやすいのだろうとは思うが、私は大まかに2つほど香りをまとっている。

ベースはアーモンドミルク系の香り。
冬になると少し甘い要素を足して、フルーティさを追加。

香水は好き嫌いがあるだろうから、人と会う時はあまりつけないようにしている。
その代わり、ボディクリームをつけていく。
私の香りの元はこれである。

香水もそうだが、ボディクリームもちゃんと香ってくれるし、つける人によっては香り方が変わってくる。

私の場合は、つけると本来の香りより甘めに香るらしい。

「ゆずちゃんって香水つけてる?」

迎えに来てもらった車に乗り込んだ時に彼に言われた。

「ううん、なんで?」と聞くと、
「いつも甘くていい香りがするから」と。

そのときにつけていたのは、アーモンドミルク。
確かに甘い香りである。
寒い時期で会う時は必ずつけていたから、きっと彼の記憶に残っているだろうか。

もう会わなくなってしばらく経つ彼。

寒い冬が来ると私は変わらずルーティンのようにアーモンドミルクのボディクリームをつける。

つけるたびに、もし彼がどこかでこの香りを嗅ぐことがあれば私のことを思い出せばいいのにと呪いのように思ったりする。

そんなことを言いながら、つけるたびにそんなことを思っている私の方がよっぽど彼からの呪縛から逃れられていないのかと思いながらも今日も変わらずつけていく。





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