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エキスパートは誰にでもなれるの??

1 この記事での「意味を理解する」とは

 新しく与えられた情報と、今までもっていた知識(以下、既有知識という)との間に、整合的な関係を見いだすことを、「意味を理解する」と定義します。

 例えば中学校数学で二次方程式という用語が初めて出たとします。
 このとき、生徒の既有知識は、一次方程式です。
 一次方程式と二次方程式の愛大にある関係を類推して、整合的な関係を見いだすことができれば、二次方程式の意味を理解したことになります。

図1 意味を理解する

 「意味を理解する」ことについては、現行の学習指導要領で「数学的な見方・考え方」という言葉で説明されています。

 「数学的な見方・考え方」は、「事象を、数量や図形及びそれらの関係などに着目して捉え、論理的、統合的、発展的に考えること」

中学校学習指導要領(平成29年告示)解説数学編より

2 意味を理解するために大切なのは既有知識

 他者の知識を摂取するためには、既有知識が豊かで、しかも場合に応じて速やかに取り出せることが必要です。
 また、問題解決においても既有知識が重要です。既有知識があれば、その問題に隠された制約条件に気づいたり、問題の形を解きやすい形に変換することができます。これについては、稲垣・波多野が挙げた漫画「ミスター味っ子」の例が分かりやすいので、興味のある方は参照されてください。

3 エキスパートは、初学者より効果的に学べる

 ある分野に長けたエキスパートは、その分野では初学者よりも効果的に学べます。なぜなら、既有知識が構造化されており速く学習できたり、ある基準を一貫して用いるなどして適切な推論ができるからです。

 またエキスパートは、自分の得意とする分野で有能さを増したいという動機があるので、能動的な学び手にもなります。

4 日常生活ではエキスパートになり得る

 日常生活においては、誰もがエキスパートになりえます。なぜならば、自分が好き・得意な分野について学ぶので、学びに向かって動機づけがされているから能動的ですし、そのおかげで既有知識と関連づけて知識を取り組むことができるからです。以前の記事でも書いたように、日常生活においては、人は能動的で有能なのです。

 ですが、これが学校での授業になると話が変わります。これも以前の記事に書いた「伝統的な学習観」に問題があるのですが、要は自分の好き嫌いや得意・不得意に関係なしに与えられたことについて学ぶので、能動的な学び手になり得ず、エキスパートになり得ません。

5 エキスパートは他分野でも有能?

 サッカー選手のC・ロナウド選手はサッカーのエキスパートですが、卓球もとても上手らしいです。
 これは持って生まれた才能だからでしょうか?

 私はそれだけではないと思います。
 これは、エキスパートが得意な分野の知識を使って、別の分野の問題解決に転用できるからだと考えられます。転用できるため、初学者より荒唐無稽な推論をすることがないため、速く上達します。

図2 エキスパートは別の分野に知識を転用できる

6 最後に

 この記事に書いたように、エキスパートの領域に達すれば、別の分野でも知識を速く吸収できます。
 また日常生活においては、誰もがエキスパートになり得ます。

 次の記事は、日常生活から学ぶことの限界と、教え手の教師の姿勢について書きます。
 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!

・参考文献


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