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ホワイト・ボニータ

かつて、東京都千代田区の地下鉄「神田」駅構内には、女性限定メニューのコーヒーが飲める喫茶店があった。
マスターは今時の表現でいう「イケオジ」な「渋オジ」様。
店の佇まいもセットで、思い出に残っている。

通信制大学の夏期スクーリング(面接授業)を受講する期間中、滞在していたホテルから一番近い出入口の階段横に、その店があった。

大学に関係なく東京で友人と遊んだ時に案内したら、
「よくこんなわかりづらい場所にある店、見つけたね!」
と感心された。

何のことはない。
たまたま夏期スクーリング中に、地下鉄で通学していただけである。
初日にホテルに戻る時、階段の途中で喫茶店があることに気づいたのだ。

雰囲気に惹かれたのと、メニューをチェックしたいのとで、入ってみた。

軽食類のメニューに食べたい物はない。
飲み物のメニューを見ると、女性限定メニューが一品ひとしなだけある。
「ホワイト・ボニータ」という名のコーヒー。

紅茶派ではあるけれど、好奇心に駆られて注文してみた。
女性で良かったと思える、数少ない出来事のひとつ。

コーヒー通のように、詳しい解説はできない。
ただ、もう一度飲んでみたいと感じた。

スクーリングで滞在中にもう一度飲み、のちに地元・名古屋の友人を案内した時に飲み、計3回飲んだ。

案内した友人はコーヒー派で、オジサマが好きなようだったので、
”お茶を飲みに入るなら、あの喫茶店!”
と、出発前から決めていた。

お店やコーヒー、マスターに対する感想よりも、お店を見つけたことに感心されたことを強く覚えている。
かなり派手に感心してくれたからだろうと思う。
お店やコーヒー、マスターのことは、悪く言ってはいなかった。

そういえば、某男性デュオのお一人に出したファンレターに、こんなようなことを書いた。

FCから届いた年賀状でKさんの女装姿を見て、母が「この女の人、誰?」と言っていました。
本物の女性に見えたようです。
地下鉄神田駅の階段横に、女性限定メニューのコーヒーがある喫茶店があります。
コーヒーの名前は「ホワイト・ボニータ」です。
女装して注文すれば、飲めるかもしれませんよ!

1990年代のいつかに出したファンレターより

Kさんがどうしたのかは、知らない。
それ以前に、読んでもらえたのかどうかも、わからない。
今度ファンレターを出す時に、このエッセイのURLを書き添えておこうかしら?
などと思っている。

それはそうと、「ホワイト・ボニータ」を思い出したのは、小説の最新作を書いたのがきっかけだった。

食後のコーヒーの種類を何にするか考えた時、
”神田の喫茶店にあった「ホワイト・ボニータ」は、オリジナルブレンドかもしれないけど、もしかして「ボニータ」という種類があったりする?”
と思い、ググってみたら……あった!

上位ヒット記事のタイトルに入っている数で判断すると、「ボニータ」よりも「カフェ・ボニータ」と呼ばれることが多いようだ。

しかも、産地は南米。
”南半球では、誕生花がミモザ”
という部分と、南半球ネタ繋がりにできる!

そして、「ボニータ」という言葉自体の意味を調べてみると、スペイン語で成人女性に対して、内面が可愛いと言いたい時に使えるとわかった。
(外見の可愛らしさを表現する時は、子どもや物に対して使うとのこと。)

長年「ボニータ」が何語なのかも気にせず、女性名かと思っていた。

マスターとは注文や支払いに必要な会話しかしなかったので、名前の由来やブレンドしているコーヒーの種類を聞いておけばよかったと、今更思う。
今となっては、カフェ・ボニータと何かのブレンドだろうという推測しかできない。

くだんの喫茶店に行ったのは20代の頃。
30代後半の頃に行ったら、セルフサービス式のコーヒーチェーン店に変わっていた。
「イケオジ」で「渋オジ」なマスターも居なかった。

「ホワイト・ボニータ」を飲みたくて、わざわざ通り過ぎた店が、同じコーヒーチェーン店だったのは、何の皮肉なんだろうか?
通り過ぎた店のほうが雰囲気が良く、客層も良さげだった。
残念に思いながら、仕方なく入った店で最低限の時間だけ過ごした。

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