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新美南吉 作『手袋を買いに』で見られる愛知の言葉

Twitterでこんなアンケートを実施していました。

回答を求めたい人達の属性がピンポイント過ぎて、全く回答を得られませんでした。

なぜピンポイントでそんな質問をしたかといえば、

…という訳です。
新美南吉の出身地は、愛知県半田市(お酢のメーカーとして有名な「ミツカン」の本社所在地でもあります)ですからね。

私は生まれた時からずっと名古屋市民=愛知県民でも、居住地の地域事情や、下の埋め込みツイートで言及している身内事情で、地元の言葉が「得意」ではありません。
書き言葉でも、話し言葉でも、なかなか自然には出てきません。

居住地は、名古屋市内の中でも全国各地から人が集まり、外国人も多い場所です。人の入れ替わりも激しいです。
そのため、書籍や(国語力が崩壊する前の時代の)アナウンサー・ナレーターさん達の言葉をお手本に、極力、標準語を使うようにしてきました。
身内の大人達が地元の言葉で話していても、私だけは。

そこで、Google先生を頼ってみることにしました。
得られた結果は、次の通りです。

地元の言葉が衰退気味な場所では「古語」かもしれませんが、新美南吉が生きた時代には、「地元の標準語」だったのではないかと思われます。

なので、もしこの作品を私が朗読する機会があれば、「黄い」の部分は、あえて「きいない」と読みたいです。
(自分以外の作品を朗読するなら、「青空文庫」の作品と決めています。もし「Writone(ライトーン)」で音声化・有料販売できれば、売上の30%を「青空文庫」に寄付できるのです。)


それから、この作品の「漢字の読み」ではない部分的解釈などについて、少し。

それは樅(もみ)の枝から雪がなだれ落ちたのでした。まだ枝と枝の間から白い絹糸のように雪がこぼれていました。
 間もなく洞穴へ帰って来た子狐は、
「お母ちゃん、お手々が冷たい、お手々がちんちんする」と言って、濡(ぬ)れて牡丹色(ぼたんいろ)になった両手を母さん狐の前にさしだしました。
青空文庫 新美南吉『手袋を買いに』より引用)

※読み仮名部分は、漢字の上に記載があるものを( )内表記に書き改めました。

の文中にある

「お母ちゃん、お手々が冷たい、お手々がちんちんする」
青空文庫 新美南吉『手袋を買いに』より引用)

の意味を、紐解いていきます。

「ちんちん」とは、愛知県の言葉で「(触れば火傷をするくらい)非常に熱い」ことを意味します。
男性の生殖器を表す俗語とは、発音アクセントが異なります。
愛知県民は、言葉の意味によってアクセントを使い分けるのです。

ですが、引用した子狐の言葉の中では、男性の生殖器を表す俗語と同じアクセントになります。
前後の文脈により、発音変化を起こすパターンです。

では、発音はさて置き、意味の解釈について。

子狐は、雪に濡れた手が「冷たい」と言ったあとで、「ちんちんする」と、一見、矛盾することを言っています。
「冷たい」のに「非常に熱い」?

そこで、こう考えてみます。

「(触れば火傷をするくらい)非常に熱い」という意味で「ちんちん」の物を触れば、「熱い」というよりは「痛い」と感じます。
きっと、手が冷えすぎて痛かったのでしょうね。
その痛さを、子どもなりの語彙で「ちんちんする」と表現したのかもしれません。

そして、手が冷えれば、自律神経による体温調整機能が働くので、「冷えているのに何だか熱い気もする」ということがありそうです。
それを表現したのか、痛みも含めて表現したのか、故人にインタビューできる方法があるなら、尋ねてみたいことのひとつです。


※埋め込みツイート文中の「ぬくとい」は「温かい・暖かい」という意味です。書き言葉では漢字の使い分けが必要となりますが、一語で表現できます。



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