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「ランドセル騒動」超短編小説

3月21日 ランドセルの日
ランドセルを加工してミニチュアを作成する職人さんが制定
3+2+1=6 小学校の6年間から

ついにわたしもこの問題に直面する日がやってきた。
そう、娘のランドセルどれにするか問題。

意気込んで夫と娘と近所のショッピングセンターに来たものの、一向に決められない。

わたしは焦っていた。早く買ってしまわなければ、そして買いましたって知らせなければ。
そうしないとババア、じゃなかった、ばあばとじいじが勝手に買ってきてしまう。

ババア、じゃなかったお義母さまは良く我が家に遊びに来て下さる。
だから夫の実家から車で片道30分のところなんかに住みたくなかったんだよ。

この間も唐突にやってきて、4月に小学校に入学する娘のランドセルをまだ買っていないことを知ると
「早く買ってあげないとかわいそうでしょ。なんなら私が買ってきてあげましょうか」
なんて言ってきたから、丁寧にお断りしたがちゃんと聞き入れてくれたかどうか。

娘の小学校の入学準備はちゃくちゃくと進んでいる。
それなのにランドセルだけは、わたしが迷いすぎるせいでいまだに準備できていない。

わたしの子どものころのランドセルは本革の重たいやつ。男子は黒、女子は赤の一択。
選べないけど、どれにしようか悩むこともなかった。

ところが今は色が豊富で選びたい放題。
こうなると悩んでしまう。
奇抜な色を選んだら、娘が学校で浮いてしまわないか。
今はこの色がいいと選んでも大きくなってから違う色がよかったと後悔しないか。
派手な色は性格も派手だろうなと判断されるような、色で性格を決めつけられてしまわないか。
黒は心理的にも重たく感じる色らしいからやめた方がいいかな。
青系は寒色系、冷たく感じる色だから冬は寒いかな。
赤系は暖色系、暖かく感じる色だから夏は暑いかな。
気になりだしたらきりがない。

ランドセル売り場で悩み始めて何分たったか。
夫にあれこれ言っても適当なあいづちしか返ってこない。
こいつ、わたしが買い物に時間かけているといつも無になりやがる。
娘は興味ないのかランドセルを見もしない。
隣のおもちゃ売り場が気になるのか、わたしの手をとりそっちに引っ張っていこうとする。

そういえば肝心の娘の意見を聞いていなかった。
「どれがいい?」
わたしの手にぶら下がって退屈そうにしている娘に聞く。
悩むわたしとは逆に、娘は売り場にあるランドセルを一瞥しただけで
「これがいい」
とあるランドセルをすぐに指さした。


茶系!!


その手があったか。
色の心理学に左右されない。
人工革なのに本革を思わせるこの色。
ほんのりただよう高級感。
なにより服に合わせやすい。
わたしも鞄は茶系が多い。
さすがわたしの娘。センスいいわあ。


試しにそのランドセルを娘に背負ってもらう。
すごくいい。似合う。素敵。
娘も嬉しそうだし、夫も無から帰ってきてうなずいている。
よし!これに決定!


在庫の確認のため店員さんを呼びに行こうとした時、夫と娘の声が背後から聞こえてきた。
「なんでこれにしたの?」
「んとね、アンパンマンのおかおとおなじいろ!」

ん?


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