ほくろ潜っては息を継ぐ

「片方の掌で顔の中心を覆って隠れるところにほくろがあると、一生食べ物に困らない」なんてどこの迷信やら祖母に言い聞かされていた。掌を顔に当てさせては、嬉しそうに笑う。どういうわけだか、私のほくろは体の各パーツの中心に集まっている。あれからなんとなく自分のほくろが好きで、可愛がってきたのだった。

三十路前後から、盛んにほくろが消えたりできたりするようになった。体の表面から潜り込んでは息継ぎするように、気付いたときには移動している。

臍の上へ新たにほくろができた。ピアスのようで悪くない。

お気に入りの人差し指の中心にあるほくろが次第に薄くなって悲しんでいたら、これもまた潜り込んで足の人差し指の同じところへ顔を出していた。こんなにも広い体の表面の中であえてそこに。母親への執着が滲み出ているように思えてならないけれど、食べ物に恵まれるほくろに則って考えると、母親に恵まれている証ということか。

生きる糧