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色彩の教科書(43)ファミリーレストランの凄い色彩術

色の効果を最大限に活用した場所が身近に存在する。お馴染み、ファミリーレストラン(以下ファミレス)だ。
ファミレスといえば、その目指すところは「お客さんに、美味しい料理を、ゆっくりと楽しんでもらうこと」。というのは建前で、できれば普通の料理であってもよりおいしく感じてもらい、回転良くお帰りいただきたい、というのが本音であろう。実はこの本音の部分に、ある色が大きく貢献している。それは暖色。つまりオレンジや赤など暖かい色だ。
まずその入り口。ファミレスの看板が最初の仕事をしている。どの看板を見ても、一様に暖色が使われていることにお気づきだろうか。この看板の暖色には、店にとって非常にありがたい効果がある。それは食欲増進。人間は長い間、美味しいものを口にするときに、火や肉などの温かい色が傍らに存在していた。そのせいか、暖かい色を見ると、自律神経の中の副交感神経が刺激され、胃腸の働きが活発になり、食欲が増進される。つまり看板を見ながら、お腹を鳴らしつつお店に入っていくことになる。

さらに内装が活躍する

そして内装、椅子、壁、テーブルともやはり暖色が意識的に使われている。もちろんポイントにサラダのポスターや観葉植物などが配置されているものの、全体的なイメージは、暖かい色のイメージに包まれた状態だ。看板を見てそそられた食欲は、店内に足を踏み入れることで一層盛り上がる。
そして、テーブルを照らすライトも大きな役割を担っている。
出された料理を真上から暖かい色のライトで照らし、料理の味を何段も引き上げる仕事を行う。
そして極めつけは、暖色による、時間の経過に対する影響だ。すでにご紹介したとおり、暖色は時間の経過を早く感じさせる。つまり、もう2時間くらい経ったかなと思っていても、実際には1時間しか経っていない、そんな印象を与えることができる。つまりファミレスで過ごすお客さんは、内装で食欲をそそられ、ライティングによって出された料理をより美味しく感じ、さらにゆっくり過ごした!という感想を持ちながら、回転早くお店を出て行くことになる。まさに暖色はお店にとって願ったりかなったりの色なのだ。

暖色はお店にとって願ったりかなったりの色


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