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ああ、今日か。~胆振東部地震の話~

北海道というのは、なんとも地震に縁のない地域だった。
強いて言えば道東のほうでたまに揺れる。
地震の被害はテレビで見るだけ。
本当に、それくらいの感覚だった。

確かに予兆はあった。
数日間、短い間隔の揺れがあった。
だが、地震に縁遠い私はわからなかったのだ――これが、余震だったなんて。

あの日の夜。
経験したことのない強い揺れに飛び起きて、初めて机の下に避難した。

あの日の夜。
スマホの画面に映る「胆振地方 震度6強」という文字に手が震えた。

あの日の夜。
初めて父親が「死んだかもしれない」と思った。

あの日の夜。
父親の無事を確認できたあと、呑気な私はそのまま眠りについた。
これから数日間、悲惨な日々を過ごすかも知らないで。

点灯しない信号機。
直前の台風で無残に倒れた大木。
少しずつなくなっていくスマホの電波。
9月にしては暑い気温。
三日間(※当時住んでいた場所と職場)も復旧しない電気。

心が落ち着かない日々だった。
日が暮れるのを呆然と見ることしかできなかった。
そんな、無力な自分。

あれから5年。
あんなに非日常的な日々を過ごしたのに。
あんなに「人の死」の予感を感じたのに。
あんなに悲惨な災害だったのに。
あの日の感覚が、少しずつ消えていく。

ああ、今日か。
そういえば、「あの日」は本当に。
本当に、空だけは綺麗だったな。

2018.9.8


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