見出し画像

ゴジラの記憶 #14「ゴジラ対メカゴジラ」


初見は意外に遅くて89年だか90年頃にテレビで。ご存じメカゴジラが初めてスクリーンに登場した映画である。

実は、メカゴジラ、初めはゴジラの表皮を被った”にせゴジラ”として登場する。やがて現れる本物ゴジラが吐く光線を受け、メタリックな地金をだんだん覗かせ、大爆発とともにメカゴジラ本来の姿を現す・・・ってこういうの、どこかで観たことあるぞ?あっ、まんまターミネーターやん!!ということになるのだが、実はこの映画が制作されたのはターミネーター第1作の10年前。正確に言えば、ターミネーターを観た時「あっ、これメカゴジラやん!!」とならなければならないのである。

アイディアに著作権はない。だから真似しようと思えば真似放題なのだが、だからと言ってジェームス・キャメロンが真似たという確証はないし、そもそも態々断りを入れなくてもいい。しかし、洋画の中には単なる偶然とは思えないほど日本映画にクリソツだった、というケースがままある。黒澤明「用心棒」と「荒野の用心棒」の関係などは有名だが、リチャード・ドレイファスが出て続編が出る程好評だった「張り込み」。これなんか、松本清張原作、野村芳太郎監督の初期の名作「張込み」と設定似すぎだと思う。どちらも凶悪犯が愛人に会いに行くのを刑事が張り込んでいるうちに、若い方の刑事が愛人に特別な感情を持ってしまう(清張・野村版「張込み」はそれが恋愛感情だとはっきりは言ってないが、アメリカ版「張り込み」はそっからのラブコメっぽい話になる)。これも、公式には両作品の間には何の関係もない。
ジェームス・キャメロンは炎から出てくるスケルトンターミネーターのイメージを夢で見て、それが製作のきっかけになった(これは本人が言っている)らしいが、きっとその夢を見た晩は、寝る前に「ゴジラ対メカゴジラ」のビデオを見ていたに違いないと、私は勝手に思っている。

前作「ゴジラ対メガロ」が子ども向けゴジラの極北まで行った所為か、今回は幾分大人向けに作られている。キャストもドラマなどでよく見かける人が結構出ていて、これは沖縄海洋博がらみでスポンサーが増えたのだろうか?分けても岸田森!この時期、彼は映画でもテレビドラマでもアヤシイ人を演じる事が多かったので、この時もてっきり・・と思ったが詳細は観たことが無い人もいるのでやめておく。我々世代はドラマ「傷だらけの天使」の辰巳さん役で強烈な印象を残しているけど、あのドラマが始まるのはこの映画公開後約半年の話である。

に、しても、この映画は沖縄が舞台の割には色々変なところも多く、当時はこれぐらいの認識だったのだろうか?まるで、一昔前のハリウッド映画が描く日本人のようだったけど、とまれ”シーサー”というものの存在を世間に知らしめたことはよかったのだろう(まあ、本物のシーサーは怪獣にはなりませんが)。しかし、代々伝わるキングシーサー覚醒の歌が、一つの琉球音階も使わず、単なる歌謡曲だったのはいただけない。せっかく、ビッグバンド風の「メカゴジラのテーマ」カッコよかっただけに(作曲はどちらも佐藤勝さん)勿体ない話である。まるで、海辺の民宿で地元で獲れた海の幸を期待していたら、縁もゆかりもないマグロの刺身を出されたようなガッカリ感であった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?