見出し画像

映画『大室家 dear sisters』感想

アニメーションとして、たくさんの見どころがあった映画だった。まずopからして喰らった。あまりにも文脈が豊富な「実写」との混合のなかを、無邪気に、しかし豊かにキャラクターが歩みを進める。あれこそ、アニメーションが「日常」を歩む姿そのままだ。

個人的に惹かれたのは、撫子とその周辺にまつわるエピソードだった。映画が sisters と friends を取り上げるからには、撫子にとってそのカテゴリの埒外にある大切な存在は、決定的に不在のまま。この不在の宙吊りを、生かしたラストはしたがって、徹底的に鑑賞者を宙吊りにする。

この不在、この宙吊りはあまりにも出来すぎている……。このことも含め、徹底的に「大室家」を貫くアニメーションの誠実さに、ほんとうに感服した。こういうアニメーションがずっと在ってほしいと、こころから思う。

ほんとうにどこまでも「大室家」なんだよな……。「大室家」という単位は、家の単位であるのではけっしてなく、世界の単位である。閉鎖されたこの儚い世界を、鑑賞者はただその「日常」だけを眼差すためだけにある箱のなかで味わう——この唯一性の名こそが「大室家」なのだ。

2024.2.13

この記事が参加している募集

アニメ感想文

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?