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ちゃんとさぁ。方言教えてくんない?

現在は2021年5月。
昨年3月よりコロナで日本の企業様、監理団体様などの日本語研修センターへの視察が全くありません。
寂しいかぎりです。

これは、学習者にとってもデメリットですね。
日本人が来ないとなると、日本人の話す日本語。日本人へ対する緊張。
日本人へのイメージでさえ掴む事無く日本へ行くことになります。

視察に来られる日本人は例えが悪いですけど 良き生きた教材」です。
日本人に対応する予行練習、予備知識と、なります。
「何歳?」「仕事は?」「日本語頑張ってね」などの簡単な会話でも学習者にとっては リアルな嬉しい体験となります。
緊張もありますが、その場が和むことも多いですし、学習意欲にもつながり、日本でがんばろうとの決意も強くなります。

コロナ禍以前は月に、時には週に2社3社と視察の方々をお迎えし
当日本語研修センターの御案内御説明をしてきました。
実習生受入れをされている企業様、監理団体様にとっては、社運にもかかわる事ですから
当然、真剣に多方面からの要望、相談、質問等をされます。

技能実習生を受け入れる企業様の規模、職種やニーズも多岐にわたり様々ですが、今では、いかなる質問も即答できますし、ご要望によってアドバイス等もお話させて頂く事もあります。
こちらにとっては学習者の未来に関わる事ですから、企業様にはご理解も頂かなければならない事もあります。

多くは、
要望は、日本語と日本マナーの習得。
相談は、逃避防止の対策。実習生同志の不仲。
質問は、新しい監理団体様からは広範囲で多方面にわたります。
 

ところが・・・
え?この組合、企業 ?」と理解に苦しむ要望や視察をされる人があるんです。

例えば・・「スとヅ」

視察の方A:当社にですね、社員に都築というものと鈴木という者がいるん
      ですよ。
      タイ人の実習生が7人いるんですけどねぇ、
      ちゃんと都築と鈴木が言えるようにしてくださいよ。

私   :そうですね。タイ人には難しい音です。ス、ツ、ズ、ヅ部類には
     タイ語は更に音が多くて日本人には曖昧に聞こえるんです。
         (おたく、英語のRとLの正確な発音できるの? 
          タイ語のยิyiとอิiしてみましょうか?
          私はタイに5年いるけど意識しないといまだに無理…)

視察の方A:でもね。どっちを呼んでるかわからないから困るんだよ。

私   :なるほどです。どちらを呼んでいるのか解ればよいのですね?
     どうでしょう。どちらかでも、下のお名前で呼んでもらうという
     のはいけませんか?
      
視察の方A:あ、そうか。そうだね!


この方は、「日本人側が困っている」事しか考えてないですね。
これは、実習生も同じように困っています。本人は都築さんと言っているのに通じないのですから、自分の日本語にジレンマを持ちます。
7人ものタイ人がいるのですから、この7人の都築、鈴木の音が聞き取れないのであれば、タイ人にとっては困難な発音なんだと容易に想像がつくはずです。

どうすれば実習生の困難さを取り除いてあげれるか?を考えようとしない。
当然、正確に言えるよう、聞けるよう教え続けることは重要です。
しかし、仕事中ですからそこだけに囚われてしまったら仕事になりません。
この場合、どちらを呼んでいるのか解れば良いのですから、想像力を働かせる事が必要です。



 例えば・・の「広島弁」

視察の方B :私の会社はね。
       広島県だからさ広島弁を勉強して来てくださいね。

私     :(目がテン・・・・・誰が教えるの?)

視察の方B    :いくら?と訊くより なんぼう?と言った方が親しみが沸く 
       でしょう?

私     :(だから・・・誰が教えるの?
        学習者は広島県だけ行くわけじゃないし・・・)

この場合は、気のすむまでお話して頂いて「完全無視」です。

方言を教えろって「1都1道2府43県」各県から一人づつ47人の日本人教師が必要。しかも、各県によってさらに東西南北に方言が存在する。

※ただし、その企業から派遣者を教師として送ってくれるのであれば対応は
 可能ですけど

送り出し機関の日本語教師の基本ルールは、
自分が使わない言葉、知らない事は教えない 】です。
知ったかぶりで教えると危険を伴います。
方言は、「親しみ」ですから日本へ行ってから自然に覚えれば良いです。
共通日本語も入門レベルであるのに、更なる方言は指導不可です。



例えば・・「皆んな、うちの会社においで」

視察の方C  :みんな時給っていくらもらうの?

  私   :(コイツ! 何を言ってんだ????????)

視察の方C   : みんな、私のところへ来なさい。給料をたくさん出すよ!

  私   :(これは、どう突っ込めばいいのだ?
       お願い!マナーと外国人技能実習制度を少し勉強してから
                          来てぇ――💦。)


当日本語研修センターの学習者は、実習生全員受け入れ企業が決まってから勉強します。これはタイ政府からの指導です。
技能実習生の給料は、各県での最低賃金計算での契約が殆どです。
九州ではまだ700円台、東京では1000円台。
学習者から不満をあおるおつもりでしょうか?

外国人技能実習制度での給料は、基本給+残業(45時間内、1年単位の変形労働制では42時間内)です。制度はあくまでも技能実習です。しかも、雇用条件書以上の給料のもらいすぎは組合及び企業へ、外国人技能実習生の機構からペナルティーを受けます。
【※現在は、残業時間(45時間超え、1年単位の変形労働制では42時間超え)の場合、「変更届」を提出する必要がありと改正されています。
2020年4月より義務付け】


心配になります。本音は、このような企業ヘは実習生を送りたくない。


・・・結局は日本人とか外国人実習生とかではなく
お互いの人間性と信頼関係 そしてお互いへの感謝です。



ある実習生の話


「今はSNSで他の実習生がいくら給料をもらっているのかだいたいわかる。僕たちは地方だしそんなに多くもらうわけではない。でも、仕事はとても楽しい。お昼の弁当ははだいたい社長さんと食べる。一緒に仕事をする。いつも僕たちを可愛がって心配してくれる。ここで仕事が出来て嬉しい。」

小さい企業建築会社に行った実習生。旅行に連れて行ってくれるわけでもない、御馳走してくれることも多くは無い。でも、必要としてくれているのがとても良くわかる。応えてあげたい。

彼は言います。日本は素晴らしい。


だって。私たちは皆、人間だもの。おなじ地球人だもの。

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