短編小説【違法駐車】
今週のお題は「火星の別件逮捕」
【違法駐車】
「違法駐車でわざわざしょっぴいたのか?」
彼は書類をチラ見し、うんざりして溜息をついた。伸びて黒くなった爪で頭をぽりぽり掻くと、脂ぎった髪から粉雪が舞った。
この頃は、ただでさえ移民関連で逮捕者が続出している。勾留する場所も空いてないし、捜査官も足りてない。卒業したばかりのケツの青い雛鳥を現場に寄越すから、こんなしょうもない件でも逮捕してしまうのだ。そんな軽犯罪は、チケットを渡してさっさと放流すればいい。
「先輩、調書をよく読んで下さいよ」と、憮然とした表情の若い捜査官。丁寧な口調の中に棘があった。
読むべき調書はデスクの前で無限に重なり、今にも津波となって押し寄せてきそうだ。紙束の隙間から覗かないと、相手の顔も見えやしない。
「なになに…Bトレイントラックだと?」
最近どこかで読んだ気がする。
「はい、全長45.7m、最大113.5t運べるタンクローリーです」
「は!?…あー、水か」
「ええ、水泥棒。火星の別件逮捕案件です」
(410文字)
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