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「どんな仕事をしているの?」元妻がそれを聞くのは、仕事を辞めさせようとするときだ。

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 「そっか……。じゃあ、まずいっしょに暮らすのは、現段階では難しいな」とつぶやいた。「現段階では」に、ほんの少し力をこめた。
 元妻は冷静に、私の仕事について「尋問」してきた。また辞めさせようというのだろう。
 前述したが、いっしょに暮らしていたころ、私は彼女の「アドバイス」によって、何度も仕事を辞めさせられた。「その仕事は向いていない」「あの社長はろくな人間じゃないから、関わらないほうがいい」「帰りが遅くなるなら別の仕事にした方がいい」。
 何かと理由をつけられては仕事を辞めることを「勧め」られ、辞めると「あなたは仕事が続かない」と責め立てられた。
 「あなたには執筆や講演、コンサルなんて仕事は難しいんだよ。もっとシンプルな単純作業が向いていると思う。工場のラインとか」
 私は自分では、じっと同じ作業をしつづけるのには向いていないと思う。これは学生時代のアルバイト経験で身をもって知ったことだ。
 彼女の父親は某製菓会社の生産ラインで働いている。前述したとおり、そんな父親を、母親が陰湿にいじめていることを、私は見て知っている。
 元妻は、そういう母親を軽蔑しているが、現実には夫を虐げて工場のラインで働かせ、自分が育った家庭を再現しようとするのだ。

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