あいみょんと言えば「マリーゴールド」や「君はロックを聴かない」、最近だと「裸の心」だと思うんですけど、僕の一押しはこれです。

なんかこの曲、秋になると聞きたくなるんですよね。
どうしようもない気持ちになってお酒を飲んで夜風に吹かれる、っていう歌詞のシチュエーションが一番秋を感じる理由かも。

まあ、僕お酒飲めないんですけど。笑

苦いようで甘いようなこの泡に
くぐらせる想いが弾ける
体は言う事を聞かない
「いかないで」って
走ってゆければいいのに

「苦いようで甘いようなこの泡に」は、まず間違いなくビールの泡のことですよね。
本当は「いかないで」と走って行きたいのに、体は言うことを聞かないと。
曖昧な表現ではありますが、主人公が恋愛をしていることがなんとなくわかります。
導入は、主人公の恋愛に対してもモヤモヤを描いている。

広いようで狭いようなこの場所は
言いたい事も喉に詰まる
体が帰りたいと嘆く

ここで歌われている"広いようで狭いようなこの場所"とはどこなのか。
言いたいことも喉に詰まる、体が帰りたいと嘆く…やっぱ職場かな。
社会全体と捉えることもできなくないけど、僕は「狭いよう」とは思えないし、場所ではないから職場・会社と考えます。
この曲が主題歌だったドラマ「獣になれない私たち」の内容を鑑みると、そう考えるのが一番しっくりくる。
この部分では、導入部分とは対照的に仕事に対してのモヤモヤを歌っているわけですね。

「いかないで」って
叫んでくれる人がいればなぁ

これ、最初は「いかないで」って叫んでくれる人がお家にいればなあ、そうすれば会社にいかなくていいのになあ、という意味かと思ったんですが。多分逆ですね。

自分のことをはっきり頼りにしてくれる、「いかないで」と言ってくれる人が会社にいれば、その中での自分の存在価値がわかるのになあ、ということじゃないかな。

抜け出せない
抜けきれない
よくある話じゃ終われない
簡単に冷める気もないから
とりあえずアレ下さい

主人公は恋愛にも、会社にも不満を持っていて。
でも、それを「よくある話」で終わらせたくない、と。

明るいポップなメロディに、こんなどうしようもないやるせなさを乗っけているのが実にツボですね。
"ワイン"とか"ビール"とか、直接的にお酒を表現する名詞が出てこないのも洒脱。"アレ"で完璧にお酒ってことがわかるもんねこれ。

消えない想いは
軽く火照らせて飛ばして
指先から始まる何かに期待して
泳いでく　溺れてく
今夜はこのまま
泡の中で眠れたらなぁ

サビのうまいところは、「泳いでく」と「溺れてく」を並列にしているところですよね。
当然「泳ぐ」は自分の意志なわけですが、「溺れる」は自分の意志が介在しない。
僕は、この部分を「酒を飲む、酒に飲まれる」という表現と近しいのかなと捉えました。
主人公は「今夜はこのまま」「溺れてく」いって、「泡の中で眠れたら」と願うわけです。
”お酒の力ですべてを忘れて気持ち良く眠りたい”というのは、社会人には一番よくある願望なんじゃないだろうか。

だんだん息もできなくなって
心の壁も穴だらけで
制御不能　結構不幸？
自暴自棄　です。

序盤よりも生きづらさを更に強く感じる主人公。
「制御不能」「結構不幸」での韻踏み、そのあとの「自暴自棄（一拍置く）です。」の音の嵌め方など、あいみょんの才能をビンビン感じる２番Aメロ。

そんなに多くはいらないから
幸せの横棒ひとつくらいで

で、その直後にコレですよ。
”幸せ”から横棒ひとつ引いたら”辛い”。

満たされたい　満たしてみたい
乱されたい　会いたい
いつかの誰かに

この辺りの歌詞は実に人間臭いというか。
「満たされたい」「満たしてみたい」はもちろんなんですけど、追い込まれた時って何かに徹底的に乱されてみたくなったり、自分のことをわかってくれた人に無性に会いたくなるときがありますよね。

癒えない想いが
加速するばかりなんだ
止められない
放たれてく　夜になる
私はこのまま

僕、この歌詞をちゃんと字面で読むまで「”言えない”想い」だと思ってたんですけど。２番サビでは実際”言えない”だし。
けど、このラスサビでは「”癒えない”想い」なんですね。
これでまた曲がグッと深くなる。

消えない想いは
軽く火照らせて飛ばして
指先から始まる何かに期待して
泳いでく　溺れてく
今夜はこのまま
泡の中で眠れたらなぁ

最終的には、「癒えない想い」も「消えない想い」も全部ひっくるめて「今夜はこのまま」「泡の中で眠れたらなあ」。

誰かの腕の中で
甘い夢を見ながら
眠れたらなぁ

この最後のどうしようもなさも含めて、ある意味究極の若手社会人応援ソングというか。
30代半ばぐらいまでは特に刺さる内容なんじゃないでしょうか。

この秋も３年連続でヘビロテ確定ですね。