<作品情報>

<作品評価>

80点（100点満点）
オススメ度　★★★☆☆

<短評>

上村
ノーランはどうしてもノれない（唯一の例外は『インセプション』）のですが、本作もそうでした。ノーランらしい時間軸の操作や化学を映画的にみせる手法は素晴らしいです。
日本を軽視しているかというとそういうことでもないです。あくまでオッペンハイマー博士の視点から描かれた原爆開発の裏側であり、直接描かないのはそれはそれでアリだと思いました。
ただやはり「アメリカの映画」だなぁというのは正直なところです。当たり前と言えばそうなんですが、原爆落とされた側の日本人からすると納得できない感じはありますよね。
原爆の実験が成功したときの描写は特筆すべきものがあり、ノーランらしい。緊張と緩和を上手く使った演出です。
キリアン・マーフィーやロバート・ダウニー・ジュニア、フローレンス・ピュー、エミリー・ブラントにマット・デイモン。これ以上ない豪華キャストは最高のパフォーマンスをみせています。その中で印象に残っているのはやっぱりフローレンス・ピューですね。彼女は本当にすごい。場を支配してしまう力のある俳優だと思います。
ノーラン作品はいつも「長い！」という感想なんだけど、本作もそうでした。流石に3時間は長いです。個人的にはいつものノーラン映画という感じでした。公開されたら物議を醸すのは事実でしょうし、好きかというと別に、という感じ。あくまで「アメリカ映画」としては完璧だという言及に留めておこうかなと思います。

吉原
米国公開時から度々話題になっていましたが、本作には直接的な原爆の被害を写すシーンは全くありません。それは本作のほとんどがオッペンハイマー自身の視点で描かれているからであり、彼自身も多くの人間と同じ様に、広島に原爆が投下された話をラジオで聴き、また原爆被害の写真を見せられた際には目を背けました。
賛否が分かれる手法だとは思いますが、映像がなくても十分に原爆の恐怖を伝えることに成功しているという点からこれで正解だったのではないかと思います。ノーランにとって伝記映画は初めてでも、映像で伝える力はやはりピカイチだと感じさせられました。
正直、原爆による凄惨な被害を描いた作品は数多くあるし、そこばかりに目が行き過ぎになってしまうのは良くないのではないかと思います。日本が唯一の被爆国になった裏には人間のどのような動きがあったのか。ここに着目するのが本作の役割ではないでしょうか。
また豪華俳優陣が特徴の本作であるが、その中でも特にエミリー・ブラントを推したいです。登場時間は主人公の妻にしては短いものの、圧倒的な存在感と演技を見せてくれました。今回のオスカーで賞を受賞できなかったことは非常に残念ですが、受賞していても全くおかしくない演技力だったと思います。今後の彼女の活躍に期待です！
日本公開がずっと決まらなかった本作が公開2週間前に作品賞を受賞したことは非常に驚きですし、今となっては幸運なことなのかなと思います。原子爆弾の被害の裏には何があったのか。通常上映のほか、IMAXやDolby Cinema、35mmフィルム上映も決定しましたが、欲を言えばエキスポシティまたはグランドシネマサンシャイン池袋のIMAXレーザーGTフルで鑑賞してもらいたい作品です。

<おわりに>

13部門のノミネートのうち、作品賞・監督賞・主演男優賞・助演男優賞・撮影賞・編集賞・作曲賞の7部門でオスカーを獲得しました！一時は日本公開が危ぶまれましたが、いよいよ再来週3/29に日本公開です！日本人としては見逃せない出来事の裏側で何が起こったのか。是非劇場の大きなスクリーンで刮目してください！

<私たちについて>

　映画好き4人による「全部みる」プロジェクトは、映画の可能性を信じ、何かを達成したいという思いで集まったものです。詳しくは↓