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【手塚治虫漫画全集】全巻紹介 第6弾!151巻~179巻編

手塚治虫と言えば
ギネスブックにも載るほど膨大な数の作品を残している作家であります。
だから「名前は知っているけど何を読んでいいのか分からない」と言う方も多いと思いますし、ファンの方でも全部読んでいる方は少ないと思います。
そこでこの【note】では講談社発行の手塚治虫漫画全集をベースに
手塚作品をガイド的に紹介しています。

手塚治虫漫画全集は全400巻あり、今回はその第6弾!

151巻~179巻までのご紹介となります。
それでは本編をお楽しみください。


「ブラックジャック」


出ました!ブラックジャック。
手塚先生の最高傑作の内のひとつ。
これ説明いるんかな?というくらい有名ですね。

恐らく今後どれだけマンガというジャンルが進化しても医療マンガ
これを超える作品は出てこないでしょうね。
スラムダンクを超えるバスケマンガが出てこないくらい鉄板です。

まぁ医療マンガというより
全マンガ合わせても
地球上で一番おもしろいんじゃないですかね(笑)
つまり太陽系で一番ってこと
(いや…火の鳥かもしれん)
面白さの基準って人それぞれ違うので一番とは言いません。
価値感を押し付けることもしません。
だけど年齢男女問わず
誰が読んでも面白いと感じる作品ってそうないですよ。

もしマンガの一番を決める「世界大会」なるものがあったとして
どのマンガをサポートするかってなったら
オイラなら「ブラックジャック」か「火の鳥」のセコンドにつくかな。
意味不明かも知れませんがそのくらい凄まじい作品ということです。
もうこれ読んでおけば間違いないです。

まぁね、決めつけみたいに聞こえたかも知れませんが
若い方にはぜひじっくり読んで欲しいですね。

買わなくてもいいです。
絶対図書館にもありますから
なんなら学校図書にもありますよ。
だから探しなさい。
先生に聞きなさい。

ないならオイラが寄贈してあげますよ!

そして散髪屋に必ず置いてあった(笑)
ゴルゴ、美味しんぼ、ブラックジャック(チャンピオンのやつね)
なんか良くわかんないけどありましたね。
コレ散髪屋の三種の神器(マンガ版)

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なんなら今度床屋に絶対置いてあるマンガシリーズみたいな動画を
録ってもいいくらい床屋で出会うマンガが偉大であると言いたいですね。
女性はイマイチわかんないかもしれませんが(笑)


今度床屋動画でもやりましょかね。


もし読んだことがないという方はですね
ぜひ読んでみてください。
面白くないと言った人を聞いたことないですから。
ぜひ。全人類必読の書でございます。



「上を下へのジレッタ」


1968年作
色々と衝撃的すぎて
ぶっ飛んだ話です

プロダクションをクビになったブサイクな女優が
実はお腹が減るとめっちゃ美人になることを発見した門前市郎プロデューサーが彼女を使って世界に売り込む。

この意味わかんない設定は手塚先生のお気に入り(笑)
作中でも「セックスのあと女は一番美しくなるといったやつ」
女性の美をパロディ化しています。

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一方で、門前市郎は売れないマンガ家を工事現場地下で
事故ではあるんですが、殺してしまったと勘違いするんです。
実は仮死状態で生きているんですけど…。
そしてひょんなことから
この仮死状態の売れないマンガ家には自らの妄想世界「ジレッタ」
他人を引き込み没入させる能力があることを知る。

これに目をつけたやり手プロデューサーは、この能力を使ってエンターテイメントとして世界を取り込もうとするお話し。

よく分からないと思いますが一言で言えば妄想の世界です。
現代でいう妄想世界ヴァーチャル・リアリティなんです
これを「ジレッタ」と称しているんですけど
この妄想世界を作り上げてある種の洗脳、催眠により人間の心の中に入っていきエンターテイメントにしようとしてるわけです。

「妄想の共感」ですよ。

作中で興味深いセリフがあります。
「日本でテレビを見てねぇやつはどれだけいる?
いまテレビはラジオと同じ空気みたいな存在だ次に来るものは何か?」

「大衆はもっとあくどい刺激のものを欲しがるぜ!
その世界へ自分から飛び込んでいけるような刺激を欲しがってらぁ!」
「それがジレッタさ」

と敏腕プロデューサーが言ってるわけですよ。

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恐ろしいほどの千里眼です。1968年ですからね
ネットもない時代ですよ。その時代から「妄想の共感」が来ると予見している恐るべき手塚治虫の先見性です

ここに描かれているのは妄想の世界
妄想なんでエロティックなものが多く
本能むき出し欲望むき出しで女性の裸ばかり出てきます(笑)
まぁしょうがないですね。妄想ですから。

でもここに政治やメディアのあり方を皮肉った
ブラックな風刺的ストーリーが織り込まれます。

手塚先生は「漫画を描く上で風刺はとても大事」と語っているように
本作ではその想いが全開に描かれています。
タッチも「人間ども集まれ!」の大人風タッチで
おそらく見ただけでは手塚作品とは思えないほどタッチを変えています。

あとがきでは
ジレッタのようなメディアを国家権力が利用した場合
いかなる恐るべき事態が発生するか、
それはごく一握りの側近のエゴイズムでおこるのだという寓意を
読み取って頂ければ幸いです。
と語っています。

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アバターみたいな世界になったときに
それを操る者がメディアや権力を持ったものが使うと危険だぞ。
と言ってるわけですね。

そして作中のラストでは
地球最後のジレッタが炸裂し終わりを迎えます。

ちなみにこの作品を関ジャニの横山さん主演で舞台化されています。
舞台ってどんなだったんだろう????

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「ノーマン」


1968年作
実は遥か昔、月にも人間が住んでいたというお話し。
かつて月には文明が栄えていたが、
5億年前にゲルダン星人という侵略者との戦争に敗れ
核爆発にみまわれ放射能で覆われて「死の世界」と化しているらしい。
月の見渡す限りひび割れと穴と石ころだらけなのはコレのせいなのだと。
その戦争が原因ということで
5億年前の月にワープしその戦争を回避させるというお話し。

月を舞台にした手塚先生お得意の冒険SF活劇です

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あとがきでは本作の執筆動機をこう語っています
「当時、60年から70年安保にかけ社会は大きく揺れ動いていた。
漫画界にもその影響が及び少年誌にも暴力やセックスを肯定して
はみだした主人公にした作品が出始めました。
少年漫画界全体がリアルで生ぐさいドラマ偏重に向かいつつあることへの
反発だったかも知れません」
と記しています。

このように社会がなにやらキナ臭い世の中になりつつある中で
あえて昔の少年マンガを描いたと言ってるわけです。

そして
世界ではアメリカが国家の威信をかけ、
有人月面着陸を目指す「アポロ計画」の最中
ソ連が月ロケットを打ち上げを成功させる。

くしくもその日は
ノーマンの最終回の締め切り日
最後の一コマはそれを記念して描かれた1コマであると語っています。

このソ連のロケット打ち上げ成功により
「それまでの宇宙もの、荒唐無稽と言われたSFという概念を一掃した」
…と手塚先生は感慨深くコメントしています。


時代に反発してあえて現実離れしたSF冒険物語を描いた本作は
あまり人気もなく複雑で分かりにくい内容でした。
「何故人類は月を目指すのか」というテーマを持って書かれた、そんな夢物語だったものが
なんとその最終回に人類が初めて宇宙に行った日と重なる辺り
奇妙なシンクロニシティを感じさせる一作となりました。
SFという妄想、夢だった世界がついに人類の大きな一歩によって
現実となった記念碑的作品になったわけであります。



「ゴッドファーザーの息子」


1973年作
舞台は手塚先生の学生時代で自身が主人公の自伝的作品

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手塚先生は身体が弱くて運動も苦手で、
マンガを書くことだけが唯一の取り柄という生徒
対照的に乱暴で身体も大きく
親分肌の応援団長のバンカラに目をつけられる。
バンカラにやめろと言われても、先生に竹刀で殴られても
マンガを描くのを止めなかった心意気をかわれ
まったく違う性格の二人が、いつしか仲良くなります。

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昭和十九年当時
戦争下にある状況でマンガなど言語道断
しかしバンカラは手塚マンガの一番の理解者という
奇妙な友情が育まれていくのですが…

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翌年バンカラは戦争に出て
敵艦に突っ込んで自爆して終わるというラストを迎えます。

いきなりあっけなく
何事もなかったかのように
一番の理解者だった親友が突然死んじゃうんです。

戦争の悲惨なシーンは最後の一コマしかないのに
日常を無残なまでに切り裂く戦争の悲惨さが圧倒的に伝わってくる快作
戦争経験者の手塚先生は多くの戦争マンガを残しています。
そんな手塚作品の中でも読みやすい作品だと思いますのでぜひ一読されてみてください。


そしてこのゴッドファーザーの息子は短編集となっており
全部で5作収録されています。
「月と狼たち」という作品は個人的にお気に入りで
「未来人カオス」の短編版といった内容です。
「未来人カオス」の4年前の作品なのでもしかしたらその原型かも知れませんね。


巻末に「短編について」と手塚先生のコメントが入っています。
これによると
「与えられたページで読み切りにするとどうしても省略が激しく無理がでてくる…10リットル入る箱に15リットルの砂を入れようとしても2~3リットル零れてしまうのは当然。
会心の仕上げができることは十に一つもありません」

と語っており
本当はもっともっと書きたいという願望を述べています。


「だからといってもお茶を濁すようなものは掛けない」とも語っており
短編に未練も残す作品が多いのも事実らしいです。
天才の苦悩が見えますが我々凡人からするとこれでも十分に素晴らしい短編となっており今でも十分に楽しめる作品となっています。

手塚先生の本当に描きたかったものが何か分かりませんが
それを夢想するもの手塚作品を楽しむひとつとなっております。

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今回はここまで。

次回第7弾はこちら


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