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そして、君は生まれた

(昨年のことだけど、ずっと下書きに入ったままの記事を投稿してみる。)

次男が産まれた。

産院の後期妊婦研修を受けたのは、10月28日の金曜日のことだった。36週0日目。
マタニティフォトを撮ったのは翌日10月29日の土曜日のことだった。36週1日目。

夫が長年ファンクラブに入っているオリックスが日本シリーズを制覇して、我が家がお祭り騒ぎ&連日の緊張感から解放された11月2日、後期健診で2週間ぶりの病院だった。36週5日目。

1人目は36週5日目に健診後3時間ほど経って早期破水して病院に戻って入院になり、37週0日目に誕生している。出産予定日の3週間前だ。

前回の出産と同じような経過を辿ることが多いと聞いて、今回はどこで破水が起きてもいいように産休に入ってからは常に破水用のパッドとバスタオルをどこに行くにも持ち歩く毎日だった。

そう、今日は血液検査とNST(ノンストレステスト)もあるなと思っていた、後期健診の日。
いつものようにエコーを受けていると、先生が「あれ?ちょっと待って?」と独り言。
「前回は頭、下になってたよね?」

30週前後に逆子だったので、逆子体操を2週間頑張って戻っていたと思うのだけど。

「え、これ、どういう姿勢なんだろ?」若い先生は若干テンパリ気味にエコーをひたすら続けていた。急遽ベテランの先生が呼ばれ、不安に思っていると、

先生「赤ちゃんが横向いてます。横位(おうい)だね。このまま陣痛や破水が来てしまうと危険が高いので、今日今から入院してもらうね」

えええ〜??

内診もした結果、子宮口が開きつつあるとのことで、

「もう歩いちゃダメだからね。ぜったい安静で。」と車椅子で移動してくださいとのこと。

またも36週5日目に入院になってしまった。
1人目の時との違いは、上の子がいるということ。

かなり戸惑ったまま、車椅子で緊急入院のための検査に入り、37週0日目までの残り2日は張り止め打ちながらの絶対安静となった。
このまま2日後に赤ちゃんの位置確認、横位または逆子ならそのまま帝王切開、頭が下になっていたら自然分娩に向けて退院とのこと。

これからの入院期間も何もかも、わからないまま、ろくに挨拶もできずにコロナ禍で退院まで面会もできない。お腹の子には悪いが、上の子のことが心配で気が気でなかった。

しかも明日は上の子は初めての遠足でお弁当が必要だったのだ。

待合室の妊婦さんたちもびっくりだったと思う。スタスタ歩いて診察室に入った私が、出る時には車椅子で看護師さんに押してもらいながら診察室を出てきたのだから。

入院のために新型コロナの検査を受けたり、心電図取ったり、レントゲン撮ったり、の入院のための検査を受けて、麻酔科の先生から帝王切開に向けた麻酔についての説明も受けた。
その合間に夫や両親に連絡を入れる。病院の場所によって電波が弱くてなかなか連絡もできず。
とりあえず夫と息子の保育園への連絡、今日受ける予定だった息子のインフルエンザの予防接種についての引き継ぎ、入院グッズ一式の受け取りなど慌ただしく午後が過ぎていった。

入院初日の夜。
張り止めの薬を点滴されて、ベットの上に絶対安静ということで尿管カテーテルを入れられた違和感でほぼ寝れず、検索魔になっていた。
病院横の道路を走る暴走族の騒音が鬱陶しい。
おそらく配慮されて、1人で部屋を利用させてもらったので、少し息子と夫と電話して、気丈な息子の様子に電話を切ってから思わずシクシク泣いた。

入院2日目。
ひたすらに横になっていた日。
息子初めてのお弁当は夫が頑張って持たせてくれて、なんとかなった。次にお弁当作る機会があったら、思い切り張り切ってお弁当作ってあげよう。
お腹の中の人は相変わらず胎動激しく、一体どこを向いてるかわからなかった。

入院3日目。
本当は実家の両親と、ピクニックを企画していたけれど、こんな状況のために叶わず。注文していたお弁当を夫が差し入れしてくれて、テレビ電話を繋いで一緒に食べた。
夜は次の日が帝王切開になるかもということで絶食になった。

入院4日目。37週0日目。
朝の診察で、横向きから頭が下に下がっていることがわかり、帝王切開は、回避になった。張り止めの点滴が外れ、車椅子もなく歩いていいよ、退院ですと。
けれど、もう子宮口が5センチになって開いてきているとのことで、37週になったこともあり、退院せずにそのまま病院に残って、陣痛を待つことに。

前回は破水から個室のLDRで陣痛促進剤を打っての出産だったから、陣痛を待つということがどういうことかわからなかった。

とりあえず陣痛室に移されて、ひたすら陣痛を待つ。広い陣痛室は私以外誰もおらず、今日は貸切状態だから自由に使っていいからね!と言われるものの、何をどう使えばいいのやら。
とにかく動いてねー!と助産師さんは行ってしまって、今朝までの絶対安静はなんだったのかと、面食らった。

今更だなと思いながら、まだ途中までしか書けていなかったバースプランを書いて提出した。
上の子の時はLDRでの立ち会い出産だったが、コロナのせいで、それは叶わず。代わりに?今回が最後の出産になると思ったので、胎盤と臍の緒を見たいですと書いてみたりした。

今を逃すとまたお風呂入れなくなるかもと思い、2日ぶりにシャワーを浴びてさっぱり。体力をつけなくては!とお昼ごはんもしっかり食べた。

少しお腹は張ってきている気がするが、まだまだな感じ。

陣痛をつけるためにまた検索魔になって、検索しては実践していた。
「リラックスしましょう」
「スクワットしましょう」
「階段をのぼりましょう」
「歩きましょう」

歩きましょうと言われても入院している身。院内を歩くしかないから、新生児室まで赤ちゃんを見学に行ったり、陣痛室にあった踏み台で踏み台昇降したり、スクワットしたり。

少しずつお腹痛くなってきてるかな?という感じになってきて、もう一度内診しましょうと言われ、午後に確認してもらうも、まだ子宮口は変わらず5センチほど。
「まど赤ちゃんの頭がはまってないね〜」
「頑張って動いて!今日中には産まれるわ」
先生からの言葉に、そうなの??と思いながらもやれることは変わらず。

赤ちゃんを下げるためにはスクワットが1番!ということで、地味にスクワットを続ける。

途中助産師さんがやってきて、
アロマ焚きましょうか?
足湯する?
と提案してくださり、そんなこともできるの?!と思いながらとりあえずやってみた。

NSTをやると、お腹の張りが出てきているが、まだまだ強くない感じ。
相変わらず、中の人は動いていて元気な様子。早く下に降りてくださいね。
夫とLINEをしながら陣痛を待った。

午後6時。
そろそろご飯ですよと言われてから1時間が経った。だんだん陣痛らしきお腹の張りと痛みが出てきていた。
ようやくやってきた晩ごはん。陣痛の波の合間を縫って完食。

20時。
NSTで確認するとやはりいよいよ本格的な陣痛がきていて、頻繁な強い痛みにだんだんと余裕がなくなる。
深呼吸しながら耐えていると、ここにきて、中の人がしゃっくりしている。
はよ下降りておいで!

夫LINEでは息子の様子が実況されていた。

21時。
3分を切る陣痛の波。強い痛みに話す余裕も無くなってくる。これは今夜中に産まれるなと確信する。
「そろそろ荷物まとめて分娩室に移動しましょうか」

21時半。
ベッドに乗ったまま分娩室へ。
ほぼ絶え間なく陣痛がきていて、呼吸をしながらいきみ逃しをするのに必死だ。
陣痛と陣痛のわずかな合間で分娩室のベットに移動。

心を無にして、呼吸に全意識を集中させる。
前回はこの辺から消耗して体力がなく、酸素マスクをつけられて意識も朦朧としておりほとんどおぼえていないが、今回はまだまだ冷静に状況を認識していた。

相変わらず中の人は降りてきていないので、破水に至らず。
助産師さんに、「頭さえハマって破水したら一気に産まれるよ。それまでもうちょっと。いい感じです。」
と言われる。

もう、いきみたいーとなるが我慢。前回は夫に腰をさすってもらったりお尻を押してもらって耐えていたが、今は1人だ。

痛いという表現しかできないのだけど、最初は生理痛のようなギュゥ〜と絞られるような痛み。
産まれる直前の陣痛の痛みはもっと強烈でグワーというかオノマトペでは表せないような激しさ。痛みで身体が破裂しそうな感じ。

助産師さんは自らエプロンをつけ、他の助産師さんに〇〇用意して!当直医に連絡入れて!とテキパキ指示を出している。メインの助産師さん以外が分娩室から出て行った。

あ、もうだめだ!耐えられない!と思った次の瞬間、
「バシャン」
私の子宮口の様子を確認していた助産師さんに大量の水がかかった。
同時にガクンとお腹の下の方に重力を感じた。

「破水したよー!頭もハマったね」

医師が到着する。
陣痛の強烈な波を呼吸で逃している中で、「次の陣痛でいきんでね」と言われた。

そこからはあっという間だった。
何回か力を振り絞ると、ドゥルンと中の人は出てきた。

「あにゃーあにゃー!」

2022年11月4日22時21分 君は産まれた。

立ち会いもできず、動画も撮れない状況で、咄嗟に産声の音声を録音した。

1人目の出産よりも孤独だと思ってた。
でも、ずっと君も一緒に頑張ってたね。

産まれてきてくれてありがとう。
これからは外の世界を一緒に過ごそうね。

いろいろな処置が終わり、家で待つ息子と夫とのテレビ電話を繋いで初めての家族4人の記念写真をとった。

しばらくして、胎盤とへその緒を見せてもらい、触らせてもらった。
プリンッとして弾力がある。
これもお腹にずっと入っていたんだなと。ずっしりとした重みを感じた。

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