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「トランステック製品のような新規過ぎる製品の開発をサイエンティフィックに推進する」東芝デザインセンター 駒木亮伯さん

●ご挨拶と出演者紹介

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三木:第187回マインドフルビジネスストーリー始まりました。本日は東芝デザインセンターの駒木さんに来ていただきまして、開発したこちらの心を調えるシステムの開発のバックストーリーを色々伺いながら、この業界に東芝という大企業がどう切り込んでいくのかを大上段に語っていただければと思います。よろしくお願いします。

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駒木:よろしくお願いします。


●三木さんとの出会いと学生時代の研究について

三木:駒木さんと知り合ったきっかけは、毎年Zen2.0というのをやっておりまして、

Zen2.0で色々マインドフルなプロダクトを検索していた中でこちらの製品がSXSWに出展されてて、うちの仲間の1人が見つけてきてつないでいただいて、どういった製品なのかとか、Zen2.0と一緒にコラボできる可能性とかお話しさせていただいたのがちょうど1年前ぐらいですよね。

駒木:そうですね。

三木:その時はSXSWからちょうど戻られてきたばかりの時ぐらいでしたっけ?

駒木:そうでしたね。去年の4月か5月くらいに初めて共通する知り合いからつないでいただいて、どんなことをやってるのかお互い情報交換したと。

三木:それからもう1年ぐらい経ったんですが、また今年に入ってからコンタクトさせていただいて、ベンチャーでこういう製品開発をされてる方は最近増えてきたんですが、東芝という大企業で新規的に取り組んでいる事例がほとんど日本では見受けられないので、先進的な大きな企業だとそれなりに社会的にインパクトがあると同時に内部的な抵抗もあったのかもしれないと思いながら、そういう話を聞きたいなということでご連絡をさせていただきました。初めてFacebookで去年つながった時からたまたま大学が同じだったことが判明し、慶應のSFC(湘南藤沢キャンパス)ということで、私もたまたま教わったことがある徳田先生という、先生はたぶんOSが専門だったんですよね?

駒木:僕がいた時はユビキタスコンピューティングという、今でいうIoTだとかセンサーネットワークの基礎になる分野のことをやられていて、今まで身の回りで非ITなモノに対してセンサーをつけたらどんな世界ができるかっていう、ただ単にプログラミングするだけじゃなくてサービスをどうやったら作れるかっていうOSの分野からインターフェースの分野まで幅広いことを研究されていました。

三木:在籍されたのは何年ぐらいですか?

駒木:実際に徳田研究室にいたのは大学3年生からなので4年間で、卒業したのが2007年の春ですね。

三木:たぶん私も重なって近い時期にいましたね。私が博士課程追い出されたのが2004年で、それまで9年ぐらいいたので重なっていました。今でこそIoTって普通に言ってますけど、その当時インターネットとモノがつながるっていうのはこの現実社会ではほとんど語られてなくて、だから先駆的な二大巨頭の村井研と徳田研がありまして、私も一部授業をかじったぐらいなんですけど、元々インターネット自体に興味があったんですか?

駒木:元々は音楽に興味があって、1年と2年は別の研究室にいたんです。

三木:何研?

駒木:岩竹先生っていうコンピュータミュージックをやっている先生がいて、彼のところで作曲を勉強してて、毎日学校に行ったらシータという講堂の裏にグランドピアノが1個置いてあって、そこに行って和声や旋律の勉強をしたりっていうのをずっとやってたんです。

バッハのインベンションっていう2声の音楽があるんですけど、何でこのオタマジャクシは上に行った時にラインは下に行ったんだみたいな1個1個の音符の動きを説明していくみたいな…

三木:先生もそこにいるんですか?

駒木:実際にこれは弾いてみて、「これは何で下に行って上に行ったと思う?」っていうのを感覚じゃなくて論理的に説明したり、ベートーベンの4声のシンフォニーの音楽を聴いて4声の楽譜を解析したり。また別の高岡先生っていう方がアルゴリズムコンポジッションっていうのをやられてて、作曲の分野って2つ分野があって、1個は岩竹先生がやられてたような新しい音色を作る分野と、もう1個は伝統的な音楽理論に基づいて音楽を自動的に生成する自動作曲という分野があって。

三木:まさにAIがやっているような…

駒木:そうですね。僕は伝統的な音楽を自動的に生成するところに興味があって、スタートボタンをピッと押したらモーツァルトとビートルズを合わせた音楽を自動的に生成するみたいなことを初めやりたくてやってたんですけど、やってるうちに先生から「音楽だけやってても今後大変になるよ」みたいな話もあって、でもベースがしっかりしてないとダメだなっていうのが分かってきてて、音楽じゃなくてベースのコンピュータをしっかり学びたいと思って、キャンパスの後ろのほうを見ると二大巨頭がいたのでそこに入って行ったみたいな…

三木:SFCって研究室に割と早い段階で入れたんでしたっけ?

駒木:そうですね。1年の後期ぐらいから入れる。

三木:早い段階でそういう探究をされて、3年目の徳田研ではどういう研究を?

駒木:徳田研ではOS寄りじゃなくて比較的ミドルウエアからインターフェースの間ぐらいのところを研究してて、主に位置情報の…その時位置情報っていうのは1つのセンサーで、その当時はGPSは全然なくてGPSの端末で情報を取ったり、超音波センサーを使って室内の位置情報を取ってサービスをどうやって作るかを考えるみたいなことをやってました。

三木:マスターも同じ研究ですか?

駒木:そうですね。部屋の中に色んなセンサーを取り付けて、人間の行動をそのセンサーだけから予測するみたいな…

三木:マインドフルビジネスに近いことを試験的に…。行動パターンからその人の状況を推論するみたいなのもあるんですか?

駒木:簡単な話だとリビングの部屋と寝室の部屋と玄関と色んな空間があるけど、その空間に応じて人の行動って全然違うので、例えば玄関だといっぱい人が入り乱れてほとんど滞留しないところだからそこは玄関だよって分かったりだとか、家の中でもリビングのところですごい滞留してるところはそこに椅子があってくつろぐスペースだよみたいな、そういうセンサーの情報を元に意味をアノテーションしていく研究をしてました。

三木:面白いですね。


●東芝のデザインセンターに行くきっかけ

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三木:それで東芝に入られたということで、東芝で最初に入られた部署はどんな…?最初からデザインセンターなんですか?

駒木:初めは研究所にいて、大学でやっていたことを企業でもやろうとして、元々別室がそういうテクノロジーを使ったことだったので研究所に入ったと。企業に入る一番のモチベーションは新聞の一面に出るような製品を作ることじゃないかみたいなのが一番初めからあって、研究所だと必ずしも製品につながるとは限らないので、製品しかもフラッグシップみたいなものを作りたいと思って、その当時最先端はテレビだったので1台100万円以上するテレビを試験的に作ってみるみたいな…

三木:プラズマでしたっけ?

駒木:その時は液晶なんですけど、例えば80インチあるテレビだとか、眼鏡をかけなくても3Dに見えるテレビだとか、今でこそ色んなテレビって機能が付いてると思うんですけど、色々と録画情報をうまくマイニングするみたいな…

三木:テキストマイニング的な?

駒木:そうですね。そういうことをやってくれるようなモノをどんどん作っていく部隊に入って、そこでちょっとだけアメリカのテネシー州とカリフォルニアを半々ぐらいな感じで行ったり来たりして。

三木:研究所ですか?

駒木:それはテレビの開発所と販売所があって、テネシーのほうは開発所があって、ロスのほうが営業の部隊がいたのでそこに行って、色々と新しいテレビのヒアリングをするだとかリサーチをするみたいなことでそこに1年弱ぐらいいて、帰って来てデザインセンターに移ったみたいな。

三木:デザインセンターに移ったきっかけはあるんですか?

駒木:事業部にいると製品は作れるので”フラッグシップの”俺が関わってるみたいなそれはできてくるんですけど、でも自分の知識が基本的にアウトプットされるだけなので、インプットが結構少ないなっていうのがあって、インプットしないと自分の強みというか本質がブレてくる感じがしたので、もう1回自分のコアになるものを探したいなと思って、「どこに行こうかな?」って社内も社外も含めて色々探した時に、ちょうどデザインのところが空いてたので応募してみたら「じゃあ来てみる?」っていうので、デザインのところでデザイナーのリサーチャーみたいなことをやる部隊があったのでそこに入ったと。

宇都宮:デザインの知見とかはおありだったんですか?

駒木:何をもってデザインの知見かってなかなか難しいと思うんですけど、元々ヒューマンコンピュータインターフェースとかインタラクションとかユーザーインターフェースの知見はテクノロジー視点では持ってたので、ただ一方で自分でこういう造形をするみたいなのはやったことなくて…

宇都宮:プロダクトデザイナーとはまた違うデザイナーっていう立ち位置というか…

駒木:そうですね。

三木:UX?

駒木:それに近いかもしれないですね。デザインに入って思うのは、基本的にバックグラウンドがしっかりしてないとできないと思ったので、自分でもこういう造形物を作ってみたりだとか、実際に事業で作ってみたりだとかっていうのは自分でやってみたいなっていうのでそれも勉強しつつ、元々のプログラミングとか設計とかその辺もしつつみたいな、自分のベースは他の人達と違うんだよみたいな感じで…

三木:自分の強みはデザインセンターでは生かせましたか?エンジニアとしての。

駒木:そうですね。元々どういう風に大規模な開発をしてるかって事業部に行ってみないと分かんなかったりだとか、そういう開発するプロセスはすごい事業部で学べたと思うし、初め研究所もいたので研究の仕方っていうのはもちろん分かっていて、そこは大学の時にやってたことがベースにもなっていて、元々はサイエンティストがベースになってて、そこにエンジニアリングの話も段々分かってきてデザインの話も分かってきてみたいな、そのトライアングルを色々と分かってくるとそれを全部体験してきた人が少なかったり…

宇都宮:デザインセンターって色んなバックグラウンドの人が集まるような…?

駒木:「っていう風にしていきたいね」っていうのが僕が入った13年、14年。

宇都宮:ちょっと変えていこうみたいなタイミングに?

駒木:そのタイミングで僕も入ったみたいな。


●東芝でのマインドフルネスな製品の開発について

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三木:研究者、エンジニア、デザインって来た方がなぜマインドフルネスの世界に興味を持ってこの製品を開発されたのかっていう背景を伺えればなと思います。

駒木:今の役割は「新たな人のニーズって何なの?」っていうところをリサーチするような、そのためにこういう風にプロトタイプを作って試してみることが仕事なんですが、今まではあらかじめある製品、例えばテレビだったらテレビっていうのが昔のすごい天才の方が作ったものをベースにそれをカスタマイズして作っていくみたいなものが昔だったらそれで良かったんですけど、今は色んな人が色んなことを思っててニーズも多様化してるので、そのニーズを探らなきゃいけないと思って色々と探ってると結局は人の心みたいな、人間を変えるというか…

三木:行動変容ですか?

駒木:そうそう。人間として良くなるとか人間として幸せになるとかそういうことに段々周りがシフトしてるなっていうのが分かってきてて、その人間として幸せになるために役立つとか人間として豊かになるために役立つ製品だとかストレスを軽減するための製品だとか、そういう「人間味」を増すような製品がいいんじゃないっていうのが色々とリサーチしてくると分かってきて。

宇都宮:どういうリサーチをするとそういう風な傾向が見えてきたんですか?それとも駒木さんの中で直感的にそういう方向性かなと思って調査してみると合致してきたっていう感じ?

駒木:分かりやすい話、新聞記事とか見ててもそういうのが出てて、ちょっと前の記事でどこかの航空会社が…

三木:乗ると元気になる飛行機?

駒木:とか(笑)、サービスが機械的になってるみたいな、朝の電車とか乗ってても周りの人結構機械的に動いてる気がしてて、足を踏んでも気づかないとか、ちょっと肩が当たったとしても気づかないとか…

宇都宮:人間が人間っぽくない実感もありつつ…

駒木:田舎に行けば行くほど人間味溢れるというので、都会って時間がちょっと早く進んでる気がしてて、田舎がそれを追うみたいな感じに考えると、段々それがスピードアップしていくんだなって考えた時に、効率化はされるんだけど人間味がなくなってるので、それを助けるための製品というかサービスを考えた時に、心を調えるとかがいいなって自分自身で考えてみたんです。

三木:たぶん1人で考えたわけじゃなくてチームで議論をしていくと思うんですけど、駒木さんは「そういうのをやりたい」って言った時に周りのメンバーの反応はどんな感じでした?

駒木:初めはみんな「えっ?」って(笑)。

三木:どこら辺が「えっ?」っていう…

宇都宮:「人間味?」みたいな?

駒木:人間味というか、これが呼吸をセンシングしてくれるデバイスなんですけど、これを見てもよく分かんないですよね。

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日本も色んな事件があったりしたので、瞑想って聞くとちょっと怪しいよねっていう、瞑想具って書いたら自分でも怪しく思う(笑)。マインドフルネスって言葉を日本語に訳すと瞑想具になったりするので、初め見た時は「何で?」みたいなのはあったけど、でも実際に鎌倉のお寺に行ったりすると結構若い方とかが座禅したりとか、最近ヨガの中で瞑想するとか、そういうコンテクストを入れると「確かにそういうのあるよね」って分かりやすくなる。

三木:メンバーも段々と納得していった感じ?

駒木:そうですね。実際にメンバー全員で鎌倉に座禅に行ったり、簡単な土曜日の土曜座禅ってあるじゃないですか?

三木:円覚寺?

駒木:そうそう。あれに行ったりしたら「こういうのあるのかもしれない。でもまだよく分かんないな」ってたぶん色んなメンバーの想いがあったと思うんですけど、今回「これをちょっと作ってみようか?」っていうのでバッと作ってみたと。

宇都宮:その時駒木さんってチームのリーダーみたいなポジションなんですか?

駒木:リーダーというか役割分担が重要かなと思っていて、その当時はデザイナーと研究者が一緒になって何かモノを作ろう、サービスを作ろうって話をしてて、デザイナーが得意っていうのはコンセプトを作ったりだとかそれこそ形をデザインしたりだとかっていうところなので、そこはデザインセンターの役割だよねっていうことで役割を初めに決めて、私はコンセプトを作ったりだとか全体的な形を作ったりだとか光り方だとかっていうところを担当でやったと。

三木:何人ぐらいで開発してたんですか?

駒木:これをやった時は全部で出たり入ったりっていう人も含めて10人ぐらい。

三木:全体のコンセプト設計が駒木さんで、臓物を作る人とかプロダクト寄りとか分かれてやる感じ?

駒木:そうですね。中のセンサーをどうするかだとか、呼吸をセンシングするためにはこういう方法を取ったほうがいいとかっていうのはまた別の方が考えたりしていて、私だけが作ったわけではなくてみんなで1つのモノを作っていくのがこれからのメーカーというか新しいモノづくりのやり方だなと。今までは研究所は研究所、デザインはデザイン、開発は開発みたいに分かれてたんだけど、少数精鋭でみんなで協力しながら新しいモノをそれぞれの強みを持ちながら作っていくみたいなのかなって…

宇都宮:新しい製品開発のプロセスにもなるっていうことですか?今までと違う流れの製品開発の仕方みたいな。

駒木:それのプロトタイプみたいな、新しいモノの作り方ってまだ有象無象してるので、それを「うちの会社っぽく作るためにはこうやったらいいんじゃないか?」っていう提案の1つとしてやってみたという。

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三木:この間セミナーをやってすごい驚いたというか、“トランステック×マインドフルビジネス”でSXSWに出展したデザイナーが語るみたいなタイトルでやったら、

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メーカーの新規事業の人とかがいっぱい集まるとは思ってなかったけど、実は某電機メーカーの方とか某○○メーカーの人が結構集まっていたんです。だから日本のメーカーもようやくヘルステックっていうかマインドフルネスっていうものに気づき始めた。たぶん彼らもこれからだと思うのでもう1年以上先行してやられてる機動力というか企画力はすごいなと思ったんです。

宇都宮:あと製品開発の仕方が斬新という意味でも見られてる部分があるんじゃないかなって気がしたんです。既存のラインと違うビジネスを生み出すっていうミッションもあったりするみたいなので。

三木:非常に短期間で開発されたんですよね。2ヵ月でしたっけ?

駒木:メディアではそうなってる。でも本当に短期間でバッと…

三木:半年ぐらい?

駒木:納得の出るコンセプトに落とし込むところってなかなか難しいんですよね。みんなで集まってもみんなそれぞれ思うところがあって、ここは僕の専門なんですけど、新しいモノを作る時って色んなバランスを取らなきゃいけない。人間関係もそうだし、色んなバランスを取ってアイデアを落とし込むことが必要で時間がかかって、実際にコンセプトがある程度収束したらそこからプロトタイプを作るのってそんなに時間がかからなくて、そこにワッと落とし込む前のほうが色々と議論が白熱したり。慶應のSDMじゃないんですけど、ある程度サイエンティフィックにしたいなって僕は思っていて、サイエンティフィックにするっていう意味は何度も同じようにやればある程度同じ方向になるみたいな、再現性があるみたいな、そこがサイエンティフィックの重要なところだと思っています。誰々さんがいれば何となくできるっていうのはサイエンスじゃなくて、サイエンス的にこういう流れでこういう感じでやるとできるよっていうある程度そこにはサイエンスを求めてやっていきたいなと思って、うまくプロセスを今作っています。

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●新製品“心を調えるシステム”のデモ

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三木:後半はいよいよこの心を調えるシステムをちょっと使わせていただいて、どういう風に動くものかというのを遊ばせていただければなと思います。

駒木:このロゴの後ろにセンサーが入ってるので、持っていただいてお腹のところに当てる。

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お腹を大きくしてちっちゃくしてって今ちょっとやっていただくと、このグラデーションが自分のお腹の動きを表していて、この実線が教師信号になっています。

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三木:この通りに表されるっていう?水色のやつが自分の…

駒木:そうですね。ここにしていただいて、ここの距離を測ってるみたいな。一番お腹が動くところに構える。

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三木:もう1回やってもらっていいですか?

駒木:はい。この54%っていうのは教師信号に対してどれだけマッチしていましたかっていう、ある意味Wiiみたいなものになってて、まだプロトタイプなので結構センシティブなんですけど、一番初めのところでキャリブレーションされたりするので、お腹を膨らませてへこませるっていうのを腹式でやるっていうものになっています。男性と女性でこのうまさがだいぶ違ってて、SXSWに持って行った時も男性だとなかなか難しいみたいな、女性だと結構慣れてて、ヨガとかたぶんやってるからだと思うんです。お腹をおっきくしてちっちゃくして、吸う時は風船みたいにお腹をおっきくして吐く時はグーッとお腹をスクイーズする。さすが上手いですね。お腹を膨らませたりスクイーズするのをちゃんとできてるかが分かるみたいな、Wiiみたいな感じでやると。84%、さすが。

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三木:簡単でいいですよね。分かりやすくて。これをもっとブラッシュアップしていくと結構良い感じになる気がします。手の心拍とか…

駒木:一応後ろで心拍も取ることはできて、だいたい自分がどれぐらいかっていうのは分かったりすることは考えています。

三木:実際体験されたSXSWのお客さんからのフィードバックってどんな感じだったんですか?

駒木:面白かったのはSXSWに来てたマッチョな人はあまり興味がないんだけど、ちょっと…

三木:コンシャス系な…

駒木:シェイプな人が結構興味があるっていう、スポーツをやっててもマッチョになりたい人とシェイプになりたい人によってだいぶ違ってて、こういう自分の体を調える系の人達が結構興味があって、特に女性がヨガとかをやるのが多いので興味があって、「なるほど、なるほど」みたいな話があったりしました。

三木:これと脳波、museみたいなデバイスを組み合わせても面白いかなと思いました。

私毎朝呼吸法をやってるからたぶんうまくできたと思うんですけど、習慣化がすごい重要なんです。1週間に1回、2回じゃ全然ダメで、いかに楽しみながらそれを続けさせ行動変容を起こさせるかっていうのがあって、だから遊びの要素が非常に重要なので、それがある程度エッセンスで入ってていいなと思いました。自分では認識できない脳波みたいなのも画面に出るともっと良い感じかなと。この間山下さんが言ってたハートマス研究所のものが割と近いですよね。

自分でコントロールできない心臓の緊張感をコントロールすることでどんどん数値がシンクロしていく感じなのですごい面白いプロダクトだと思います。


●新製品開発におけるチームビルディングについて

三木:専門は製品開発のチームビルディングだとおっしゃってたと思うんですが、意図してそういうのに取り組まれたのはいつぐらいからなんですか?

駒木:自分がデザインに移ってから、「新しいモノを取りあえず作ってみなさい」っていうお題だったんです。自分でも作ったりして何回も何回も失敗する中で、だいたいこういう感じでやるとみんなから受け入れられやすいなっていうのが何となく見えてきて。

三木:パターンが見える?

駒木:パターンというか、今度はこうやろうみたいなノウハウに近いかもしれないんですけど、そういうのが段々見えてきて。製品開発をどうやったら新しいモノが作れるかっていう論文も海外とかではよくあったりするので、それとかも組み合わせていくと段々それが汎用化できるみたいな、ノウハウの塊だと思うんですけど、ノウハウの中で汎用化できるものとできないようなものがあって、できるだけ汎用化できるものだけをある程度抽出すると、やるともしかしたら良いモノが出るかもしれないよっていうガイドラインができるとサイエンティフィックになるみたいな。何もない中で「あの人すごい天才だからあの人がいれば大丈夫」っていうのは全然サイエンティフィックじゃないので、そうじゃなくてもうちょっと再現性があるモノを作るとかサービスを作る時のプロセスみたいな…

三木:それは何か名前が付いてるんですか?

駒木:今はデザインリサーチのためのプロセスガイドみたいな…

三木:いわゆるデザイン思考とも少し異なるんですか?

駒木:そうですね。「製品開発するために客観的にできる部分と主観的にできる部分をうまく切り離しましょう」みたいなプロセスで、結局モノを作りたいっていう時はすごい主観が必要で、かつすごくパッションが必要で、主観的に「これだ!」っていうのを強く思ってないと最終的にここまでアイデアを形にするのが難しい。だけどその前の段階で「人間味って今すごい求められてるよね」って、そこってある意味…

三木:データ?

駒木:データだとか客観的に色々とリサーチすることによって出てくるみたいな、それは主観がなくてもみんなで客観的にやればやるほど精度が高まるみたいな、客観的に今のトレンドは何なんだとか、世の中が本質的に求めるニーズって何なんだとか、欲の中の問題のメカニズムって何なんだみたいな、そういうところって結構客観的な作業であるべきだと思うんです。その部分は客観的にやって押さえた上で、その中で僕はこれをやりたいだとか私はこれをやりたいっていう主観を入れていくみたいな、アイデアを形にするのはすごく主観的な作業で、でも背景のニーズだとか問題のメカニズムはすごく客観的に捉えるみたいな、そのバランスがすごく重要だよねっていうのが何となく見えてきて、それを「だいたいこんな感じでやったらいいんじゃない?」っていうのを説明してるっていう…

三木:論文とかにされてるんですか?

駒木:今ちょうど絶賛検討中みたいな…

三木:主観と客観でどっちが最初にあるべきですか?

駒木:どっちがって言うのもなかなか難しんですけど、まずは客観的に物事を俯瞰して捉えたほうがいいよねっていうのは何となく言える気がします。例えば家を探すって時もあらかじめ「目黒がいい」とか「鎌倉がいい」とか言っちゃうとそこ以外目がいかなくなっちゃうんですけど、広い世界を見渡して「今は鎌倉がいい」みたいな、1回全体を見てから鎌倉ってポイントをしたほうがいいんじゃないかと。

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三木:データの切り口があるじゃないですか。その切り口出しみたいなのはどういう風にやる感じなんですか?例えば「このカテゴリーでやろう」みたいな大ざっぱな最初の問い…

駒木:リサーチクエスチョンみたいなところは主観が入るかもしれないです。「一番初めはここ行ってみようかな」っていうのは誰かしらのポインティングが必要で、ただそこにもたぶんいくつかの要件があって、例えば自分だけ思ってても仲間がいなかったらそういうリサーチができなかったりだとか、そういうフィールドがなければリサーチもできないので、そこもバランスの作業で「自分はここをやりたいんだけど」って言ってても条件が合わなければリサーチができない。

宇都宮:1人から始まってチームになっていくっていう感じなんですか?それとも最初からチームがあって作っていく感じ?

駒木:それはたぶん必ずしも「これだ!」っていう正解はなくて、チームがなければチームで客観的に捉える作業をするために「まずはチームを作りましょう」みたいなチームビルディングから必要になるし、そこは臨機応変に。ただ客観的に作業をやる場合にはチームが必要なので、自分だけだったら主観になっちゃうので、そこはうまくいくような座組みが必要なのかなと。

宇都宮:でも主観の中にもロジックの部分と直感の部分ってあるじゃないですか。直感でパッと行ってちょっとデータを取ってみてみたいな。

駒木:ありますね。

宇都宮:ある程度ロジックが通ったら他の人にシェアしやすくなるみたいな流れですよね。

駒木:そうですね。結構面白いのは「自分はこのストーリーのコンセプトが良い」って思っても、色んな人にシェアしてみると「いや、それ以前にやったことがあって失敗したんだよね」みたいなことって結構あって、僕らは結局井の中の蛙な気がして、自分の分野に関してはすごい詳しいんですけど、ほんのちょっと半歩出るだけで全然知識がないんです。そこにはすごい昔からプラクティスしてる方がいて、その人に対して「こういうのどうですか?」って言っても「いや、それもうすでにやったことあるんだよ」っていうことはよくあって、だから重要なのは半歩先に出る時にコンセプトのストーリーをいくつか持っておいて、「こういうのもあるかもしれないし、こういうのもあるかもしれない。自分はこれとこれあたりが良さそうだと思うんですけどどうですか?」っていうのをちょっと聞いてみて、形にする前に本当にラフな感じで聞いてみて、「これが良さそうだよね」みたいなところをフォーカスしていくのがいいのかな。

宇都宮:仮説と検証?

駒木:そうですね。

宇都宮:でもハードウェアって結構…

駒木:難しいですよね。

宇都宮:作ってみなきゃ分かんない部分もあるから。

三木:これに関してはどういう方にヒアリングかけたんですか?

駒木:ヨガをやってる方や専門的にティーチングしてる方だとか、呼吸法の専門家でティーチングしてる方だとかにまずはそういう人が受け入れられるのか、そういう人達がインフルエンサーだと思うので、実際聞いてみてどうかみたいなのでちょっとずつ作っていった。初めは服にウェアラブルするようなモノがいいかなって思ったんですけど、よくよく座禅とか行ってみると「時計だとかそういうのを外してください」っていうので、縛られたくないっていう根源的に感情があるので、「身につけないものでその辺にあるものをただ持つだけでやるほうがいいよね」っていうのでどんどんうまくシフトしていくみたいな。色んな先生に話を聞くと「そもそも呼吸じゃなくて調心調息なので調心の姿勢を良くすることをまずはやったほうがいいよ」って言う人もいてそれもおっしゃる通りで、そういういくつかの切り口がある中でまだ今はここの段階なのかなと。


●今後の事業展開とマイクロモノづくりについて

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三木:ちなみにこの製品の事業化はどんな感じで進めていますか?言える範囲で結構です。

駒木:今まで他にもいくつかのシステムを作ったりしてて、結局コアの本当にそれを惚れ込んでくれるような人でかつすごいインフルエンサーみたいな人と一緒にやっていくとたぶん何らかの動きがあるっていうのが分かるので、この製品じゃなくてもいいし、「そういうのを一緒にやっていこう」っていう人をまず探して、それに共感してくれる仲間を集めるみたいな…

三木:コミュニティですよね?

駒木:コミュニティをまず作る。コミュニティを作ったらそのコミュニティに最適な製品なりサービスを最低限のものは流していくみたいなことができればいいなと。

宇都宮:そうするとマーケティングとはまた違う感じなんですか?

駒木:広い意味で言えばマーケティングになるかもしれないですけど、多くのマーケティングってある程度ターゲットが絞られたりだとかセグメントがあったりだとか、製品も決まってたりだとかするんですけど、未知のものに対してのマーケティングというか…

宇都宮:それもチャレンジングですよね?従来になかった発想になってくる。

駒木:そうですね。

三木:そういう製品開発の仕方って今まであまり東芝さんではやってこなかった感じなんですか?

駒木:私が当たってないだけで、でもそういうのってやってきたからこそメーカーとかって洗濯機を作ったりだとかテレビ作ったりだとか電球作ったりだとかしてるはずなので、どこかしらのタイミングではやってると思うんです。

三木:マスの製品はたぶんやってるところは多いと思うんですけど、これはどっちかって言うとニッチなプロダクトですから、本当にコミュニティの要望に応じてカスタマイズしていったりとか、国で変わったりとかコミュニティで変わったりとか。

駒木:そうですね。

三木:我々はマイクロモノづくりという考えを持っていて、

少量でも高付加価値のモノでそれぞれのコミュニティとかにカスタマイズされたモノをこれからのメーカーは作っていくことになるだろうみたいな仮説を持ってたんですけど、これがもし第一弾がうまくいき始めると同じような形で広まっていくのかなっていう気はします。新しいモノづくりの1つの形、コミュニティがリード役になって、ただプラットフォームとか一緒だけど、コミュニティによって味付けを変えたりとか、そういうのがたぶん21世紀のモノづくりになってくるんじゃないかっていう気はするので、モノづくりっていう観点から見ても面白い取り組みだなと思っています。これは僕からの提案なんですけど、実際開発メンバーで開発会議開く前に「マインドフルなプロダクトなのでみんなやってみましょう」みたいに1分間瞑想して終わったらまた1分間瞑想すると、なぜか一緒にそういう1分の時間を過ごすだけですごいチーム力がまとまるので、それはオンライン会議でやっても同じなので、もし興味があったらやってみてもらえると面白いかなと思います。

駒木:はい。


●駒木さんの考える「日本の○○の未来」に対する想いについて

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三木:駒木さんの考える○○の未来っていうのがあって、○○は自分で入れていただくんですけど、プロダクト開発の未来でもいいですし、マインドフルネスって入れてもいいですし。

宇都宮:デザインの未来とか。

三木:デザインの未来でもいいですし、そういうのをちょっと大上段な感じでお聞かせいただければと思います。

駒木:色々と思いつくんですけど、日本のデザインの未来みたいなところを考えた時に、日本のアートにしろ昔のモノって浮世絵だとか陶器だとか色々とある気はしてるんですけど、「今日本の新しいデザインって何?」って外国人に言われると「こういうものだよ」ってなかなか言いにくい。例えば今使われてるアップルって21世紀の1つの代表する製品だと思うんです。これってすごくスリークっていうかシンプルで無駄なものを取ってテクノロジーとうまく合わせてパソコンを作ったりだとかiPhoneを作ったりだとかしてると思うんですけど、でも根源を辿っていくとスティーブ・ジョブズさんも結構日本のことが好きだったとかもあったりするので、1個プラスアルファとしてデザインとテクノロジーをうまく合わせることによって「これが日本の新しいデザインだよ」っていうモノを作って発信できるといいなと。

三木:その目指すデザインの中に日本の伝統的な禅的な精神性とかも可能性ありそうですか?

駒木:そうですね。それこそ呼吸とかも日本っぽいし、間の取り方みたいなのもたぶん日本人ならではみたいなところもあったりする気がしてて、そういう日本人っぽい伝統というかデザインというかアートというかそういうものをサイエンティフィックにするみたいな、再現性があるような形で実現してあげるっていうのができるとすごく面白いなと。伝統工芸というか伝統のものとか日本っぽいものをサイエンティフィックにするみたいな。

宇都宮:日本人の人間味みたいな感性というか。

駒木:そうですね。それを再現性がある形でテクノロジーを使うというかサイエンティフィックにしてあげることができると面白いなと。

三木:いいですね。ぜひそういうものを鎌倉から一緒に生み出させていただければと。今鎌倉に色んな企業が注目しているみたいで、一番いいのは東京に近いので1時間で行き来できるから、わざわざ京都に行かなくてもいいし、伝統文化も残ってるし、そういう場所が変わるだけで明らかに空気が違うし環境も違うので、R&Dまでは本格的じゃなくてもいいんですけど、エッセンスを取り入れる入口として鎌倉ってたぶん企業のワークスペースがちょっとあって「気分を変えるために鎌倉のワークスペース行くわ」みたいな感じで来てもらえるといいのかな。そこに禅のお寺もいっぱいあるし、マインドフルネスの実践とか禅に詳しい専門家もいっぱいいるから、そういう人達と融合して新しい価値、こういうプロダクトをどんどん生み出せていければなと思っております。

宇都宮:鎌倉デザインセンター(笑)。

三木:鎌倉デザインセンターに。

駒木:KDCみたいな。

三木:ぜひ誘致に絶賛募集中です。各企業様ぜひ来ていただければ。本当に今色んな企業がヒアリングに鎌倉に来ていただけるので、そういうマインドフルシティとしての可能性をどんどんお伝えしているので。本当に今日は貴重なお時間どうもありがとうございました。

駒木:ありがとうございました。

三木:ぜひこれからもこういうマインドフルなプロダクトを一緒に作っていければと思います。


▶対談動画


駒木亮伯さん


Toshiba Design Center SXSW 2018 WEBサイト

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