見出し画像

終末期医療について、今の私が思うこと

年末年始、文藝春秋の落合陽一さんと古市憲寿さんの対談に終末期医療の話題が上がり、様々な所で論争を巻き起こしています。

賛否両論あるかと思いますが、今回の騒動をきっかけに多くの方が「自分がどのようにして最期を迎えたいのか」を考えたのではないでしょうか。

私が働いている病院には介護療養病棟があり、延命のために胃瘻や点滴を選択され言葉を発することのないままベッドに横たわっている方がほとんどです。私は入院以外に訪問リハビリテーションにも携わっていますが、利用されている方の中には90歳以上の超高齢者も多くいらっしゃいます。そうすると、必然的に亡くなる方も多く、看取りやターミナルという言葉を頻繁に耳にします。今の病院に勤めてちょうど1年が経とうとしていますが、利用者さんが亡くなる、という経験はすでに何度もしてきました。

2025年に団塊の世代が後期高齢者となり、日本は超高齢社会となります。時代の潮流に抗うことは困難であり、産まれる人よりも死ぬ人の方が圧倒的に増える社会は手を伸ばさなくてもすぐ傍にあるのです。

落合さんが例に出したトリアージについて、賛否両論が巻き起こるのは当然のことかと思います。
しかし10年先の日本の在り方を見据えながら人口構造の推移を見た時に、労働人口が減る中で多くの高齢者を支えなくてはならない現実を考慮すると、医療や介護にへの負担は少しでも少ない方がいい、むしろそのビジョンがないまま現状維持を望むような社会の制度に異議を唱えてしまうのは、これからの時代を生きる私たちの世代にとっては仕方のないことなのではないか、と思ってしまいます。だからと言っていつ終わるかわからない終末期に黒タグをつけて延命にかかる医療費を自己負担するというのは少々、話が飛躍しすぎてしまうようにも思えますが、この議論をするために一体どれくらいの方が『延命の選択を迫られた自分』と『延命を選択した自分』の姿を想像したのでしょう。また、自分に限らず親、子ども、パートナーといった自分の大切な人にそれを置き換える想像をしたのでしょう。

考えろ、というのは医療職側のエゴイズムに思えます。むしろ身近でないそれらの状態に思いを馳せて、考える方がずっと難しいのではないでしょうか。
ある記事で老後のための貯蓄は赤の他人にお金をあげるのと同然、と書かれていたのを思い出します。何十年後に元気で生きている自分を想像することさえこんなにも困難であるのに、その自分に死期が迫っている、話すことも動くことも食べることもしなくなっている状態というのは、実際にその姿を目にせず一体誰に想像ができるのでしょう。意思決定の難しさを感じてしまいます。

しかし、今も実際にそういう姿で延命治療をしている方がいらっしゃるのは事実です。私たちの仕事はそういった方々のその人らしさをどのようにかたちにするか、そしてそれが叶ったかどうかを一体誰が判断するのか、そんな果てしないものになります。言葉にするとなんだか無責任ですね。私の経験が浅い故かもしれません。

「苦しまずに楽に死なせてほしい」という気持ちは否定されるべきではありません。同じように「どんな状態でもいいから生きていたい、生きていてほしい」という気持ちも否定されるべきではなく、理想論になってしまいますが全ての意向が肯定されることを願ってしまいます。

終末期医療のコストを議論することは大切なことです。倫理的な問題はあるにしろ、日本という国の未来を考える上では終末期に限ったことだけではありませんがそれは避けては通れない問題であり、何よりも今回それが議論されたことで大勢の国民が『自分のこと』として考えるきっかけになったように思えるからです。

落合さんは『浅学』という言葉を使っていましたが、この問題に関しては様々な視点からの意見が必要であり『どこまで深めても深められない』問題なのではないでしょうか。

多くの専門家が色々な意見を述べています。「専門家の意見が分かれるということは、正解がないということ」なんだよ、と教えて頂いたのを思い出します。財政や制度を考える上では一旦、どこかで正解を出さなくてはならないのかもしれません。しかしそれを出す以前に、十分な議論が行えているとは思えません。また例え正解を出したとしても、その後もその制度や政策が人々のニーズに合っているのか、振り返る機会が必要なのではないでしょうか。

今回の対談の全文を読み、その他にも様々な方の意見も伺うことができました。それを踏まえて今現在の自分の考えをまとめておく良い機会かと思われましたので、文章にまとめさせて頂きました。

もし最後まで読んでくださる方がいらっしゃいましたら、駄文乱文にお付き合い下さりありがとうございました。

#医療 #終末期 #終末期医療

読んでいただきありがとうございます。まだまだ修行中ですが、感想など教えていただけると嬉しいです。