見出し画像

【安全基地・安心基地・探索基地】


 ありがたいことに感謝していただけることがある。

「うちの子は本当に変わりました。」「学習に対してこれほどまでに前向きになっていくなんて思いませんでした。」「粘り強さみたいなものが身についてきてとっても嬉しいです。」「今まで不登校だったうちの子がこうして学校に足を運べるのは先生が作り出してくださる雰囲気のおかげです。」「毎日の学級通信で子どもたちの様子がわかるのでほんっとうに嬉しいです。」「家でも学級通信の語りの内容を話しています。」「先生の思いはしっかりと我が子に届いています。親にまで届いていますよ。」などなどありがたいというたった一言では伝え切れないほどの言葉をもらうこともある。

 これは、教員という仕事をしていてこの上ない喜びであるに違いない。自分にもできることがあったんだと、何か一つでも届けることができたんだと思うと本当に胸がいっぱいになる。

 しかし、当たり前だけれど「僕1人」で育てているわけではない。

 というか、僕は学校でしか見ていない。それ以外の時間を精を出して、愛をもって育ててくださっているのはお家の方である。

 「おかえりと」温かく迎え入れてお家で話を聞き、また「いってらっしゃい」と背中を押してくださる。こういった安全基地・安心基地があることが学校で挑戦できる大きな要因なのだ。

 何があっても守ってくれるという安全が保障された場所。そして、なんだか一緒にいると気持ちが良くなる安心感がある場所。そいった居場所をご家庭でつくってくださるから、初めて探索意欲が芽生えるのだ。「ちょっと学校行ってくるわ!」「学校であんなことやこんなことをやってみよう!」「自分にもできるかもしれない!」などといったような冒険心が芽生えるのだ。

 また、上にも書いたが僕が書いた学級通信の語りを家でもまた語りかけてくださることの効果は計り知れない。お家の人がいうことと、先生がいうこと一緒だなとなると真実味がグッと上がるし、大好きなお家の人が信頼している先生がいる学校ならなんか行ってみても大丈夫かもと思えるかもしれない。

 とにかく、いつでも帰ってこれる安全・安心基地をつくっていただけていることが、初めて学校で僕は子どもたちに会うことができるし、そこでの挑戦を見守ることができるのだ。

 子どもたちにとってお家の方との関係性は基地の役割をしている。その安心・安全な基地があるから。探索しようと思えるのだ。学校に行って自分にできることを考えて主体的に動いていく子どももお家での様子を伺うと「家では全然違くて、家でも頑張ってほしいわ」という話もときに耳にする話だけけれど、それこそまさに安全・安心基地の機能が働いているといえるのだと思う。守ってくれる場所、安心させてくれる場所があるからこそ、学校という世界での冒険が始まるのだ。

 そして大切なのはもう一つあると思ってて、外の世界へ冒険したときの感情。

 例えば学校で何か人が所属する係でイベントを開いたとしてものすごくクラスメイトが喜んでくれたとする。そうなった時にポジティブな感情が芽生えるのだ。そのポジティブな感情を増やしてくれるのが、お家で見守ってくれている方々の存在。

 「今日学校でこんなことがあったんだ!!」と話した時に「へ〜!!!それ楽しそうだな、みんなもきっと楽しかったと思うよ!!!」などと共感する存在。そういった存在がお家にいることで、冒険から帰った時にポジティブな感情が増加する。

 子どもたちは楽しかったという思いが、さらに強くなるのだ。するとまた冒険したくなってくる。

 逆もそうだ。外の世界は楽しいことばかりではない。学校に行って嫌なことがあることもあるだろう。

 そんなネガティブな感情を減らす働きをお家でしてくださっているということだ。「今日ね、学校でこんなことがあってさ、嫌だったんだよね。」と話された時に「そっか〜、それは嫌だったね。今度は〇〇に挑戦してみようか。」といったように、感情を共有しながらもその思いのベクトルを逸らしていくイメージ。

 お家でそういった関わりとしてくださることで、ネガティブな感情が減り、また挑戦してみようと思えるものだ。


 つまり、やっぱり結論一担任という立場だけでは子どもを育むことはできないのだ。守ってくれる安全基地となってくれるお家、気分を良くしてくれる安心基地となってくれるお家、そしてポジティブな感情を増やし、ネガティブな感情を減らしてくれる探索基地となってくれるお家。

 そういったお家の方々の支えなしでは、子どもを豊かに育むことは難しいのだ。

 でも勘違いしてはいけないのは、そういった基地の役割を家庭だけのこととして捉えてはいけないということ。特定の人と関係性を結ぶという点では学校の先生でも仲間でもいい。

 特定の人と安全基地な関係、安心基地な関係、探索基地な関係をつくっていくことが子どもたちの豊かな成長を見守る上で大切なことだと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?