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城山文庫の書棚から069『イスラエル軍元兵士が語る非戦論』ダニー・ネフセタイ 集英社新書 2023

1985年に日本人の妻と結婚し埼玉の秩父で家具職人として暮らす著者が、戦争の不条理と即時停戦を訴え昨年末に緊急出版。元イスラエル軍兵士としての自らの経験を基に、軍隊の論理と国家による洗脳の危険性を訴える。

ダニーさんは家具を作る傍ら、全国で講演を行い非戦を訴える。「抑止力という武器による平和」が如何に脆く虚しいものか、度重なる中東戦争が如実に物語っている。イスラエルはガザ侵攻を正当化するが「正しい戦争」など無い。そう主張する彼は母国から非国民扱いされている。

ダニーさんが日本からメッセージを発信するのも憲法9条の精神に賛同するためだ。ところが平和ボケの日本は憲法の精神をかなぐり捨て、アメリカに追随し武装強化にまい進する。日本もイスラエルも人権尊重のレベルが低すぎると彼は嘆く。

ハマスによるイスラエル奇襲から丸3ヶ月。報復攻撃は苛烈さを増し、死者は2万2千人を超えた。犠牲者の殆どはパレスチナ側であり、多数の子どもが含まれる。圧倒的な力の非対称と非人道的惨状を前に、宗教も人種も関係ない。即時終戦以外の選択肢はあり得ない。