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城山文庫の書棚から071『東京の創発的アーバニズム』ホルヘ・アルザマン Studiolab 学芸出版社 2022

慶應大学で教鞭を取るスペイン人都市研究者・建築家が東京の都市を解析しプロトタイプを浮かび上がらせる試み。横丁・雑居ビル・高架下建築・暗渠ストリートそして低層密集地域という5つの都市パターンで東京を切り取る。
著者が提唱する創発的アーバニズムとは、偶発性と切実な必要性から生まれる都市のあり方。森ビルや三井不動産をはじめとする大企業が主導する既存のアーバニズムとの違いは、小規模で多様な関係者による地域密着型のコミュニティであることだ。
ゴールデン街やのんべい横丁は海外から訪れる人から見てエキゾチックであろうし、アメ横や銀座コリドー街などの高架下建築も東京ならではの高度な土地利用の知恵と言える。原宿ブラームスの小径や九品仏川緑道は水路が張り巡らされた江戸の名残だ。
環七と山手線の間に残る低層密集地域も歩いて楽しめる魅力的なエリアだが、災害時の避難・消防経路の確保など課題は残っている。街の個性と安全の確保という二項のバランスが都市計画家・建築家には求められる。能登半島地震の発生を受け、改めて身を引き締める。