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城山文庫の書棚から060『マザーツリー』スザンヌ・シマード ダイヤモンド社 2023

森の樹木が菌糸を通じて会話している?母なる木=マザーツリーが子供や孫に栄養を与えている?映画「アバター」で描かれたファンタジーが現実にも起こりうるのだろうか?半信半疑で手に取った本書は、まだまだ知らないことばかりの自然の叡智について教えてくれる。

木々は地中の菌類ネットワークを介して繋がりあい、互いを認識し、栄養を送り合っている。科学誌ネイチャーに載った1997年の論文が専門家たちに多大な影響を与えた。それはインターネットと類似したネットワークあり、私たち人間の脳とも共通点があるという。

著者のシマードはカナダの自然に囲まれて育った森林生態学者。女性がほとんどいない森林局で働く中で有毒物質グリホサートを多用する森林管理に疑問を持ち、木々がやりとりする炭素量の測定という独自の手法で研究と実験を重ね、画期的な発見を生み出した。

先日参加したコモンフォレストの山歩きでも、森林ガイドの坂田さんが当たり前のように地中の菌糸ネットワークの話をしてくれた。本書はどうしたら我々が森を救えるかではなく、我々が如何に森によって救われるかについての本だ。人間もまた、広大な生命の網の目の一部なのだと、あらためて考えさせられる。