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好きな小説の話 アメリカ文学と町田その子さん

私は本を読むのが好きではありません。小説みたいなものを書いていますが、小説も、あまり読みません。
と言って、物語に触れること自体が嫌いな訳ではなくて、それはむしろ好きです。
けれど、読書というのは読む努力をしないと、前に進んいきません。

読む努力。

これは私にとってとても難しいことです。
活字を追うのがどうにも億劫になってしまって、まず読もうという気持ちにならないんです。

私は映画が好きなのですが、それはこちらの努力とは無関係に物語が進んでいくため鑑賞するのが楽、というのが大きいのだと思います。
 
けれど、実は文学部出身。大学時代は結構色々読んでいました。

サリンジャーが好きだったので、有名な『ライ麦畑でつかまえて』をはじめ、『フラニーとゾーイー』、『大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア序章』、『ナイン・ストーリーズ』辺りの作品は読みました。
ハンドルネームの「Zooey」も、『フラニーとゾーイー』の後半の短篇「ゾーイー」からとっています。
青春の痛み、とか言うと陳腐なのですが、世間に溢れている偽善や欺瞞を過敏に感じ、自らの中にもそれを認めて苦しむ様子には、ああ分かるな、と思うところがとても多く、そういう苦しさを瑞々しく描かれているのがすごく好きです。
 
それと、ゼミの先生の専門だったので、フォークナーもちょっとかじりました。
特に深く扱ったのは『アブサロム、アブサロム!』という作品なのですが、これがめちゃくちゃ難解だけどめちゃくちゃ面白いです。
奴隷制の過去を持つアメリカ南部という土地の罪や喪失を、複雑な文体と構成をもって炙り出すその迫力がとにかくすごくて、ラストには南部の抱える宿命をひしひしと感じる作品です。
 
あとはスタインベックも好きです。
読んだのは『二十日鼠と人間』と短編集の『赤い子馬』くらいなのですが、素朴さと宿命論的ロマン(抗えない自然の残酷さや時代の流れなど)の両方があって、とても素敵です。
『怒りの葡萄』とか全然分かりませんが…。
 
私の好きな作品には、学生時代に読んだアメリカ文学が多く(英米文学やってました。つか何年前の話だ…)、日本人の作家さん、となると、ものすごく疎いです。
ラノベにも疎いのですが、もっと崇高な読書がしたいとかそういうアホみたいなことを考えているわけではなくて、前述のように「読む努力」が億劫で、読まなければならない状況でないと読もうと思えないからです。書いていて、これこそアホだなと思いますが。
 
でも、最近、好きな日本の作家さんができました。
町田その子さんです。
初めて町田さんの作品を読んだのは、「女による女のためのR-18文学賞」の最終候補としてホームページに作品が掲載されていた時です。
私自身、その時は応募してなかったのですが、なんとなく候補作を上から順に読んでいこうと思い、確かに2番目にあった「金魚鉢、メダカが二匹」を読みました。
そうしたら、ものっっっすごく好きな作品で、速攻で長文の感想書いて投稿(投票?)し、あとの作品は読みませんでした(おい…)。
なんと言うか、主人公の、見たり聞いたりしたものに対する心の動き方が、優しくて悲しくて「そうだよね」と思えるもので、本当にとても素敵でした。
 
それから町田さんは「R-18文学賞」の大賞を受賞され(当然ですよね当然)、現在単行本も2作出されてます。

私は、昨年『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』を、お正月頃に『ぎょらん』を買って、のんびり読んだのですが、どちらも本当にとてもよかった。

一篇一篇で言えば前者の中に収録されている表題作の「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」と「溺れるスイミー」がすごく好きです。
心の動き方が好き、主人公の心も彼と関わる女の子の心もとてもよく分かって愛おしく思える、というのが「チョコレートグラミー」、
物語の中の仕掛けによって、主人公にとっての世界がくるっと色を変えて輝くような感じが好きなのが「スイミー」です。
特に「スイミー」の「手が見える」というのがすごくすごく好きです。

『ぎょらん』は作品全体の完成度という点で、本当に素晴らしかった。
1作ごとに成長していく青年と、彼を取り巻く人々の姿とがとても良くて、町田さんは本当に視野の広い方だなと思います。
どの人物にもその人の人生があって、ものの見方があって、これまでの歴史があるのだということがひしひしと感じられて、ぎょらんにまつわる群像劇ともとれる作風がとても素敵です。
最終話では、それまでのお話が綺麗に繋がっていき、もう見事としか言いようがなくて、ああすごい、と思いました。
それでも、全ての謎をとき明かさない所に、これから先への広がりを感じ、彼らが今後もどんどん成長(変化)していくのだなと思えたところも良かったです。
 
できれば、雑誌に掲載されている読み切りとかも追いかけて読みたいのですが、ど貧乏なので難しい…。
でも、今回の小説新潮は買ってみようかな…とか、そんなことを考えています…。

でもどうしよ…。りんごちゃん(3歳の娘)の幼稚園で色々お金もかかるしな…。
バス代とか高いんですよイベントがあると何やかんやとお金かかるんですよでも幼稚園行ってからりんごちゃんすごいお姉さんになってブロッコリーも食べるようになってオムツも取れてお友達もたくさんできてすごいんですよ幼稚園すごい…。
 
小説のことに話を戻しますが、最近は『チョコレートグラミー』や『ぎょらん』を読めたおかげで読書に対する意欲が結構上がっているので、何かまた読んでみようかな、と思っています。
ネットに掲載されているものでもいいし、紙の本でも(金銭的に大丈夫な範囲であれば)。
一度ハマれば読めるので、りんごちゃんが幼稚園に行っている間少し時間もあるし、「読む努力」をしてみようかな、と思っています。

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