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「面白い人センサー」と魔都、東京

オーストラリアでワーホリ中🇦🇺
旅人担当のズーミンです👍




東京という大都市には、色んな人がいる。

日々の仕事に精を出すサラリーマン。
仕事のため夜の街へ繰り出す女性たち。
なんの仕事をしているか分からないやつ。

そんな人々が大勢ひしめきあっているのが東京である。


***


あれはもう5,6年も前になるだろうか。

僕がまだ関東でサラリーマンをやっていて、仕事が嫌で嫌で仕方なかった頃。

仕事の捌け口を探すように、プライベートで色んな会に参加して色んな人と出会っていた。

きっと、仕事以外で自分を大切にできる場所を探していたんだと思う。


だが、そういった会に参加する人は多くの場合ある目的を持っていた。

そう、勧誘である。

僕自身は勧誘すべきものを何も持っていなかったが、それ故に数え切れないほどの勧誘を受けた。

ネットワークビジネス、不動産、保険、金融業、営業術、宗教、その他諸々……

友人として接しようと心がけても、彼らはこちらをカモとしてしか見ていない。
食事に誘われ行ってみると、見知らぬ第三者がいることもよくある。

両目が¥マークになっている人のあまりの多さに人間不信に陥ったこともある。
そしてそれは結構辛い。

だが、そういった人々と多く接していると、ある時から察することができるようになる。
「あ、コイツ勧誘だ。」と。


見分け方は人によって違うと思うので、僕が感じたポイントをいくつか挙げていく。

  • 人の話を聞いていない

  • 将来の夢についてやたらと聞いてくる

  • 笑顔が不自然

まず、彼らは基本的に人の話を聞いていない。
どうやって勧誘の方向に持っていくか、そればかり考えているため上の空なのだ。

どれだけ面白いボケをかましても反応が薄かったり遅かったりする。
決してボケがつまらないわけじゃないと信じてる。

そのくせ、やたらと夢について聞いてくる。特にネットワークビジネスの連中はそうだ。

そもそも社会人で夢を持っている人がどれだけいるかはさておき、なぜさして仲良くもないソイツに話さなければならないのか。
そこからしてすでに疑問である。

例えば僕の夢の一つは、このnoteでも何度か触れているように「世界を旅すること」である。

それを言おうものなら即座に「それをするには時間とお金が必要だよね!」と来る。

それはそうなのだが大切なのは心の持ちようだと思う。本気ならばすでに動き出しているか、それらが無くても旅立っている。

そして彼らの多くは不自然な笑顔をする。
ハハハ、と乾いた笑いに加え、多くの場合は口の端が片方だけ上がる。
いずれも本心では笑っていない証拠である。





だが一方で、色んな人に会いまくっていると、稀に「コイツ面白いやつだな」という人間に会う。

そんな奴が勧誘のこともないわけではないが、大抵の場合本当に面白い。

彼らは別に笑いのセンスがあるわけではない。
なんというか、行動や価値観が人と違うのだ。

そしてそんな面白い奴を見分ける感覚を、僕は「面白い人センサー」と呼んでいた。


***


高校時代の友人を誘ってとあるイベントに参加した時、Oはいた。

イベントの進行役を務めるのは名も無い芸人で、当時の僕より若かったと記憶している。

全く面白く無い進行役で、何か言ってはダダ滑りしていたが、芸人が司会を務めるのは珍しいと思って僕は興味を持った。

そしてつまらないイベント開始の合図の後、僕は真っ先に進行役の所へ行った。

その時同じく進行役に興味を持って話しかけたのがOという男だったのだ。


Oは一見普通の男だった。
清潔感のある服装に身を包み、他の参加者と同じようにその場にいたため、こちら側も特に認識はしていなかった。

が、進行役と話しているOを見て僕の「面白い人センサー」が働いた。
そして僕の予感はすぐに確信に変わった。

……こいつ、めちゃくちゃ頭キレるぞ。

Oの頭の回転について行けずタジタジの進行役を尻目に、僕と友人はOと話し始めた。

彼は自身のことを「心理学を極めた」と言っていた。
普通それだけ聞けば一笑に付すのだが、Oの頭のキレや話し方を見るに嘘ではなさそうだ。

そして案の定、彼の膨大な知識と体系化された理論を聞くことができた。
生物学、認知的不協和、ノンバーバルコミュニケーション、社会関係資本、被服心理学、etc…

そして特筆すべきはその目的である。
それらの知識を彼なりに理論構築し体系化したのは「魅力的な男性になる」ためだという。

すでに彼はいくつかのイベントに参加して研究の手応えを感じていて、僕と出会ったイベントを最後にするつもりだったらしい。

僕はもちろんこの出会いを無駄にすべきでは無いと思い、Oと連絡先を交換してその後幾度となく交流して彼から多くのことを学んだのだった。





あれから時が経ち、今はもうOと連絡は取っていない。

聞くところによると保険会社に就職して良い成績を収めていたようだが、それも2年も前のことだ。

一度Oに保険の話をされたことがあったが丁重にお断りした。
彼の力になれなかったのは少し申し訳なさもあったが、そのために高い保険料を払うのは違うと思ったからだ。


Oは今どうしているのだろうか。
優秀な彼のことだ、何かしら目的を見つけてそれを達成する日々を過ごしていることだろう。

僕如きが心配する必要のない人間だとは思うが、無理せず元気にやってることを異国の地から願おう。


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