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シェイプ・オブ・ウォーター


アカデミー賞が盛り上がりを見せているこの頃ですが、ノミネート数も多く有力な「ドライブ・マイ・カー」然り、近年のアジアの活躍はかなり嬉しい。

こうしてアカデミー賞の時期になると決まって思い出すのが2018年の第90回アカデミー賞で、この年は個人的にハマった作品が多く、私の憶測だと「スリービルボード」が賞を掻っ攫うイメージだった。

しかしいざ発表されると、「シェイプ・オブ・ウォーター」が作品、監督、美術、作曲の4部門で賞を取った。
美術、作曲はわかるけど、監督、作品賞はスリービルボードだと思っていた。

これは「シェイプ・オブ・ウォーター」が取るはずないと言う意味ではなく、「スリービルボード」の方がアカデミー会員受けしそうという理由からだ。

「実際には無いとは思うけど、そうなったらすごい事だよね」枠だった「シェイプ・オブ・ウォーター」が賞を取った事で、今後のアカデミー賞の多様性が広がった様に感じられて、かなり嬉しかった。


まず「シェイプ・オブ・ウォーター」を見るにあたって絶対に知っておきたいのが、監督の「ギレルモ・デル・トロ」。

私が彼の作品を人に紹介するとすれば「怪物好きでダークファンタジーが得意な監督」だ。この前情報だけでもあれば、「シェイプ・オブ・ウォーター」を見るにあたって作品の世界観に入り込みやすくなる気がする。

あらすじはいろんなところに書いてあるので省くけれど、異人種との純粋な恋愛という題材に生理的嫌悪を抱く人がいるのも確かで。だって、お相手の半魚人のビジュアルが結構魚寄りだし、ヌルッとしている。ただ標本の様な筋肉がついた体つきは素晴らしい。監督のこだわりが顕著に表れている。

これはダークファンタジーを得意とする監督がその世界観の中で表現する、私たちが生きるリアルな世界の問題だと思う。


誰にだってコンプレックスや、人に言えない嗜好がある。

不思議な事に、臭いものを嗅ぐための展示が開かれる様な時代になった。例えば足の爪の匂いを嗅ぐだとか、脱ぎたての靴下を嗅ぐだとか、そういった臭いものがつい癖になってしまう事だって、本来は一人でこっそり嗜む秘密の嗜好だったはず。

臭いもの好きは結構な割合で居るのかもしれないけれど、身の回りにはこうした小さな、秘密の嗜好とコンプレックスが溢れている。

〇〇が好きです。特技は〇〇です。〇〇は苦手です。とか、大きな枠で共感できる事よりも、小さな秘密の嗜好とコンプレックスの共感の方が、それは惹かれ合うには重要な要素なのだと思う。

そして大多数からの共感を得る快感よりも、一人の理解者にしっかりと寄り添ってもらえる事の方が実は心地良かったりもする。その方が互いに芯のある強い心と自信を手に入れる事ができる。


「シェイプ・オブ・ウォーター」は、自分の、他人には触れさせたくない部分にじわっと入って撫でてくれる様な、強く優しいおとぎ話だと思う。

今年のアカデミー賞はどうなるのかな〜




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