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『何かが道をやってくる』を読んだよ

移動遊園地の物語が読みたいと思ったので今回はこの本を読んだ。
タイトルからして分かるように、ホラー小説だ。

あらすじ:主人公は二人の少年で、ある日彼らの街に移動遊園地(米国では「カーニバル」と呼ばれている)がやって来る。しかし、そのカーニバルはどうも様子がおかしい。怪訝に思った少年たちが詮索していると、団長に目を付けられて様々な怖い目に遭う...といった感じ。

私は移動遊園地に行ったことがないが、いかにも海外的で憧れがある。しかし、同時に移動遊園地というものはどうも怪しげな雰囲気があるようなイメージがあるのだ。
その理由は、幼い頃に読んだ『平成うわさの怪談』に載っていた物語で移動遊園地の話があったからというのも大きい。『平成うわさの怪談』に載っていた物語はなかなかにトラウマ級のものが多いのだが、私は小学生の頃読書が苦手すぎて、ホラー小説しか読めなかったのだ。(謎すぎる)

話が横道に逸れてしまったから戻そう。『何かが道をやってくる』は確かに恐ろしいシーンもあったが、全体としてブラッドベリならではの幻想的な雰囲気が漂っているのが魅力的だ。
また、久々にブラッドベリを読んでみて、改めて彼の文章表現は詩的で決して誰にも真似出来ないような魅力に満ち溢れていると感じた。気に入った文を引用しておこう。

「われわれは、おたがいに、他人の粘土に手を出して、それをこねてみたくなるものだ。そんなふうにして、いろんな形の壺ができあがるのを楽しむ、それが友情なのだ。」

また、他にも会話でとても良いと思うのがあった。

「男の子って、なぜ窓を広く開けたがるんだろうね」
「血が熱いからさ」

いや〜〜〜、凄すぎる。読んでて私は感心すると同時に「こんなの書けねーよ!!!」と物凄く悔しくなってしまった。一つ一つの表現が好きすぎていちいち付箋を貼ってしまった。私もこんな表現力が欲しいのだ(切実)。

そんな感じで、ブラッドベリの文章はブラッドベリにしかない魅力があるのだ。因みに彼はSF作家として有名だ。これを読んで思い出したのだが、私は以前ブラッドベリの『ウは宇宙船のウ』という短編集を読んだことがある。そこに収録されている作品もどれも素晴らしかったのだが、中でも飛び抜けて印象に残ったのが、『霜と炎』という話だ。noteに書き忘れていたのでついでにこの記事で語ってしまいたい。
あらすじ:ある地球外の星に住んでいる人たちがいる。彼らはその星の放射線の影響で八日間しか生きられない。しかも赤ん坊のうちに死ぬというのではなく、八日間で急速に成長し、大人になり、老いて死ぬのだ。それが常識の世界に主人公は疑問を持ち、星を脱出すればもっと長生きできるのではないかと考え、それを決行しようとする。
この物語はつまり八日以内の話なのだが、あまりにも密度が高い。短編とは思えないほど内容が濃く、生命の強さを物凄く感じる作品だ。だから読んでいて疲れるけれど、思わず一気に読んでしまう。読後感は『火の鳥』を読んだ後みたいな感じだ。そうまさに、私はこれを読んでいる時手塚治虫の絵柄で物語を想像していた。この気持ちを誰かに共感して貰いたいものだ。

それからもう一つ、ブラッドベリは少年の描き方が上手い。というかアメリカ文学の少年は生き生きとしているのが多いのが良い。そこでそういったのが好きな人にもう一つオススメしたいのは、マキャモンの『少年時代』だ。

こちらはざっくり言うと郷愁+ミステリ+幻想と言った感じの作品だ。私にとっては好きな要素しかない。しかも移動遊園地の物語もある。ブラッドベリが好きな人は是非こちらも読んで欲しい。

追記
小説の冒頭でなんかの引用があるとすごくテンション上がるけど、この本は引用三つもあって笑っちゃった。多すぎ!!


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