難波麻人

僕のささやかな奮闘記をエッセイにしたり、たまに短い物語を書きたいと思います。

難波麻人

僕のささやかな奮闘記をエッセイにしたり、たまに短い物語を書きたいと思います。

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  • エッセイ

    今までの日々や、ささやかな僕の奮闘を書いていければと思います。

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    僕は電車の待ち時間が異様に嫌いなので、そんな時に読めるものが書ければと思います。

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    小さなBARに訪れる風変わりな客達の、お酒にまつわるショートストーリーを書いていきます。

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    小さな物語や、小説も書いていければと思います。

記事一覧

「猫と僕の関係」

玄関を開けると猫の鳴き声が聞こえて、玄関前に置いたオリーブの植木鉢から三毛猫が顔を出した。 この猫は近くに住んでいるのかたまに遊びに来てくれて、僕が玄関を開け…

難波麻人
1日前
2

毎週ショートショートお題 「てるてる坊主のラブレター」

雨は今もずっと降り続いている。 この雨が私の心と体をどこかへ流してしまう前に、ずっと開けられずにいた彼からの手紙を開いた。 「ちゃんと意識がある間に、この手紙…

難波麻人
3日前
8

「漫才みたいな」

夜中に通った事のない道を一人で散歩をしていると、角を曲がった所で少し広めの公園が現れた。樹木に覆われた公園のフェンスに沿って歩くと、公園内からサッカーボールで…

難波麻人
5日前
1

毎週ショートショートお題 「祈願上手」

その男は「必ず願いを成就させる男」として有名だった。 「何か絶対に叶えたい願いがあるとするだろう?普通の人間はお百度参りで有名な神社に行って一心不乱に祈り続け…

難波麻人
5日前
7

「ニトリ信者」

ニトリをもの凄く利用してる事に気付かされた。 僕としては必要な時に必要な物を買いに行っていただけで、標準的な利用回数だと思っていた。だが、友人と飲みに行った時…

難波麻人
12日前
7

「新店長就任記念キャンペーン!」

駅前に新しい居酒屋が出来てもう一年ほどになる。僕は毎日店の前を通るのだがいつも何かしらの目玉キャンペーンがやっていて、機会があれば一度の飲みに行きたいなぁと思…

難波麻人
13日前
3

毎週ショートショートお題 「文学トリマー」

私の家の近所にはトリミングサロンがあって、店の前にいつも置いてある大きな黒板には、店主のトリマーさんによる日々の出来事や、最近気になってることなんてのが丁寧な…

難波麻人
2週間前
5

「本物のモンスター」

東京に住み始めてから十四年ほど経つのだが、僕のような生活をしている人間は、荷物も少なくお金もないので引っ越しを自分達で済ませてしまうことが多い。引っ越しと聞く…

難波麻人
2週間前
2

「怪奇現象に悩む家」

一昔前によくテレビの心霊番組内で、怪奇現象に悩む家という企画が放送されていた。そして当時は、まさか自分がそんな家に住むとは思ってもいなかった。 番組内で起こる…

難波麻人
2週間前
6

「記憶冷凍」

脳が人体に与える影響は不思議なものである。 近年の冷凍食品のクオリティーは飛躍的に上がり、今ではレストランの味をレンジでチンするだけで楽しめるようになった。さ…

難波麻人
3週間前
11

「#24 百円ショップの募金箱に千円」

考えごとをしながら自転車を駐輪場から出したせいで、なんとそのまま自転車を押して目的のカフェまで歩いて行ってしまったことがある。 店に到着して自転車の鍵をかけた…

難波麻人
3週間前
4

「世界のバランス」

大阪から東京に仕事で来た後輩と久しぶりに会う約束をした。 あまり東京に来たことがない後輩を案内して回り、お昼には僕がオススメのラーメン屋へ連れて行った。その店…

難波麻人
3週間前
5

エッセイ 「真夜中の怪談」

夏の気配を感じる蒸し暑い夜に、飲みながら怖い話を聞く機会があった。 話してくれたのはTVやライブなどでも怪談話を披露したことのある人で、子供の頃から霊感のある自…

難波麻人
3週間前
4

「低音の響き」

「難波さん、スマホで音楽聴くイヤホンにいくらまで出せます?」 一緒にいた後輩から突然そう声をかけられた。今使ってるのはプレゼントで貰ったものだが、自分で出すな…

難波麻人
1か月前
8

「#23 ラーメンを頼んでも炒飯のスープは来る」

町中華やラーメン屋で炒飯の単品を注文すると、ネギが少し入った鶏ガラベースのスープが付いてくることが多い。 シンプルながらコク深い味わいは馬鹿に出来ない美味しさ…

難波麻人
1か月前
7

「#22 このまま歩けば試供品をもらえる」

4月8日に誕生日を迎え44歳になった。 今まで特に年齢など気にせずに生きてきたが、歩いていてふと自分の年齢を考えた時に、44かぁ〜、えっ!44歳なんっ!?と驚いてし…

難波麻人
1か月前
8
「猫と僕の関係」

「猫と僕の関係」

玄関を開けると猫の鳴き声が聞こえて、玄関前に置いたオリーブの植木鉢から三毛猫が顔を出した。
この猫は近くに住んでいるのかたまに遊びに来てくれて、僕が玄関を開けて外に出る度に、いつも「にゃ〜」と挨拶をしてくれる。雨の日のには玄関前のひさしで雨宿りしてることもあり、引っ越して来てからずっと良好な関係を築けている。

以前住んでいたマンションにも一匹の猫がよくやって来ていたが、そいつはなかなかにふ

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毎週ショートショートお題 「てるてる坊主のラブレター」

毎週ショートショートお題 「てるてる坊主のラブレター」

雨は今もずっと降り続いている。
この雨が私の心と体をどこかへ流してしまう前に、ずっと開けられずにいた彼からの手紙を開いた。

「ちゃんと意識がある間に、この手紙を書こうと思いました。
これがあなたへのラブレターになるのか、それとも別れの手紙なのか、感謝の気持ちなのか、酷い未練なのかは分からないけど、それでも書こうと思います。

病院のベッドであなたが僕の手を握ってくれた時に、初めてあなたと

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「漫才みたいな」

「漫才みたいな」

夜中に通った事のない道を一人で散歩をしていると、角を曲がった所で少し広めの公園が現れた。樹木に覆われた公園のフェンスに沿って歩くと、公園内からサッカーボールでドリブルをする音が聞こえてきた。

小気味いいドリブル音からは、中々のテクニシャン振りがうかがえる。
昔は自分もこうして夜中に一人公園でドリブルの練習をしていたものだと、懐かしい気持ちで入り口から公園を覗いてみた。
しかし公園にはドリ

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毎週ショートショートお題  「祈願上手」

毎週ショートショートお題 「祈願上手」

その男は「必ず願いを成就させる男」として有名だった。

「何か絶対に叶えたい願いがあるとするだろう?普通の人間はお百度参りで有名な神社に行って一心不乱に祈り続けるんだよ。
俺から言わせたらそこがもうズレててさ、絶対に叶えたいからこそ全身全霊の一発を放たなきゃダメなわけ。百回でダメだったら次は二百回、自分でどんどん薄めにかかってどうすんだよ。

神様って意外に完全な存在じゃなくて、見落としや気

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「ニトリ信者」

「ニトリ信者」

ニトリをもの凄く利用してる事に気付かされた。
僕としては必要な時に必要な物を買いに行っていただけで、標準的な利用回数だと思っていた。だが、友人と飲みに行った時に「今日何してたん?」と聞かれたので、昼間ちょっとニトリに行ってたと答えると「いやどんだけニトリ好きやねん。今月でそれ聞いたの三回目ぐらいやわ」と驚かれた。その時初めて、ニトリに月三回は行き過ぎなのだと知ったのだ。

僕はなんだか恥ずか

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「新店長就任記念キャンペーン!」

「新店長就任記念キャンペーン!」

駅前に新しい居酒屋が出来てもう一年ほどになる。僕は毎日店の前を通るのだがいつも何かしらの目玉キャンペーンがやっていて、機会があれば一度の飲みに行きたいなぁと思っていた。
先日お店の前を通ると「今日から一週間ドリンク半額!」と書かれた張り紙を見つけ、その下には大きく「新店長就任記念キャンペーン!」と書かれていた。

僕はその張り紙を見た瞬間に「やった!ドリンクが半額で飲める」という喜びよりも、

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毎週ショートショートお題 「文学トリマー」

毎週ショートショートお題 「文学トリマー」

私の家の近所にはトリミングサロンがあって、店の前にいつも置いてある大きな黒板には、店主のトリマーさんによる日々の出来事や、最近気になってることなんてのが丁寧な文章で綴られている。

小さな道路を挟んだ向かいのスーパーから最初にそれを見つけて、買い物や散歩の度に読んでいたらすっかりファンになってしまった。
心がほっとするようなエピソードや、ユーモアたっぷりのエピソード、雨上がりの日に書いた詩だ

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「本物のモンスター」

「本物のモンスター」

東京に住み始めてから十四年ほど経つのだが、僕のような生活をしている人間は、荷物も少なくお金もないので引っ越しを自分達で済ませてしまうことが多い。引っ越しと聞くと「手伝いますよ!」と、小遣い稼ぎに駆けつけてくれる後輩の存在も非常に心強く助かっている。

ただ一つ問題があり、僕の家には十年以上前に友人から貰った、ドラム式洗濯機という名の悪魔が鎮座しているのだ。この旧式の悪魔は、衣類を傷めず縦型の半

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「怪奇現象に悩む家」

「怪奇現象に悩む家」

一昔前によくテレビの心霊番組内で、怪奇現象に悩む家という企画が放送されていた。そして当時は、まさか自分がそんな家に住むとは思ってもいなかった。

番組内で起こる怪奇現象といえば、深夜のラップ音から誰かが廊下を歩く足音、部屋に設置した定点カメラには、住人以外ではない誰かの呻き声や喋り声、黒い靄のような人影がハッキリと録画されていた。
廃病院や心霊トンネルなど番組内で放送される他の心霊スポットと

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「記憶冷凍」

「記憶冷凍」

脳が人体に与える影響は不思議なものである。

近年の冷凍食品のクオリティーは飛躍的に上がり、今ではレストランの味をレンジでチンするだけで楽しめるようになった。さらにはその手軽さからダイエットブームとの相性も良く、進化を続けた結果ついには食事の記憶だけを冷凍させることにまで成功した。

オムライスの記憶冷凍食品をスーパーで買えば、オムライスを食べた記憶だけを脳に刻むことが出来る。これによって脳

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 「#24 百円ショップの募金箱に千円」

「#24 百円ショップの募金箱に千円」

考えごとをしながら自転車を駐輪場から出したせいで、なんとそのまま自転車を押して目的のカフェまで歩いて行ってしまったことがある。
店に到着して自転車の鍵をかけたところで「うわ、自転車乗るの忘れてた」と我に返ったのだ。

スマホで時間を確認すると見事に15分ほど遅刻していて、ずっと自転車を押しながら歩いたせいで汗だくにもなっていた。
急いで店に入り、待ち合わせしていた友人に事の顛末を話したのだ

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「世界のバランス」

「世界のバランス」

大阪から東京に仕事で来た後輩と久しぶりに会う約束をした。
あまり東京に来たことがない後輩を案内して回り、お昼には僕がオススメのラーメン屋へ連れて行った。その店はラーメンも勿論美味しいのだが、なによりも炒飯が絶品で後輩にも絶対食べて欲しいと思い、ラーメンの大盛りを頼もうとしていた後輩を説得してラーメンセットの食券を二枚と、ラーメン大盛りの食券を購入した。

「僕そんな、どっちも食べれますかねぇ」

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エッセイ 「真夜中の怪談」

エッセイ 「真夜中の怪談」

夏の気配を感じる蒸し暑い夜に、飲みながら怖い話を聞く機会があった。
話してくれたのはTVやライブなどでも怪談話を披露したことのある人で、子供の頃から霊感のある自身の体験談を中心にいくつか聞かせてもらったのだが、話を聞いているうちにどんどんと引き込まれていく臨場感や、おどろおどろしいだけではない妙なリアリティーがあり、大人になってから怪談話で寒気がするほど怖いと思ったのは初めてだった。
「やはり

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「低音の響き」

「低音の響き」

「難波さん、スマホで音楽聴くイヤホンにいくらまで出せます?」

一緒にいた後輩から突然そう声をかけられた。今使ってるのはプレゼントで貰ったものだが、自分で出すなら正直三千円か出せても四千円ぐらいだと僕が答えると「僕安いの駄目なんですよねぇ〜音質とかこだわっちゃうんで」と、僕が音質にこだわりがないとまるで知ってたかのような反応が後輩から返ってきた。そして後輩はそこからイヤホンのうんちくを僕に語り

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「#23 ラーメンを頼んでも炒飯のスープは来る」

「#23 ラーメンを頼んでも炒飯のスープは来る」

町中華やラーメン屋で炒飯の単品を注文すると、ネギが少し入った鶏ガラベースのスープが付いてくることが多い。

シンプルながらコク深い味わいは馬鹿に出来ない美味しさであり、「せっかくだから、お味噌汁代わりじゃないけどこれどうぞ!」みたいな店側の気遣いを感じるとても良いサービスである。たまに溶き卵や野菜の切れ端などが入ってる店もあり、ちょっと得した気分にだってさせてくれる。

ただラーメンと炒飯の

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「#22 このまま歩けば試供品をもらえる」

「#22 このまま歩けば試供品をもらえる」

4月8日に誕生日を迎え44歳になった。
今まで特に年齢など気にせずに生きてきたが、歩いていてふと自分の年齢を考えた時に、44かぁ〜、えっ!44歳なんっ!?と驚いてしまうことがある。平日の昼間にスニーカーで街中をふらふらと歩いている44歳は僕だけなのではないかと辺りを窺ってしまうようになった。
人それぞれ歩幅も歩き方も違うものだが、やはり大人としてこれからは成熟していきたいものである。その一歩

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