記事一覧
毎週ショートショートお題 「てるてる坊主のラブレター」
雨は今もずっと降り続いている。
この雨が私の心と体をどこかへ流してしまう前に、ずっと開けられずにいた彼からの手紙を開いた。
「ちゃんと意識がある間に、この手紙を書こうと思いました。
これがあなたへのラブレターになるのか、それとも別れの手紙なのか、感謝の気持ちなのか、酷い未練なのかは分からないけど、それでも書こうと思います。
病院のベッドであなたが僕の手を握ってくれた時に、初めてあなたと
毎週ショートショートお題 「祈願上手」
その男は「必ず願いを成就させる男」として有名だった。
「何か絶対に叶えたい願いがあるとするだろう?普通の人間はお百度参りで有名な神社に行って一心不乱に祈り続けるんだよ。
俺から言わせたらそこがもうズレててさ、絶対に叶えたいからこそ全身全霊の一発を放たなきゃダメなわけ。百回でダメだったら次は二百回、自分でどんどん薄めにかかってどうすんだよ。
神様って意外に完全な存在じゃなくて、見落としや気
毎週ショートショートお題 「文学トリマー」
私の家の近所にはトリミングサロンがあって、店の前にいつも置いてある大きな黒板には、店主のトリマーさんによる日々の出来事や、最近気になってることなんてのが丁寧な文章で綴られている。
小さな道路を挟んだ向かいのスーパーから最初にそれを見つけて、買い物や散歩の度に読んでいたらすっかりファンになってしまった。
心がほっとするようなエピソードや、ユーモアたっぷりのエピソード、雨上がりの日に書いた詩だ
「#24 百円ショップの募金箱に千円」
考えごとをしながら自転車を駐輪場から出したせいで、なんとそのまま自転車を押して目的のカフェまで歩いて行ってしまったことがある。
店に到着して自転車の鍵をかけたところで「うわ、自転車乗るの忘れてた」と我に返ったのだ。
スマホで時間を確認すると見事に15分ほど遅刻していて、ずっと自転車を押しながら歩いたせいで汗だくにもなっていた。
急いで店に入り、待ち合わせしていた友人に事の顛末を話したのだ
「#23 ラーメンを頼んでも炒飯のスープは来る」
町中華やラーメン屋で炒飯の単品を注文すると、ネギが少し入った鶏ガラベースのスープが付いてくることが多い。
シンプルながらコク深い味わいは馬鹿に出来ない美味しさであり、「せっかくだから、お味噌汁代わりじゃないけどこれどうぞ!」みたいな店側の気遣いを感じるとても良いサービスである。たまに溶き卵や野菜の切れ端などが入ってる店もあり、ちょっと得した気分にだってさせてくれる。
ただラーメンと炒飯の