古賀史健

ライター。バトンズ代表。最新刊『さみしい夜にはペンを持て』。その他『取材・執筆・推敲』…

古賀史健

ライター。バトンズ代表。最新刊『さみしい夜にはペンを持て』。その他『取材・執筆・推敲』『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』『古賀史健がまとめた糸井重里のこと。』『20歳の自分に受けさせたい文章講義』など。週日更新しています。http://www.batons.jp

ウィジェット

  • 商品画像

    さみしい夜にはペンを持て

    古賀 史健
  • 商品画像

    取材・執筆・推敲 書く人の教科書

    古賀 史健
  • 商品画像

    嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

    岸見 一郎,古賀 史健
  • 商品画像

    20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)

    古賀 史健

マガジン

  • 古賀史健

    古賀史健の note、2018年以降のぜんぶです。それ以前のものは、まとめ損ねました。

  • #編集 #ライター 記事まとめ

    • 1,601本

    編集、ライター、コンテンツ、メディアなどに関する記事をまとめていきます。

記事一覧

固定された記事

『さみしい夜にはペンを持て』刊行のおしらせ。

7月18日(火)、あたらしい本が世に出ます。 タイトルは『さみしい夜にはペンを持て』。ぼくにとってはじめての、中学生に向けた本です。どんな本なのか、どういう意味の…

古賀史健
10か月前
1,015

半日間のコールド・トリップ。

きのうの東京は、すこし寒かった。 とくに夕方くらいから、肌寒さは本格のものになった。けれど、ここ数日が暑かったこともあり、なんとなくTシャツ姿のまま「寒いなあ」…

古賀史健
4日前
153

雨降りの電車で考えた大根の話。

雨が降っている。朝からずっと、雨が降っている。 雨降りの地下鉄に乗りこむと、モワっと瞬間、独特の匂いに包まれる。平熱のサウナみたいに高い湿度。やたら生々しく吐き…

古賀史健
5日前
135

子どもたちへのみくびりを払拭して。

思うところあって最近、むかしのディズニー映画を観ている。 むかしのディズニー映画と言っても『アラジン』とか『美女と野獣』とかのレベルではなく、たとえば戦前(1937…

古賀史健
6日前
240

部屋の描写がもったいない。

映画やテレビドラマを見ていると、部屋の描写が気になってしまう。 たとえば「ひとり暮らしの若者の部屋」。ずぼらさや不潔さを強調したキャラクターでないかぎり、作中の…

古賀史健
10日前
152

会議とわたしと打ち合わせ。

これが職人気質、というものなのだろうか。 会議が苦手である。会議の場になると緊張するとか、なにも発言できないまま終わってしまうとかではなく、むずむずしてくるのだ…

古賀史健
11日前
176

あのとき学んだ生きるための知恵。

話の流れで、小学生のころの記憶をさかのぼっていた。 転勤族の子どもとして生まれ、ぜんぶで4つの小学校を渡り歩いてきたおかげでぼくは、「2年生のころにはあの学校に…

古賀史健
12日前
190

書類の数だけぼくたちは。

書類の多い人生だ。 毎日のように、役所や取引先、不動産会社などから封書が届く。カッターナイフでそろそろと開封する。中身を確認して、指定口座にお金を振り込んだり、…

古賀史健
13日前
152

「がんばる」の前に意識すること。

昨夜、サッカーの試合を観ながら考えた。 観たのはイングランドプレミアリーグ、フラム vs. リヴァプールだ。そして今季のリヴァプールを観るということは当然、遠藤航選…

古賀史健
2週間前
268

キッチンを変える、という考え方。

休みをいただき、近県の宿にきている。 宿と言ってもロビーやフロントがあったり、朝食や夕食のついている宿ではなくて、ドッグランの併設された一軒家、すなわち貸別荘で…

古賀史健
2週間前
168

熱いと冷たい、そしてぬるい。

熱い涙、という言いまわしがある。 たとえば「あふれる熱い涙」とか、「熱い涙が止まらない」とか、「おまえの熱い涙を」みたいな呼びかけだとか。このへんのフレーズ、み…

古賀史健
2週間前
132

書き手にとってのおしゃべりとは。

おしゃべりのありがたさを考える。 ぼくはライターであり、書くことを職業とする人間だ。実際にいまもこうして、お金にもならない文章をつらつらと書いている。書くことを…

古賀史健
2週間前
220

正解がない時代って言うけれど。

まったく知らないことばかりだなあ、と思う。 本を読むとき、新聞を読むとき、報道番組を見るとき、いつも「知らないこと」の多さにあきれかえる。たとえば「税制がこんな…

古賀史健
2週間前
240

「最近の若いもんは」と「わしらの若いころは」。

いつの時代にも「最近の若いもんは」と語る人はいる。 現在も、20年前も、そして100年前や1000年前にも「最近の若いもん」は、似たような理由で責められている。常識を知…

古賀史健
3週間前
233

書いているとしか言えない自分。

いま、本を書いている。 それが仕事だ。なにも特別なことじゃない。料理人がオムレツをつくるように、漁師がイワシを獲るように、そしてキース・リチャーズがギターを弾く…

古賀史健
3週間前
198

鬼よりも悪魔よりも恐ろしいもの。

日常のなかで「悪魔」ということばは、なかなか使わない。 悪魔を使わないぶん日本人は、「鬼」を使う。むかし話にも多数登場する鬼は、なんとなく日本版の悪魔と言えなく…

古賀史健
3週間前
281
『さみしい夜にはペンを持て』刊行のおしらせ。

『さみしい夜にはペンを持て』刊行のおしらせ。

7月18日(火)、あたらしい本が世に出ます。

タイトルは『さみしい夜にはペンを持て』。ぼくにとってはじめての、中学生に向けた本です。どんな本なのか、どういう意味のタイトルなのか、なぜ中学生に向けてつくったのか。お話ししたいことはたくさんあります。少し長くなるかもしれませんが、お付き合いください。

どんな本なのか本が好きな人ならだれでも、本によって救われた経験があると思います。

ひどく落ち込ん

もっとみる
半日間のコールド・トリップ。

半日間のコールド・トリップ。

きのうの東京は、すこし寒かった。

とくに夕方くらいから、肌寒さは本格のものになった。けれど、ここ数日が暑かったこともあり、なんとなくTシャツ姿のまま「寒いなあ」と思いながら仕事を続けた。いまにして思えば、この時点でなにか着ればよかった。

帰りの電車で、ちょっと頭が痛かった。駅の階段をのぼるとき、膝が震えていた。うん、これは本格的に寒いぞ。そのままスーパーに行って、鍋の材料を買った。最近気に入っ

もっとみる
雨降りの電車で考えた大根の話。

雨降りの電車で考えた大根の話。

雨が降っている。朝からずっと、雨が降っている。

雨降りの地下鉄に乗りこむと、モワっと瞬間、独特の匂いに包まれる。平熱のサウナみたいに高い湿度。やたら生々しく吐き出される老若男女の呼気。人の数だけ持ち込まれたびしょびしょの傘。ぬるい人肌で温められる衣服の微妙な生臭さ。地下鉄だというのにぼんやり薄暗い車内に充満する、人びとの不快感。

次の駅に到着すると、一瞬だけさわやかな風が入る。密閉された車内に

もっとみる
子どもたちへのみくびりを払拭して。

子どもたちへのみくびりを払拭して。

思うところあって最近、むかしのディズニー映画を観ている。

むかしのディズニー映画と言っても『アラジン』とか『美女と野獣』とかのレベルではなく、たとえば戦前(1937年)の『白雪姫』までさかのぼって、観ている。なるほど、むかしのディズニー映画ってのはジブリ映画みたいに「テレビでたまたま観る」がないものなので、みずから積極的に観に行かないと永遠に触れないまま終わりかねないのだ。はじめての『白雪姫』の

もっとみる
部屋の描写がもったいない。

部屋の描写がもったいない。

映画やテレビドラマを見ていると、部屋の描写が気になってしまう。

たとえば「ひとり暮らしの若者の部屋」。ずぼらさや不潔さを強調したキャラクターでないかぎり、作中の若者はそこそこ片づいた部屋に住んでいる。それなりの生活感は演出しつつも、アイドル的な俳優さんを小汚い部屋に住ませることはあまりない。

そして実際、現実世界においてもピカピカの部屋に住む若者はいる。というか、たとえばヤマダくんの家で鍋パー

もっとみる
会議とわたしと打ち合わせ。

会議とわたしと打ち合わせ。

これが職人気質、というものなのだろうか。

会議が苦手である。会議の場になると緊張するとか、なにも発言できないまま終わってしまうとかではなく、むずむずしてくるのだ、会議が続くと。もちろん会議が大切であることはよく知っているし、朝から晩まで会議の連続でヘトヘトになっている人のことも知っている。大変だなあ、と思うし、心からのお疲れさまを贈りたい。

しかしながら自分のことにかぎって言うと、たとえば2時

もっとみる
あのとき学んだ生きるための知恵。

あのとき学んだ生きるための知恵。

話の流れで、小学生のころの記憶をさかのぼっていた。

転勤族の子どもとして生まれ、ぜんぶで4つの小学校を渡り歩いてきたおかげでぼくは、「2年生のころにはあの学校にいた」「3年生になってこの学校に移った」みたいな学年ごとの記憶が、かなり鮮明に残っている。それぞれの校舎も、校歌も、クラスメイトも。そして「4年生のとき、あの先生の授業でこんなことがあった」とかの記憶も。

ところがどうやって思い出そうと

もっとみる
書類の数だけぼくたちは。

書類の数だけぼくたちは。

書類の多い人生だ。

毎日のように、役所や取引先、不動産会社などから封書が届く。カッターナイフでそろそろと開封する。中身を確認して、指定口座にお金を振り込んだり、判を押して返送したりする。もちろんそれぞれの書類は保管しておかねばならない。紙の書類は、たまる一方だ。

一方、届く書類のほとんどすべては封筒に入っている。口座番号だの請求金額だの場合によってはパスワードだの、秘匿情報満載の書類だ。まさか

もっとみる
「がんばる」の前に意識すること。

「がんばる」の前に意識すること。

昨夜、サッカーの試合を観ながら考えた。

観たのはイングランドプレミアリーグ、フラム vs. リヴァプールだ。そして今季のリヴァプールを観るということは当然、遠藤航選手を中心に観ることになる。もうずっと、ほとんど毎試合観ているけれどほんとうに遠藤選手はよくやっている。

彼にかぎらず、だけれども、活躍している選手を観るときのぼくらは「がんばってるなあ」ということばを漏らす。最近のヨーロッパでいえば

もっとみる
キッチンを変える、という考え方。

キッチンを変える、という考え方。

休みをいただき、近県の宿にきている。

宿と言ってもロビーやフロントがあったり、朝食や夕食のついている宿ではなくて、ドッグランの併設された一軒家、すなわち貸別荘である。貸別荘ということは、朝昼晩のごはんを自分でこしらえなければならない。そうすると出立にあたってあらかじめ肉や野菜を買い込んで、保冷剤とともにそれをクーラーボックスに詰め込んで、万全の準備を整えたうえで車を走らせることになる。

そして

もっとみる
熱いと冷たい、そしてぬるい。

熱いと冷たい、そしてぬるい。

熱い涙、という言いまわしがある。

たとえば「あふれる熱い涙」とか、「熱い涙が止まらない」とか、「おまえの熱い涙を」みたいな呼びかけだとか。このへんのフレーズ、みんなどこかで耳にしたおぼえがあるんじゃないかと思う。

この「耳にしたおぼえがある」という表現は意図的なもので、小説やエッセイのなかで「熱い涙」に遭遇することは稀である。散文ではなく、もっぱらポピュラーソングの歌詞として流れ落ちるのが「熱

もっとみる
書き手にとってのおしゃべりとは。

書き手にとってのおしゃべりとは。

おしゃべりのありがたさを考える。

ぼくはライターであり、書くことを職業とする人間だ。実際にいまもこうして、お金にもならない文章をつらつらと書いている。書くことを苦にしないし、むしろ好きだったりする。

そしてどうして書くことが好きなのかと問われた際には、「話すのが苦手だから」と答えたりする。対面するとうまく話せない。緊張のあまり思ったことがことばにできない。家に帰ってから「ああ言えばよかった」「

もっとみる
正解がない時代って言うけれど。

正解がない時代って言うけれど。

まったく知らないことばかりだなあ、と思う。

本を読むとき、新聞を読むとき、報道番組を見るとき、いつも「知らないこと」の多さにあきれかえる。たとえば「税制がこんなふうに変わる」みたいなニュースがあったとして、しかもそれについて「もう知ってるよ」と思っていたとして、解説記事を読めばちゃんとしっかり「ぼんやりとしか知らなかったこと」が書いてある。つまり、知らなかったわけだ。

そして途方に暮れてしまう

もっとみる
「最近の若いもんは」と「わしらの若いころは」。

「最近の若いもんは」と「わしらの若いころは」。

いつの時代にも「最近の若いもんは」と語る人はいる。

現在も、20年前も、そして100年前や1000年前にも「最近の若いもん」は、似たような理由で責められている。常識を知らないとか、礼儀がなっていないとか、やる気がないとか、なにを考えているかわからないとか、そういう責められ方を、ずっとしている。

同様に、いつの時代もセットのように語られてきたであろう話が、「わしらが若いころは」である。

「わし

もっとみる
書いているとしか言えない自分。

書いているとしか言えない自分。

いま、本を書いている。

それが仕事だ。なにも特別なことじゃない。料理人がオムレツをつくるように、漁師がイワシを獲るように、そしてキース・リチャーズがギターを弾くように、ぼくも本を書いている。お互い、そういう仕事に就いているだけの話だ。

しかしぼくの場合、365日の毎日、ずっと本を書いているわけではない。

構想を練るとか、編集者さんと話し合うとか、集めた資料を読み込むとか、取材をするとか、それ

もっとみる
鬼よりも悪魔よりも恐ろしいもの。

鬼よりも悪魔よりも恐ろしいもの。

日常のなかで「悪魔」ということばは、なかなか使わない。

悪魔を使わないぶん日本人は、「鬼」を使う。むかし話にも多数登場する鬼は、なんとなく日本版の悪魔と言えなくもない。しかし、どうなんだろう。西洋の言語に暗いぼくはよく知らないのだけれど、たとえば「練習の鬼」とか「鬼教官」みたいな用法は、西洋の悪魔にもあるのだろうか。「あいつは練習の悪魔だぜ」「ジーザス、なんて悪魔教官なんだ」なんてことを、あちら

もっとみる