高見温| On Takami

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旅日記だったり、つらつらと長文を書くこともあったりします。気ままに読んでくださいませ。 サポート代はお紅茶代に充てさせていただきます。連絡や依頼はontakami92@gmail.comまで

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基本的には展覧会評や書評及びエッセイを書きます。海外の美術館情報や小ネタも投稿します。美術好きなら面白いと思うのでぜひ。記事は3日に一本くらいを予定しております。

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    教科書や本に出てこない、学術書の隅っこに載っているような美術の小ネタやゴシップを紹介します。細部に神は宿る…はず。美術が好きだったり、変わった世界の話に興味があれば面白いと思います。

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普遍性について

徒然と書いていたら長文になってしまいました。 論旨 もし仮に日本における西洋文化史・思想史研究を維持したいなら、なぜそれらの知や芸術が現代日本にも有効であり有意義であるかを、誰もが納得できる論理で宣伝しなければならない。 しかし多様性の尊重や植民地主義批判などの新たな学説によって西洋由来の「普遍性」という強固な支えは自分たちで解体してしまって使えない、となると一体どうすればいいのか、八方塞がりである。 まえおき 「世界で」とはお世辞にも言えないが、少なくとも先進国と自認

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    • ぽえじえ(Poesie)

      ローマ行きの飛行機、スマホで聖書を読むフィレンツェ人の男性が隣に座っておりました。彼は頻繁にメモ帳のポエジエ(Poesie)と書いてある白紙のページと行ったり来たり。信仰もカジュアルになったものだと驚きながらも、おそらくは聖書のインスピレーションで詩を作ろうとしていたのでしょうか。その眼は言葉を吟味するとき特有の混沌を湛えていました。

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      • キュビスム展(西美・京セラ)感想

        筆者は東京で昨年観ていますが、この夏まで京都京セラ美術館でも展示が続いているので、回想録として書きます。ポンピドゥセンターからの作品を中心に、キュビスムの多様な展開を追うものです。 概要キュビスムの前史としてセザンヌの作品とアフリカの偶像が展示されています。「プリミティヴィスム」についてのキャプションが、今日的にアップデートされたおり、作品の単なる霊感源ではなく、植民地主義的な問題を孕んだ造形であることを正確に提示しています。 ブラックやピカソがずらりと並ぶのは、ポンピド

        • 貴族とブルジョワ

          1947年に階級制度がなくなって以降、日本では貴族とブルジョワは概念的に同一視されがちですが、欧州ではそのあたり微妙に分かれています。1950年代となると如実にそのふたつは文化や風習・価値観まで異なっていました。 美術の話をすると、競売会社のサザビーズは新興ブルジョワ層、クリスティーズは貴族階級というのが暗黙の了解で、当時はもっぱらクリスティーズが大きな仕事をして、サザビーズはこじんまりとした家族経営に近い会社でした。違いについてはこちらにも少々書いています↓

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          普遍性について

          「patron」他に参加すると最後まで読めます

          徒然と書いていたら長文になってしまいました。 論旨 もし仮に日本における西洋文化史・思想史研究を維持したいなら、なぜそれらの知や芸術が現代日本にも有効であり有意義であるかを、誰もが納得できる論理で宣伝しなければならない。 しかし多様性の尊重や植民地主義批判などの新たな学説によって西洋由来の「普遍性」という強固な支えは自分たちで解体してしまって使えない、となると一体どうすればいいのか、八方塞がりである。 まえおき 「世界で」とはお世辞にも言えないが、少なくとも先進国と自認

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          ぽえじえ(Poesie)

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          ローマ行きの飛行機、スマホで聖書を読むフィレンツェ人の男性が隣に座っておりました。彼は頻繁にメモ帳のポエジエ(Poesie)と書いてある白紙のページと行ったり来たり。信仰もカジュアルになったものだと驚きながらも、おそらくは聖書のインスピレーションで詩を作ろうとしていたのでしょうか。その眼は言葉を吟味するとき特有の混沌を湛えていました。

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          ぽえじえ(Poesie)

          貴族とブルジョワ

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          1947年に階級制度がなくなって以降、日本では貴族とブルジョワは概念的に同一視されがちですが、欧州ではそのあたり微妙に分かれています。1950年代となると如実にそのふたつは文化や風習・価値観まで異なっていました。 美術の話をすると、競売会社のサザビーズは新興ブルジョワ層、クリスティーズは貴族階級というのが暗黙の了解で、当時はもっぱらクリスティーズが大きな仕事をして、サザビーズはこじんまりとした家族経営に近い会社でした。違いについてはこちらにも少々書いています↓

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          ゲルニカ

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          ピカソの線というのは躊躇いがなく、勝者の傲慢といったものを感じるとジョン・バージャーが書いていましたが、それは主題のジャンル問わず発揮されています。 多くのキュビスム絵画や、その他20世紀前半の絵画を見てきましたが、輪郭線の勢いやソリッドな硬さに、滾る血といったものが伝わってきます。それだけパワーがあるということですが、《ゲルニカ》のような鎮魂や戦争の告発といった悲しいテーマにおいても、勝ち誇るピカソの線はアンビバレントに光るものがあります。

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          印象派2日間

          「スタンダード」他に参加すると最後まで読めます

          『パタゴニア』という旅行記なのか随筆なのか、それともフィクションなのか判然としない本がある。大体の人は困惑するが一部の放浪癖のある人間から絶大な支持を受けている、英国の作家ブルース・チャトウィンの代表作だ。 私は彼にシンパシーを感じ、全作品及び評論まで読み込んだ。英国人の伝手を辿り、チャトウィンと交友のあった人も訪ねて、その印象を聞いたくらいだ。 チャトウィンは作家になる前、オークションハウスのサザビーズで印象派のセールを担当していた。ほら吹きで鷹揚、突飛でチャーミングな語

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          印象派2日間

          花咲く等持院の影に

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          龍安寺の石庭が苦手だ。もっと直接的に言うなら良さが分からない。 どうも枯山水が好きになれない私は、石に仏の世界を観る想像力に欠けるのだと思う。そもそも精神に宗教的次元が備わっていないのかもしれない。 茶人を気取っておきながらわび茶も実のところよく分からない。地味で殺風景だから嫌いというわけではなく、感性や本能といったどうしようもないところから苦手なのだろう。知識を専門家並に積んだところで、それが解消されることはなかった。 龍安寺の石庭が何の感興も引き起こさなかった時、自分

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        記事

          空海展感想(奈良国立博物館)

          空海生誕1250年記念ということで空海展。おそらくこの規模では2003の入唐1200年記念の「空海と高野山」展以来のものになると思います。仏像に焦点を当てた展覧会としては2019年の東博が最新ではありますが、空海展となると20年ぶりです。 高野山の名宝名物盛りだくさんだった祝祭的な2003年版に比べれば、「密教とは」「空海のしてきたこととは」と宗教色が強めの展示になっています。美術館だけでなく高野山大学が監修に入っているからでしょうか。 概要第一室がとにかく壮麗で、曼荼羅

          空海展感想(奈良国立博物館)

          ゲルニカ

          ピカソの線というのは躊躇いがなく、勝者の傲慢といったものを感じるとジョン・バージャーが書いていましたが、それは主題のジャンル問わず発揮されています。 多くのキュビスム絵画や、その他20世紀前半の絵画を見てきましたが、輪郭線の勢いやソリッドな硬さに、滾る血といったものが伝わってきます。それだけパワーがあるということですが、《ゲルニカ》のような鎮魂や戦争の告発といった悲しいテーマにおいても、勝ち誇るピカソの線はアンビバレントに光るものがあります。

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          『パタゴニア』という旅行記なのか随筆なのか、それともフィクションなのか判然としない本がある。大体の人は困惑するが一部の放浪癖のある人間から絶大な支持を受けている、英国の作家ブルース・チャトウィンの代表作だ。 私は彼にシンパシーを感じ、全作品及び評論まで読み込んだ。英国人の伝手を辿り、チャトウィンと交友のあった人も訪ねて、その印象を聞いたくらいだ。 チャトウィンは作家になる前、オークションハウスのサザビーズで印象派のセールを担当していた。ほら吹きで鷹揚、突飛でチャーミングな語

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          雪舟伝説(※雪舟展ではない)感想 京都国立博物館

          今年の上半期を代表する日本美術の展覧会です。企画が発表された時点で話題沸騰でしたから、長蛇の列を心配していたのですが、平日は空いています。 本展は雪舟の芸術を観るということから少し進んで、彼の作品や作風がどのように後進に継承されて「画聖」と呼ばれたかを辿るものです。 概要気分が高まるような有名作品からスタートします。教科書でお馴染みの《秋冬山水図》《山水長巻》に《天橋立図》《慧可断臂》などなど、雪舟の真作がずらりと並ぶ圧巻の内容でした。 石橋財団の《四季山水図》はありま

          雪舟伝説(※雪舟展ではない)感想 京都国立博物館

          花咲く等持院の影に

          龍安寺の石庭が苦手だ。もっと直接的に言うなら良さが分からない。 どうも枯山水が好きになれない私は、石に仏の世界を観る想像力に欠けるのだと思う。そもそも精神に宗教的次元が備わっていないのかもしれない。 茶人を気取っておきながらわび茶も実のところよく分からない。地味で殺風景だから嫌いというわけではなく、感性や本能といったどうしようもないところから苦手なのだろう。知識を専門家並に積んだところで、それが解消されることはなかった。 龍安寺の石庭が何の感興も引き起こさなかった時、自分

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          ホテルのカクテル🍸

          日系ホテルのバーよりは外資系、特にイタリアか香港資本のバーのだすアルコールの方が優れていると思ってしまう今日この頃です。ただそれらも日本酒でカクテルをとなると途端に冴えが消えるのが難点です。 日系の場合、ホテルより個人店のバーの方が水準が高いと思うのは気のせいでしょうか。

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          最古のアート・ギャラリー

          ロンドンのセント・ジェームズ街を歩いていると、洗練された紳士服の店などが立ち並び面白いのですが、その街に世界最古のアート・ギャラリーと称されるコルナギという店があります。 毎年マーストリヒトで行われるTEFAFと呼ばれる古典絵画のアートフェアにて、このコルナギは毎度独特の出品をして、美術関係者を沸かせています。昨年はスペイン・バロックの巨匠ムリーリョの作品を目玉にしていましたし、今年はドメニコ・ティントレットやゴヤを売っていました。 億出せば、ということではありますが、古

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          読書記録(2024年4月分)

          読書記録を公開して一年経ちました。読みたい本が無くなりつつあるとはいえ、読んでいると自然と気になる本が新たに出てきますから、やはり書物は海のようだなと思います。 文芸書①アイザック・B・シンガー『モスカット一族』 詳しい感想はnoteで記事化していますが、久しぶりに数十人の登場人物が数十年を生きる大河小説を読んだなということで特別な印象を持ちました。ポーランド・ワルシャワのユダヤ人社会を克明に描写した作品で、20世紀半ばの小説としては何よりも読みやすいです。 世代間のす

          読書記録(2024年4月分)

          ル・クレジオ『ブルターニュの歌』

          存命のフランス人作家では世界的に最も高名な作家のひとり、ル・クレジオ。1963年の『調書』で華々しいデビューを飾り、硬質な詩的散文で一世を風靡しましたが、やがて父祖の地モーリシャスやアフリカ、世界各地を舞台にした文化人類学の視点を持つ作風に移ります。2008年ノーベル文学賞受賞。 世界各地を放浪するように書き続けてきた彼も80代に。2020年、ついに自分の幼少期をテーマにした作品が出たということで邦訳を読んでみました。結局歳をとると幼少期の事を回想したくなるのでしょうか。

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          ベリサリウス/Βελισάριος

          人類史上最高の軍事的天才とは誰か。アレクサンダー大王?ナポレオン?など不毛ながら暇潰し的には楽しい問いというものがあります。 私個人の考えでは東ローマ帝国の将軍ベリサリウス(500〜565)だと思います。 このベリサリウスという将軍はユスティニアヌス大帝の下で獅子奮迅し、各地の反乱を滅ぼして、イタリアやイベリア半島まで征服する恐ろしいまでの戦績の良さによって、歴史家から高く評価されています。 そのため大帝はこの将軍を恐れ、ずっと冷遇します。凱旋式の後に解任したり色々やっ

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          ベリサリウス/Βελισάριος

          お知らせ

          いつも投稿を読んでくださり、また活動を支援していただきましてありがとうございます 藝大の大学院を修了したことで時間ができて、記事の更新の頻度を上げられることになり、今後さらに多くの文章が書けるだろうということになりました。非公認とはいえ、組織の看板を背負っていたことから穏健なことしか書けませんでしたが、そのくびきからも解放されたので色々書けると思います これからは無料公開記事は本の紹介と展覧会の感想(展覧会の写真などは営利目的には使用不可なので)に絞り、noteはほぼ限定

          『プロテスタントと美術館展示の倫理』

          マックス・ヴェーバーの『プロテスタントと資本主義の倫理』という社会学の名著があります。プロテスタントの禁欲的な思想こそが資本主義の根本を成立したという逆説性と、論理的な展開によって多くの反響を呼びました。 今日ではプロテスタントの思想が資本主義と繋がるのも部分的で、もっと早期に確立されていたのでは、などとヴェーバーの考えそのままが主流ではなくなっていますが、古典の古典たる故は内容より様式や課題への態度なので、おそらく今後も読み継がれていくでしょう。

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          『プロテスタントと美術館展示の倫理』