真夜中野マヤ

まよなかの まや|読み切り小説、時々エッセイ📚

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    エッセイ つれづれなるままに心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書き綴っております

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記事一覧

エッセイ「ララバイ札幌」

実は今月、札幌を離れた。転勤である。 今は東京の、とある町の、とあるアパートに居る。 産まれは釧路、物心ついたのは北見。たまねぎとハッカの町。今は塩焼きそばと焼…

19

小説「カムサハムニダ」

ヨリコが結婚するという。 相手は同期の翼くんで、来月末には退職して名古屋へ行くそうだ。 どこぞのお嬢様らしい、という理由で同期の中でも少し浮いた存在だったヨリコ…

真夜中野マヤ
3週間前
27

小説「沖田くるみと11人のスター」

沖田宗四郎は十二人居た— 昭和の名優・沖田宗四郎(享年八十二)の孫で女優の沖田くるみが、衝撃の事実を発表。自身初主演となる映画『女神の結婚』の舞台挨拶にて、祖父…

真夜中野マヤ
1か月前
40

エッセイ「ご馳走」

仕事がひと段落したこともあり、お疲れ様の意をこめて後輩を食事に誘った。飲み会はコロナ前ほどではないが普通にあるし、そういう時少し多めに会費を徴収されるほどには歳…

真夜中野マヤ
2か月前
56

小説「夢見るくせっ毛ちゃん」

太郎の髪は細く飴色で、しかしその繊細な見た目からは想像も出来ないほど強いコシを持つ。くるりくるりと頭部から四方八方へと跳ね、その毛を伸ばす。赤子故にそれは太郎を…

真夜中野マヤ
2か月前
107

エッセイ「ただいまピンターダ」

12月と1月は、怒涛の飲み会ラッシュだった。 コロナが5類になってから初めての年末だからか、新しい商業ビルがオープンしたからか、すすきのには観光客も含めて大量に人…

真夜中野マヤ
3か月前
23

小説「女神の結婚」

「ねぇ、その髪さ、和式でウンコする時どうしてんの」 サチの髪は長い。いや長いどころの話ではなく、おしりをすっぽりと隠すほど、それはそれはとんでもない長さである。…

真夜中野マヤ
3か月前
30

ご報告「北海道新聞にて取り上げていただきました」

真夜中野マヤ
3か月前
17

エッセイ「ゴミ屋敷ではないかもしれない家について」

通勤の道すがら、ゴミ屋敷がある。ぱっと見で分かるゴミ屋敷ではない。ごくごく普通のアパートの最上階。 網戸は破け、窓にかかるカーテンが内側から何かいろいろなモノに…

真夜中野マヤ
4か月前
11

小説「耳を喰む」

「耳を食べてほしい」と、すみれさんは言った。 退屈な飲み会をこっそり抜け出した夜。地下街へとくだる入口で、すみれさんを見かけた。先ほどの飲み会に確かにいたはずな…

真夜中野マヤ
4か月前
66

小説「それ」

我が家には僕が物心ついた時から「それ」が在った。 母の「それ」は、トランプのジョーカーのように僕の前にぶら下がり、僕はいつも「それ」を理由に色々なことを諦める必…

真夜中野マヤ
4か月前
14

エッセイ「チェス」

少し前、断捨離したチェスボードを実家に置いて来た。親は嫌がったけれど「孫とやんなよ、しかもインテリアとしても申し分ないよ」と、無理矢理押し付けた。悪い娘である。…

真夜中野マヤ
5か月前
11

ご報告「さっぽろ市民文芸の集いに参加してきました」

大変有り難いことに、初めて応募した「さっぽろ市民文芸40号」小説部門にて「さよならピンターダ」という作品が優秀をいただきました。 去る12月2日、札幌カナモトホール…

真夜中野マヤ
5か月前
6

ご報告「公募ガイド」選外佳作に入選しました

毎月応募している公募ガイドの「高橋源一郎の小説でもどうぞ」に、まぁ通らない通らない。ということを、以下で話しましたが。 応募しはじめて数年。このたび、初めて! …

真夜中野マヤ
5か月前
18

ショートショート「空の布のハスカップ」

社長が「食べ飽きた」と言うので、有り難くいただいた金曜日のご褒美デザート、空の布のハスカップ。 なんたって空の布に包まれている。普通のハスカップは野ざらしで、固…

真夜中野マヤ
6か月前
2

ご報告「田丸雅智先生の"誰でも物語が書けるショートショートの書き方講座"に行ってきました」

実はわたし、公募ガイドの「高橋源一郎の小説指南 小説でもどうぞ」に毎月応募している。 毎度毎度ハナにも引っかからず、もう落選慣れしつつあるのだけれど「鈴木さんの…

真夜中野マヤ
6か月前
12
エッセイ「ララバイ札幌」

エッセイ「ララバイ札幌」

実は今月、札幌を離れた。転勤である。
今は東京の、とある町の、とあるアパートに居る。

産まれは釧路、物心ついたのは北見。たまねぎとハッカの町。今は塩焼きそばと焼肉の町らしい。北海道以外の地で暮らすのは、今回が初めて。

北見の後はずっと札幌。小、中、高と札幌で過ごし、江別の大学へはバスと地下鉄を乗り継いで通った。就職も札幌で少し働いて結婚し、夫の職場に近い町の部署へ異動させてもらった。戦闘機の音

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小説「カムサハムニダ」

小説「カムサハムニダ」

ヨリコが結婚するという。
相手は同期の翼くんで、来月末には退職して名古屋へ行くそうだ。

どこぞのお嬢様らしい、という理由で同期の中でも少し浮いた存在だったヨリコが、大親友に昇格したのは社員旅行で行った韓国だった。タクシーでぼったくられそうになった時、あろうことかヨリコは運転手に食ってかかった。最終的に面倒くさいヨリコに根負けした運転手へ正規の料金を払ってタクシーを降りた途端、
「あ~ん、怖かった

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小説「沖田くるみと11人のスター」

小説「沖田くるみと11人のスター」

沖田宗四郎は十二人居た—

昭和の名優・沖田宗四郎(享年八十二)の孫で女優の沖田くるみが、衝撃の事実を発表。自身初主演となる映画『女神の結婚』の舞台挨拶にて、祖父・沖田宗四郎は実は十二人兄弟であり、役ごとに協力し演じ分けていたとのこと。所属事務所によると—

専属メイクの真由ちゃんが仕上げた化粧を、鏡の前で入念にチェックする。

「うん、大丈夫。今日もありがとう真由ちゃん」
「くるみさん頑張って。

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エッセイ「ご馳走」

エッセイ「ご馳走」

仕事がひと段落したこともあり、お疲れ様の意をこめて後輩を食事に誘った。飲み会はコロナ前ほどではないが普通にあるし、そういう時少し多めに会費を徴収されるほどには歳を食った。とは言え、自分から誘うことはほぼない。

今回のように、仕事がひと段落した時や送別か何かのタイミングで「じゃあ」と誘う。職場の人との距離感は、とても大事。

誘う時、死守していることがある。

自分でも面倒くさい奴だなぁと思う。私

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小説「夢見るくせっ毛ちゃん」

小説「夢見るくせっ毛ちゃん」

太郎の髪は細く飴色で、しかしその繊細な見た目からは想像も出来ないほど強いコシを持つ。くるりくるりと頭部から四方八方へと跳ね、その毛を伸ばす。赤子故にそれは太郎をたいへん可愛らしく見せ、大人はしきりにその薄毛頭を撫でたがった。

そんな幼少期だったため、髪は早くから自分が可愛いと認識していた。あちこち自由に飛び出し、全く太郎の言う事を聞かない髪へと成長してしまった。

髪はたいそう夢見がちでアニメな

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エッセイ「ただいまピンターダ」

エッセイ「ただいまピンターダ」

12月と1月は、怒涛の飲み会ラッシュだった。

コロナが5類になってから初めての年末だからか、新しい商業ビルがオープンしたからか、すすきのには観光客も含めて大量に人が戻ってきていた。

コロナ中のあの静かなシャッター街の寂しさを知っているから、喜ばしくはあるのだけれど、酒だけではなく人にも酔ってしまった。

肝臓にやさしくない日々に乗じて「ピンターダ」に行って来た。無論、以下の報告をするため。

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小説「女神の結婚」

小説「女神の結婚」

「ねぇ、その髪さ、和式でウンコする時どうしてんの」

サチの髪は長い。いや長いどころの話ではなく、おしりをすっぽりと隠すほど、それはそれはとんでもない長さである。サチには光輔という恋人がいて、ふたりは吹奏楽部。サチはピアノで、光輔はコントラバス。ふたりはどこへ行くのも一緒。

サチは寺の娘で、光輔の家は地元の名士。
サチの家の大檀家。

部活のない水曜日に、サチは音楽室でピアノを弾く。その隣で、サ

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エッセイ「ゴミ屋敷ではないかもしれない家について」

エッセイ「ゴミ屋敷ではないかもしれない家について」

通勤の道すがら、ゴミ屋敷がある。ぱっと見で分かるゴミ屋敷ではない。ごくごく普通のアパートの最上階。

網戸は破け、窓にかかるカーテンが内側から何かいろいろなモノに押しつぶされているのが見える。アパートの角部屋でもう一面にも窓があるのだけれど、同じく何か、袋のようなものがいくつか積まれ、黄色のカーテンがたわんでいる。

しかし考えてみれば、ゴミ屋敷ではない可能性もある。たまたまふたつある窓際に、袋状

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小説「耳を喰む」

小説「耳を喰む」

「耳を食べてほしい」と、すみれさんは言った。

退屈な飲み会をこっそり抜け出した夜。地下街へとくだる入口で、すみれさんを見かけた。先ほどの飲み会に確かにいたはずなのに、僕らはひとことも会話をしなかった。でもすみれさんが部長のグラスに笑顔でお酌をする姿は見ていたし、それをみんなで「すみれさん、ハズレ席引いたね」と遠まきに見ていた。

地下通路のくすんだ蛍光管に照らされたすみれさんの横顔はぼんやりと上

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小説「それ」

小説「それ」

我が家には僕が物心ついた時から「それ」が在った。

母の「それ」は、トランプのジョーカーのように僕の前にぶら下がり、僕はいつも「それ」を理由に色々なことを諦める必要があった。何かを讃える歌を歌うこと、色の付いたお菓子をたべること、具合が悪くて学校を休みたいという希望でさえも「それ」を理由に時に叶わなかった。成長するに従って、我が家の「それ」は一般的にはまるで普通ではなく、むしろ奇異なものであると知

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エッセイ「チェス」

エッセイ「チェス」

少し前、断捨離したチェスボードを実家に置いて来た。親は嫌がったけれど「孫とやんなよ、しかもインテリアとしても申し分ないよ」と、無理矢理押し付けた。悪い娘である。

それはいつぞやの恋人とともに、リサイクルショップで1,500円で購入したもので、駒もボードも全てガラス製だ。多少のヒビやカケはあるものの、当時行きつけのBARでふたりグラスを傾けながらチェスを嗜んだ夜々の思い出から、別れてからもなんとな

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ご報告「さっぽろ市民文芸の集いに参加してきました」

ご報告「さっぽろ市民文芸の集いに参加してきました」

大変有り難いことに、初めて応募した「さっぽろ市民文芸40号」小説部門にて「さよならピンターダ」という作品が優秀をいただきました。

去る12月2日、札幌カナモトホールにて「さっぽろ市民文芸の集い」があるということで、ドキドキしながら参加してきました〜!

繊細なチキンハート(え?)のため、友達と参加です。「誰でも参加していい」と謳っている割に、友達と参加してる方は、見渡す限りわたしだけ。さては、み

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ご報告「公募ガイド」選外佳作に入選しました

ご報告「公募ガイド」選外佳作に入選しました

毎月応募している公募ガイドの「高橋源一郎の小説でもどうぞ」に、まぁ通らない通らない。ということを、以下で話しましたが。

応募しはじめて数年。このたび、初めて!
選外佳作に入選しました!!わーい!!!

選外佳作ということでweb掲載のみですが、個人的には「よっしゃー!!通ったァ!!」という感じです、ハイ。どんなに瑣末な評価でも、過大に受け取る超絶欲しがり人間です、ハイ。

テーマは「冗談」。

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ショートショート「空の布のハスカップ」

ショートショート「空の布のハスカップ」

社長が「食べ飽きた」と言うので、有り難くいただいた金曜日のご褒美デザート、空の布のハスカップ。

なんたって空の布に包まれている。普通のハスカップは野ざらしで、固くてすっぱい。でも空の布に包まれたハスカップは、布の天気で味が全然違う、らしい。

晴れだったら香り高く。雨だったら、しっとりと。
夏だったら甘く熟れ、冬は冷たく凍る。
ここ数日の酷暑で、きっと甘く、それはそれは甘美に熟れているはずだ。

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ご報告「田丸雅智先生の"誰でも物語が書けるショートショートの書き方講座"に行ってきました」

ご報告「田丸雅智先生の"誰でも物語が書けるショートショートの書き方講座"に行ってきました」

実はわたし、公募ガイドの「高橋源一郎の小説指南 小説でもどうぞ」に毎月応募している。

毎度毎度ハナにも引っかからず、もう落選慣れしつつあるのだけれど「鈴木さんの働き方改革」や「走馬灯チャンネル」のように、結構上手く書けた!と思うものも、あっさりと落選する上、毎月選考に通った素晴らしい作品を読んでは、歯が立たないなぁと思う。

目指すは長編小説家なので、ショートショートはどちらかというと、校正力や

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