なかがわよしの

水が好き。ねこが好き。中の人はおじさん。本の匂いが好きです。あとは夏が好きでした。崩し…

なかがわよしの

水が好き。ねこが好き。中の人はおじさん。本の匂いが好きです。あとは夏が好きでした。崩した文法で日々を小説化。できるだけ毎日書きます。ますます文学に励みます。音楽を愛する、アイスすぎには注意が必要ですね。400字小説をライフワークにしつつ、長編小説を書いている。成功はしたくない。

マガジン

  • 400字小説

    400字程度で書かれた小説たち。ライフワークであーる。2024年1月1日午前7時オープン!

  • 随筆

    音楽とか映画とか読書とか。

  • 朗読(叫びがち)

    叫んでます、注意。

最近の記事

【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「No Surprises」レディオヘッド

「マキコちゃんがレディオヘッド好きだって言うから聴いてみたけれど、さっぱりわかんなくてさあ」 太一は洋楽を聴かない。 「別に無理して好きになろうとしなくていいんじゃね?」 要次は淡々と返す。人の恋愛には興味がないタイプ。コーヒーが苦くて顔もしかめない。続けて言う。 「恋なんてめんどいだけじゃんかよ。俺は静かに暮らせればそれでいい」 「マキコちゃん、かわいいと思わない?」 「そうだな、めんこいなあとは思うけど、それ以上でも以下でもない」 「誰かを好きになったことはないわ

    • 【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「People of the Sun」レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン

      「俺にとってのギターヒーローはジミヘンでもジョン・フルシアンテでもないんだよな。ましてやエリック・クラプトンなんて胸クソ悪いだけだ」 雨が降り始めたサブウェイの軒下で、店を出るなり殿宮は語り出した。「それよりも雨」と和史は思ったけれども、口には出さずに話に乗っかる。 「で、殿宮さんのギターヒーローって誰なんスか?」 「お前は?」 「え、僕ですか。ええと~、吉兼聡さんかな」 「誰それ?」 雨の中を女子高生が制服を濡らして駆けていく。アスファルトから雨の匂いが立ち上がる。そ

      • 【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「Free Satpal Ram」Asian Dub Foundation

        A「club snoozerってあったよね」 B「雑誌なくなっちゃったね、随分前に」 C「club snoozerはまだ続いてるんじゃね?」 A「ナニ情報?」 C「Twitter情報」 B「Xな」 C「いまだにTwitterって言っちゃうもんな」 A「ある種、抗いたいんですよ」 C「我々のTwitterを返せと」 朝5時のマクドナルドでだべってる。40歳にして音楽のオールナイト・イベントに参加して致命傷。脳が死んでる。 A「嫁、怒ってるんだろうなあ」 C「怒ってくれる人が

        • 【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「WEATHER REPORT」フィッシュマンズ

          有名ミュージシャンのバックバンドを務める高樹は天気予報を信じないでホテルからひとりで外出。この全国ツアー中、雨が降ったことがない。曇り空ながら快適な気温で足取りは軽かった。ただコンサートホールに向かうまで後ろをついてくる女が気になっていた、途中から。 本番での演奏はメリハリを利かせて控えめに淡々と、でもギターソロは派手に行う。コンサートの中盤、ふと外でつけてきた女を発見。顔を見た覚えがないのにわかったから、高樹は恐怖した、途中から。 コンサート後に打ち上げがあったが、参加

        【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「No Surprises」レディオヘッド

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        • 400字小説
          138本
        • 随筆
          30本
        • 朗読(叫びがち)
          100本

        記事

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「The Rockafeller Skank」Fatboy Slim

          馬車馬のように夜通しで踊ったあの夜のことを光一は明確には覚えていない。いつもなら酒を片手に女漁りをするのだったが、その夜だけは音楽に身を捧げた。ミラーボールがまわっていたのか覚えていない、でも踊りまくった記憶だけはある。女から肩を叩かれてナンパされても無視して踊っていたんだ。その理由を記すことほど野暮なことはない。光一は時計を見ることも忘れて、気持ちよく跳び跳ね、冗談半分でツイストし、両腕を突き上げたりした。あの夜に限っては女と寝ることより音楽が気持ちいい気がしてしまった。

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「The Rockafeller Skank」Fatboy Slim

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「透明少女」ナンバーガール

          首夏の或る日に少女は少年とまぐわったあと、その帰り道で死んだ。そんな自分を悲しくは思わなかった。少女には親がいなかったから。むしろ、幸せだったのかも知れない。 少年は突然の少女の死に動揺して夏の間、部屋に閉じ籠もる。青春を無駄にしてはいけないと誰も言わなかった、ただ存分に泣いた。ゲームでマシンガンを手に入れて繁華街に出てぶっ放した。でも、誰にも当たらずに弾は事切れた。神に祝福されている気持ちになり、少年は神父になると心に誓う。 20年後、少年は青年に。少女のことを反芻する

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「透明少女」ナンバーガール

          詩的に説明します!【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】について!

          これらの曲はわたしの血であり骨だ。青春だったかもしれない。でも、今も春っぽい青のなかを全力失踪している、孤独。上から影響を受けた順番。できるだけカッコつけて選んでいない。純粋に人生に影響を曲を選んだ。だから若い頃によく聴いたダサい選曲が多いけれど、誰だって青かったし、今だってそうかもしれないんだ。思春期から革命期、闇期や激躁期を越えて現在へ。音楽は鳴り止まないし、なんならわたしが鳴らして見せるさ。こんな細胞たちでなかがわよしのは出来ている。時代遅れも最先端も引っくるめて、音楽

          詩的に説明します!【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】について!

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「Wet Sand」Red Hot Chili Peppers

          肌寒い海辺で砂の城を作るふたり、恋人の関係。同性同士だから男性でも女性でも関係ない。ただひとりはオワリで、もうひとりはエイエン。ズブズブに海水に浸ったスニーカーが変色。太陽は真上にあり、人生を照らす。 「多様性って何かな」 「ぼくたち、わたしたちには、知らないことだよ」 ディレイして海面で蒸発する言葉。波打つ海は永遠に思える。 「今、この瞬間も若さを失っている」 「永遠なんてないんだ」 関係が終わることを知っているが、ふたりともそれを口にはしない。ケーキ屋でテイスティ

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「Wet Sand」Red Hot Chili Peppers

          カネコアヤノ『ラッキー/さびしくない』/音楽レヴュー

          デビュー当時からは想像できないほど、すくすく育ちましたね。屈辱や失敗や悔しさがあったことは想像できる。色気は間違いなく大人のそれ。『ラッキー』はこのままでも好きだし、ダブアレンジも聴きたいと思わせられた。『さびしくない』はそのフレーズを連呼するところにせつなさを感じた。多分、さびしいとさびしくないの狭間の叫び。新しいフェーズに入ることを予感させるバンド・サウンド。まだまだ遠くに連れて行ってくれよ。 (2024年発表) ★★★☆☆

          カネコアヤノ『ラッキー/さびしくない』/音楽レヴュー

          Knosis『THE ETERNAL DOOM』/音楽レヴュー

          「これが最前線のサウンドなのか?」そんなこと、知ったことではない、関係ない。金勘定も憂鬱も暮らしの果てにあるものも、すべてぶっ飛ばしてくれる!それで十分だ。これ以上の幸福があるのなら教えてほしい。あらゆる音楽ジャンルの要素を感じさせるが、誰にも似ていない。演奏力も別格で突き出ている、説得力◎。ノイズも轟音もデスボイスも美しく、超*透明。あまりにきれいで涙が心の傷に染みそう。泣いてもいいですか? (2023年発表) ★★★★☆

          Knosis『THE ETERNAL DOOM』/音楽レヴュー

          あぶらだこ『青盤』/音楽レヴュー

          聴いてはならない音楽を聴いてしまった感覚がする。新しいも古いもない唯一無二の音楽。ましてや勝ち負けなんてないんだ。自分の存在を信じて自分たちの音を鳴らしていることに感銘。だから変態(あるいは天才)と簡単に書くのは、失礼すぎるだろう。それゆえ真正面から向き合いたいのだが、そうすればするほど、気が変になりそうだ。これだけ脳みそと心と生命そのものを揺さぶる芸術はそうそうない。あなたに出逢えて良かった。 (1986年発表) ★★★★☆

          あぶらだこ『青盤』/音楽レヴュー

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「Trark1」Regurgitator

          飲み会の乾杯挨拶を急にフラれて戸惑った。でも、そこは演劇の経験を生かして、平静を装う観音。「カート・コバーンが亡くなってから30年の時が経ちました。わたしはまだ生まれていませんでした」と言い始めても、誰も顔をしかめるような人はいなかった。観音は続ける。 「でも、カート・コバーンが生まれる前からこの会社はあります。それはどういうことかわかりますか?」 そこで「んん?」と顔を歪ます人たちが出だす。個室に座っている約20名全員の目が曇り空に。すると観音の目には雨が。さすがに動揺

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「Trark1」Regurgitator

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「MO’FUNKY」ズボンズ

          「早く着いたよ」のLINEをタケルに打って、ドリンクバーを適当に4品持ってきて、ミモトは一気にガブガブする。甘いコーラはもちろんのこと、苦いブラックコーヒーでもお構いなしに飲みまくってハイに。 「急がないでいいよ」のLINEをしたのにも関わらず、タケルが早く来ないかなって楽しみに。コロナ禍前からずっと会っていないのだ。その分、タケルは年を取っただろうがミモトもそうだから、イーブンだと考えた。 ミモトはこの数年で5kgも太った。そのことを冗談紛れにツッコまれても仕方がなかっ

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「MO’FUNKY」ズボンズ

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「When Doves Cry」プリンス

          寺の境内で鳩がギャーテーギャーテーうるさい。守は地面を徘徊する鳩の群れに突っ込んでいって、彼らを曇り空へぶっ飛ばした。「ダメだよ、そんなことしちゃ、小学生かよ!」と里穂が頬を膨らませて、プンプン怒り出す。「男はいつまでも子どもなんだよ」と在り来たりのことを守は言い出す。六体の地蔵の前に敷き詰められた砂利の大きめな石を蹴り散らかす、落ち着かない。 「鳩って本当はどう鳴くか知ってる?」と変化球で里穂は守を落ち着かせようとする。術中にハマって守は大人しく頭を抱えだした。座禅する地

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「When Doves Cry」プリンス

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「祝日」カネコアヤノ

          試合の大事な局面でミスったことを引きずって、練習のコートに戻ってこない灰治を部員のみんなが心配。灰治はチームの大黒柱。 ある祝日の前夜に大会の《残念でした飲み会》をマネージャーが企画し、彼女は灰治を誘った。でもLINEの返事が全然返って来ず、飲み会の直前に灰治の下宿先に行く。 「ほっといてくれ」と灰治がドアー越しに。イラっとしたマネージャーは「いつまでひとりでバレーするつもりですか!」と大きな声で叫ぶ。でもドアーはビクともしない。「みんな灰治さんのことが好きなんです!」と

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「祝日」カネコアヤノ

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】 「No Success」Atari Teenage Riot

          酒野麹は自分らしさとは何かを追求している。ペンネームが表すようにユーモアのセンスがあるとは言えない真面目なタイプ。人には信頼されるが重宝はされない。助けた人はたくさんいるけれど、その割にSNSのフォロワー数が伸びない。誰にでも「いい人だよね」と一言で片付けられてしまうのは、よくある例。「自分らしさをください」と神様に祈っているようだから、まだまだ甘い。ただ在るだけでいいのに、自分らしさを求めるからダメなんだ。そもそも自分らしさを手に入れれば成功だなんて思っている節があるのが、

          【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】 「No Success」Atari Teenage Riot