雨奈川ひるる | 短編小説

こんにちは、2022年11月11日から小説家デビューし、毎日1200字程度の短編小説を…

雨奈川ひるる | 短編小説

こんにちは、2022年11月11日から小説家デビューし、毎日1200字程度の短編小説を投稿しています。ちょっとした時間に、さっと読める物語をお届けします。こんな恋愛したい、こんな日常を過ごしたいなど、心温まる小説を投稿しています。いつもの日常に、少しの非日常をお届けします。

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  • 短編小説「夢の中のウサギ」シリーズ

    夢の中で喋るウサギとの不思議な出会いの物語です。

  • 短編小説|タコとイカの大冒険

    タコのタンクとイカのインクが主役の驚きと感動溢れる冒険小説をご紹介します。海底世界の絢爛とした背景に描かれた彼らの挑戦と友情は、読む者を深海の魔法に引き込みます。絆を深めながら未知の領域を切り開いていく二人のストーリーは、あなたの心を確実に掴むでしょう。

  • 短編小説「BEAST NOON」シリーズ

  • 小説 「少年シリーズ」

    書いた小説の頑張る少年の話をまとめました。

  • 小説「この世界にごきげんよう」

    絶望と希望が渦巻く世界で生きる女性の物語

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短編小説 「建設現場のポニーテール」

その日は、梅雨が明けたのかと思うほど、お日様が憎たらしく輝いていた。雲ひとつない、空はとにかく青かった。いつもなら、そんなお日様や空を見れば嫌なことや悩みごとがスッと消えていくものだが、その日は違った。お日様と空が、この世からなくなればいいと思った。だけど、それを思ったのはその日が最後だった。 大学生の僕は建設現場の短期バイトをしていた。人手不足で、仕事はきつくて、口の悪いオッサンばかりで、汚かったけれど、金を稼ぐにはうってつけの場所だ。ただ重たい道具や資材を運ぶだけで、一

    • 短編小説 「その日、ナプキンを盗んだ」

      その日、私はナプキンを盗んだ。ドラッグストアの生理用品の棚から、かさばらない小さいやつをカバンに入れた。グミとみかんジュースとウェットティッシュをセルフレジで会計を済ませて外に出た。ナプキンなんてたいした値段じゃない、買えるだけのお金もあったし、パパに頼めば買ってくれた。だけど私は盗んだ、もしバレたら早稲田大学の受験はきっと無効になる。 すぐにドラッグストアから離れ、近くの格安衣料品店に向かった。腿にじんわり温かいものを感じながら、黒のストッキングを履いていてよかったと思っ

      • 短編小説 「深夜のお客さん」

        深夜のコンビニはいつも静かだ。LEDの明かりが冷たく降り注ぎ、時折、車のライトが差し込んでくる。僕は床を掃いてた、一方、レジにはマユが立っていた。彼女と僕はシフトが重なることが多かった。僕は時給が高いから深夜のシフト入れていた。マユはお客が少ないから深夜を選んでいた。 時計の針が夜の深さを告げる中、黒いパーカーに赤いジャージのパンツを履いた、20代くらいの女性が入店してきた。女性は入ってすぐ右の雑貨コーナーに向かった。僕はその様子を天井の鏡越しに見ながら床を拭きながら、女性

        • 短編小説 「エレベーターの小言」

          エレベーターのドアが閉まる音が、またしても僕の耳に響く。八階までの短い距離だけれど、毎日のようにこの小さな箱の中で繰り広げられる会話が、僕にとっては一日の中で最も長く感じる時間だ。 「おはよう、今日もいい天気だね」と、隣に立つのは佐藤。 彼は会社で僕と同じくらいの立場で、仕事が好きで、それなりに優秀だ。そして、彼の口癖は「職場の人妻に恋してるから、仕事しに来てる」だ。この一言に僕はいつも苦笑いを返すしかない。何しろ、僕にとって仕事はただの義務であり、できれば避けたいもの。

        • 固定された記事

        短編小説 「建設現場のポニーテール」

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        • 短編小説「夢の中のウサギ」シリーズ
          3本
        • 短編小説|タコとイカの大冒険
          3本
        • 短編小説「BEAST NOON」シリーズ
          2本
        • 小説 「少年シリーズ」
          5本
        • 小説「この世界にごきげんよう」
          3本

        記事

          短編小説 「カエルの日記」

          夕方、コンビニでのちょっとした買い物の帰り道、道端にアマガエルの緑色が、アスファルトの灰色に鮮やかに映えていた。 子供のころ、田舎でよくカエルを追いかけて遊んでいた。その頃の記憶が蘇ってきて、何となく、枝でカエルをつついてみたくなった。近くに落ちていた枝を拾い、そっとカエルをつついてみた。しかし、カエルは僕の期待とは裏腹に、ぴくりともしなかった。どうやら、動く気配はない。 「面白くないな」と思いつつ、何とかこの小さな生き物に何か反応を引き出したい一心で、コンビニで買った水

          短編小説 「カエルの日記」

          短編小説 「天使のことわり」

          空から地上を見つめることは、僕にとって日常の一部だ。人々の顔は小さく、彼らの営みは遠く霞んで見えるが、その心はまるで手のひらに載せた小石のように感じ取れる。僕は天使、人間界の不遇な人々に希望の光をもたらすために派遣された存在だ。 だが、この日はいつもと違った。 まるで呼び声に導かれるように、悠久の間へと足を運んだ。この場所は時が停まり、永遠が一瞬に凝縮される空間であった。光がすべてを覆い、静寂が支配する中、足音一つ響かせずに大天使が現れた。大天使の姿は壮麗で、翼は朝日を浴

          短編小説 「天使のことわり」

          短編小説 「ホワイトボードを買った日」

          今日、ホームセンターでホワイトボードを買った。4種類あったなかから、木の枠の裏面がコルクボードになってるホワイトボードを選んだ。アルミ枠のホワイトボードもあった、けど、軽いから木の枠のボードを選んだ。青と黒のペンも一緒に買った。ただ、黒板消しは買わなかった。理由は、余ってるよれた着なくなった服で拭けばいいと考えたからだ。 リビングの壁にかけた新しいホワイトボードに、僕は心地よい緊張を感じつつ、ペンを走らせ始めた。60×90センチの白い空間は、僕の頭の中を整理するための舞台だ

          短編小説 「ホワイトボードを買った日」

          短編小説 「DVDレンタル」

          休日の昼間、クリア塗装がまだらに剥がれた赤い軽自動車を走らせて街を抜けて、僕はまたあの古びたDVDレンタルショップに向かった。街で唯一残っているレンタルチェーン店だ。 この店は、時間が止まったような空間で、古着や中古のテレビ、さまざまなガラクタがひしめき合っているリサイクルショップと併設されている。日が経つごとにレンタルスペースは縮小され、DVDの棚は徐々にリサイクル品に押しやられていく。 僕の目的は明確だった。ネット配信されていない、どこか懐かしさを感じさせるB級映画を

          短編小説 「DVDレンタル」

          「短編小説 未発掘の本」がnote公式マガジンに追加されました

          おっ?!ありがとうございます😊😊 note編集部の公式マガジンに追加されました☺️

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          恋愛短編小説 「過敏しょうは手を握りたい」

          高校の同じクラスのミヤコと夏祭りに来ていた。僕にとって彼女は初めての彼女だった。噂によるとミヤコはこれまでに十一人の彼氏がいたとのこと。十二番目の彼氏になることに、特に不安を感じるわけでもなかった。 本当の問題は、彼女と手を握ることができないことだった。 手を握ることができないのは、ただ緊張しているからではない。人の温もりや肌の感触が苦手で、接触すること自体が僕にとっての苦痛だった。 夏祭りの賑わう会場に向かう駅からの道のりで、ミヤコは何度も僕の手を取ろうとした。彼女の

          恋愛短編小説 「過敏しょうは手を握りたい」

          恋愛短編小説 「心のなかの彼」

          始業時間五分前、同僚のナガタと一緒にエレベーターに乗り込むという小さな日常が、私にとっては何よりの贅沢だった。私は後ろから彼を眺めながら、密かな恋心を抱え、彼とのわずかな時間を心の中で噛みしめている。 ナガタは、私たちが働く会社の中でも特に目立つ存在ではない、少しダメな方かもしれない。彼は派手さはないけれど、その穏やかな物腰と、時折見せる控えめな笑顔が私の心を惹きつけてやまない。彼はきっと、他の誰かから見ればダメな同僚に過ぎない。だが、私にとってナガタは特別な人だ。彼の一挙

          恋愛短編小説 「心のなかの彼」

          短編小説 「未発掘の本」

          ある日、僕はいつものように図書館に足を運んだ。図書館は僕にとって、静かで落ち着ける場所だ。ここでは、誰もが読書に没頭している。その静けさが、僕の日常に平和をもたらしてくれる。 目的は少し変わっている、もちろんそれは本を借りることである。普段は人気のある新刊や話題の作品を手に取ることが多いが、今日は違う。誰も借りたことのない本、つまり「未発掘の本」を読んでみたいと思った。それが最近の僕の小さな趣味になっている。友達には時間の無駄だと言われたがそれでも構わない、それは人気の本も

          短編小説 「未発掘の本」

          短編小説 「タコのこころ」

          今日の晩飯はアオリイカ。これで三十二食目だ。まだ足りない、もっとイカを食べなくちゃ。 誰しも夢を持っている。子供の頃からの夢、大人になってからの夢。しかし、僕の夢は少し変わっている。僕はタコ。名前はボブ。しかし、ずっとイカになりたいと思っている。その夢を叶えるためには、イカを食べるしかない。 ある日、イカを捕えた時、七色に光るイカが僕の前を通り過ぎた。「いくらイカを食べても君は所詮タコだ」と七色のイカは言った。その言葉にカチンときた僕は、そのイカを追いかけた。イカの足を掴

          短編小説 「タコのこころ」

          恋愛短編小説 「青い星」

          その日は、夜空に星々が輝いていた。 自宅のベランダで寝転びながら空を眺めていると、一際輝く青い星を見つけた。ふと、心の中に潜んでいた遠い記憶が呼び起こされる。あの夏の日、僕と彼女が星空の下で交わした約束を。 星が降りそそぐ夏の夜、遠くには蝉の声が響いていた。僕たちは河川敷のベンチに座り、空に広がる無数の星を見上げていた。「青い星に願いをかけると叶うんだって」と彼女が言った。その言葉に心躍らせながら、僕も一緒に星を探した。彼女は僕の手を握り、少し照れながら、「ずっと一緒にい

          恋愛短編小説 「青い星」

          恋愛短編小説 「虹の記憶」

          その日は、夕焼けの空に大きな虹がかかっていた。 島根の実家の屋根裏部屋で高校時代の卒業アルバムや教科書、主に映画クラブの衣装やセットを整理している時、小さな丸窓から虹は見えた。その虹の輝きが、何か古い記憶の箱を開けたかのように、僕の心に静かに照らしていた。それはまるで、通りすぎた過去を引き戻すように、あの日の彼女との思い出が目の前に現れてくるようだった。 彼女との出会いは、高校時代にさかのぼる。高校の二階の理科実験室に続く階段の踊り場で、黒髪ロングで前髪ぱっつんの彼女はい

          恋愛短編小説 「虹の記憶」

          短編小説 「アタマのコブ」

          『妹の心』(十一ページ)より 二〇一五年四月十日、高校一年生の高村アキラは、クラスの女子生徒、岡田ミソラに恋心を抱いた。ミソラはその美しさで学校中の注目の的であった。それはアキラも例外ではなく、小中学時代からバレンタインのチョコを同級生のみならず上級生や下級生からいくつも貰うほどだった。しかし、アキラの頭、より正確に書くとすれば、彼の後頭部に生きる『妹』によって彼が恋愛をすることは強く反対されていた。 「お兄ちゃん、また女の子のこと考えてるの?だめよ、わたしたちだけでい

          短編小説 「アタマのコブ」