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マイクが来たなら微笑んで

 今日はカラオケ文化の日なのだそうだ。

 平成6年に制定されたこの記念日はカラオケ文化の振興を目的に設けられたとの事である。

 思えば私が高校生だった頃はカラオケの一大ブームだった。

 田舎のだだっ広い何もない道路沿いにコンテナを連結させた突貫工事のカラオケボックスが立ち並んでいたのもその頃の風景である。

 六畳も無いくらいの狭いコンテナボックスにカラオケの機械とモニターと申し訳程度のお立ち台とテーブルがぎゅうぎゅうに詰められていた。

 そこに友達五人くらいで乗り込むわけである。

 マイクを持って思い切り歌うのは娯楽に飢えていた中高生には刺激が強く中毒性が高かった。

 その頃していたアルバイトの給料が出る度にほとんどカラオケ代に使っていた。

 歌っていると当然喉が渇くわけだがドリンク代がもったいないので一番安かったウーロン茶を頼んでちびちびと飲んでいたのも懐かしい思い出である。 

 今でこそお酒が入らないと恥ずかしくて人前で歌えないがあの頃は若気の至りでカラオケに行くと誘われたらどこにでも顔を出したものだ。

 そんなカラオケ文化の流行りに乗っていたが残念ながら女子と一緒に行った事は数えるほどしかない。

 その頃にほのかに好意を寄せていた女子をカラオケに誘い出してそれだけで緊張してしまい何もできないまま終わってしまったことがあった。

 その子とは結局あまり仲良くなることもなく友達未満恋人以下で学生時代を終えた。

 ああ、甘酸っぱい事を思い出したなと思いつつ今日はカラオケの日にちなんだ晩御飯にでもするかと思いついた。

 帰り道にスーパーに立ち寄って食材をあれこれ買った。

 家に着いてからは手洗いとうがいをしてご飯の支度に取り掛かる。

 カラオケご飯の定番と言えば何と言ってもから揚げとフライドポテトである。

 普段ならまずやらない揚げ物だが今日は気分が盛り上がっているのでチャレンジした。

 鶏むね肉を一口サイズに切ってニンニク、ショウガ、醤油、酒で揉み込んでおく。

 肉に下味がつくまでの間にジャガイモを細切りにして水にさらしておく。

 ご飯物も欲しいので冷凍庫に入っているお米を解凍する。

 その間に下味をつけた鶏肉に片栗粉をまぶして油で揚げていく。

 シャワーッと油が広がってじわじわと衣が色づいていく。

 いっぺんに入れると揚げむらが出るので小分けにしてチンカラチンカラ熱を通していく。

 こんがりとキツネ色に揚がったらキッチンペーパーにあけて油を切っておく。

 お次はジャガイモの水分をしっかり切って小麦粉をはたいて揚げていく。

 焦げない程度にじっくりと相手をするのが失敗しない方法である。

 こんがり揚がったら油から引き揚げてしばらく置いておく。
 
 三分くらいしたら少し高温の油で二度揚げするのがコツと言えばコツだ。

 揚げ物が一段落したらご飯物を作っていく。

 玉ねぎとウインナーを細かく刻む。

 フライパンに油をしいてそこに刻んだ具材を入れる。

 ざっと炒めたらそこにお米を入れて炒めていく。
 
 味付けは塩コショウにカレーパウダーを多めに振り入れる。

 仕上げにバターをポトリと落としてジャッとかき混ぜたらカレーチャーハンの出来上がりである。

 ようし良い感じだなと思って早速ご飯にする。

 居間に料理を運んでいただきますをする。

 今日のお酒はコークハイにしてみた。

 ではではと言いながらまずはお酒をクーッと飲む。

 炭酸の効いた甘い味の奥からウイスキーのスモーキーな味がしてなかなかうまい。
 
 うん、たまにはこういう口開けも悪くないと思ってから揚げに箸を伸ばす。
 
 サクッとした歯ごたえの後にジュワッと肉の脂が口の中に広がる。

 ああ、やっぱり自家製のから揚げは美味しいなぁとひとりごちる。

 お次はポテトをパクリと食べる。

 サクッとした歯ごたえとホクホクした芋の味が楽しい。

 味付けはシンプルに塩にしてみたが正解だったようだ。

 二杯目のお酒もコークハイにしてホコホコ湯気を揚げているカレーチャーハンにスプーンを入れる。

 ハクッと口にするとカレーの香ばしい味がしてその後にチャーハン特有のしっかりした美味さが広がる。

 うん、これも正解と自画自賛しながらモリモリ食べる。

 カラオケ飯だからか時折懐かしい曲を口ずさんでしまう。

 たまにはこんなジャンクなご飯も良いなと思いながらごちそう様をした。

 ううん、揚げ物片付けが面倒だなと思いながら台所に立つのであった。

 ああ週末にカラオケに行こうかなぁ。

 さぁて明日は何を食べようかな。

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