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およそ500字日記

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文字数を稼いでなんとか500字以上書けるように頑張っています。
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2022年11月の記事一覧

2022年11月20日の日記

2022年11月20日の日記

 暮らしは良くはならない。髪も切りに行けない。日に日に乾きにくくなる髪は、水気をたっぷり含んだスポンジのようで、私の心みたい。

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 社会というハードなマウンテンを、振り落とされまいと爪や歯を食い込ませて這いずり回る私たちは、さながらヒードランみたいだ。ほのおのうずに巻き込まれ蓄積ダメージを負いながら、吹きすさぶねっぷうに立ち向かう。巻き起こるマグマのストームと一触即発、今日もこの地下帝国で私

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2022年11月8日の日記

2022年11月8日の日記

 皆既月蝕と同時に、月が天王星を隠す惑星食という現象も起きていたようだ。さよなら第七惑星、442年前ぶりの別れを。
 真向かいのマンション、こぶりな月が屋上に浮かぶ。手に取ろうと思わず窓を開けたが、浮いた街の喧騒に嫌気がさして、私はまた窓をそっと締めたくなる。

 完璧なものより、少し欠けたもののほうが風情があるように見えるのは、藤原道長に対する宣戦布告か。なにひとつ不自由のない順風満帆なフルムー

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2022年11月5日の日記

2022年11月5日の日記

 「地元の河川敷からオフィス街の公園になって、リプトンの紙パックは鬼ころしになった」などとカスのaikoみたいなことをほざいていたら、都会の喧騒が一瞬だけ止んだような気がした。しかしすぐにまたザワザワと喧騒が湧き起こって、またもとの都会の片隅の風景に戻った。見上げた高層ビルディングの上階のあたりはまだ光が灯っている。都会の片隅の地べたで人工の星たちを眺めながら呷る安酒は、銀河鉄道の1等車で嗜むカク

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