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法学部の講義

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法学部の学部紹介シリーズではネガティブなことばかり話している気がするので、ここでは実際に法学部で学べる面白い内容について紹介します。
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法学部の講義シリーズ、始めました。

 暑い。最近ずっとこんな言葉ばかり口にしています。そして、これを口実にして勉強をさぼろうかなと思うことがあります。(私も幽霊になりそうですね笑)しかし、そんなんではいけない。事実、天罰が下ったのか夏バテになり、少し体調を崩しました。  そこで、わたくしひらめいたわけです。noteに法学部の授業で学んだことを投稿すればよいと。そうすれば、noteも更新できつつ、自分の勉強もはかどることに気づいたのです。ゆえに、「法学部の講義」シリーズと題し、不定期更新でこれからは法学部の講義

【法学部の講義】判例学習の面白さ~youtuberが会計前に切身を食べた事件を通じて~

 法学部では講義で学んだ法律が実際の裁判でどのように用いられているのかを学ぶために判例学習をします。抽象的な内容である法律の条文を黙々と勉強するのとは異なり、具体的な事例を検討することができる判例学習は私としてはとても興味深いです。  しかしながら、法学部生でない方にはこの感覚が伝わらないでしょう。そこで、1つ有名な裁判例を題材に、法学部で経験できる判例学習の面白さを知って頂けたらと思います。  さて、事例内容は、とあるユーチューバーが、動画投稿目的でスーパーマーケットに

【法学部の講義】そもそも刑罰を加える目的とは?刑罰の正当化理由について

 例えば、199条に「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。」(殺人罪)と書かれているように、刑法典には「犯罪」とそれに対応した「刑罰」が記載されています。  しかしながら、よくよく考えると、本来的には人に意図的に刑罰という「害悪」を加えることは犯罪であるはずです。(大量殺人犯を死刑に処した者もまた殺人罪となるはずです)  そうだとすれば、一見犯罪とも思える人に刑罰を課す行為が、なぜ正当化されるのでしょうか。  法律学(刑法学)的には大きく以下の3類

【法学部の講義】なぜ易々と連帯保証人になってはいけないのか。

 「なぁ、頼むよ。お前には絶対に迷惑かけないから名前だけ貸してくれないか。それだけでいいからさ。」  こんな軽い言葉に騙され、つい連帯保証書にサインしてしまい、その後、当の借主は夜逃げ。そして、自分は思いもしない大金を借金として抱え込むことになってしまった。これは金融漫画でよくよく見かける展開です。  そして、法学部の先生曰く、日本人の多くは書類に目を通さず、すぐにサインしてしまう傾向にあるそうで、現実世界でもこのような問題は起こってます。  どうしたらこのような事態に直

【法学部の講義】「思想の自由市場」理論とツイッター

 イーロン・マスク氏がツイッター社の買収(2022/10/27)に完了してから早1か月。その後マスク氏は、大規模な人員整理や有料認証バッジ制の検討等、様々な改革を行ってきました。その中でも、特に世間の意見が割れたもの一つが、停止されていたアカウントの復活。  実際、トランプ前大統領のアカウント復活の是非を問うネット投票では、投票総数1500万票超えの中、賛成52%と僅差で復活が決定されました。巨額の資金を投じ、このような賛否両論を巻き起こしてでもマスク氏がツイッターを改革し

【法学部の講義】意外と知らない犯罪成立要件

 みなさん、1日に何件犯罪が発生しているか、ご存じですか。日本での1日当たりの犯罪認知件数は計算上、1500件ほどです(以下の警視庁資料より算出)。他国に比べますと、日本の犯罪認知件数は非常に少ないと言われます。しかし、それでも1日に1500件です。  つまり、普通に考えれば犯罪が起きない日はないと言えます。  事実、「本日、A駅前で○○をした容疑で職業○○のXが逮捕されました。警察によりますと、容疑を認めているとのことです。」  なんてニュースを毎日と言っても過言では

【法学部の講義】裁判所なのに審査却下!?

 裁判所は、裁判を行い判決を下す機関です。ですから、基本的に法律上の争訟について審査をしてくれるはずです。しかし、裁判所が審査をしなくてもよいという理論がなんと憲法学上存在します。それが「統治行為論」です。  統治行為論とは、いかなることを指すのでしょうか。統治行為論は、高度な政治性を有する行為については、裁判所が合憲/違憲の判断を示すことができるのにも関わらず、あえて審査しないことをいいます。簡単に申し上げますと、政治の問題には裁判所は関与しないということです。  統治

【法学部の講義】人権もインフレ化⁉

 プライバシー権、知る権利、肖像権。これらは全て大変重要な権利です。しかし、どれも憲法に直接定められていません。どうして憲法で直接定められていないのでしょうか。  答えは憲法制定当時にはこれらの権利が想定されていなかったからです。情報化社会になった現代でこそ、SNSが発達し、プライバシーや肖像権の重要性が叫ばれていますが、当時はそれほどではなかったのです。知る権利も同様です。こういった権利を「新しい人権」と呼びます。  そうすると、個人の尊厳や幸福追求権を定める憲法13条