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【法学部】文系なのに卒論なし!?

 文系学部は大学を卒業するために卒業論文を課されるのが原則です。そして、卒論では2万文字ほど書かなければならないそうで、それなりに時間のかかるもののようです。実際、私のバイト先の文学部の先輩も卒論が残っていて大変だと話してくれました。では、同じ文系たる法学部も卒論があるのでしょうか。その答えは「ノー」です。

 意外でしたか。なぜ、法学部生は卒論が課されないのでしょうか。実のところ、はっきりとした理由は分かりません。しかしながら、いくつか学生の間でまことしやかに言われている理由は存在します。

 まず、たかが学部生では法律学について論ずることなんてできないから、といったものがあります。実は、法学部に入ったからといって法律の超基本たる憲法・民法・刑法でさえ、専門家からするとかじり程度の内容しか学習せずに卒業できます(私は専門家ではないですが汗)。
 しかも、※家族法や担保法(民法の単元の1つ)は必修でないことがあるため、民法に至ってはそれ全てをかじりさえせずに卒業することが可能なのです。つまり、法律という葉っぱを好き勝手にかじった程度の学生なんて現在の法律を批評できないのでは、といった感じです。

※家族法:結婚・離婚や相続制度、養子、親族の範囲などを定めた民法の分野。あくまで講学上の名称。
※担保法:債権回収(およそ借金回収)を担保するための制度を定めた民法の分野。具体的には、抵当権など。あくまで講学上の名称。

 また、法学部生は※司法予備試験や司法試験を受験するため、という意見もあります。司法試験等を受験する法学部生からできる限り時間を奪わないであげようという事らしいです。
 しかし、私はこの説は的を得ていないのではないかと思います。1つ目の理由で述べましたが、多くの法学部で民法を含む司法試験に出題される法律全てを学ばずして卒業できるようになってます。ですから、学生が意識的に当該科目を選択しない限り、出題科目をもれなく履修することはないのです。 
 さらに、先ほど述べた通り、選択したところでかじりレベルしか学習しないので、法律の専門家登用試験たる司法試験に太刀打ちできるわけがありません。ゆえに、仮に大学が卒論を免除することにより、司法試験を受験することを間接的に推奨しているとしたら、それは普通の高校生に「君がハーバード大学を受験するのなら保健体育や家庭科の履修を免除してあげるよ」と言っているようなものです。
 しかも、※法科大学院制度が創設された現在、大学が司法予備試験や司法試験の受験を学生に勧める理由も存在しません。ですから、私としてはこの意見はおそらく間違っていると考えています。

※司法予備試験:司法試験の受験資格を得るための試験。難易度は司法試験とそこまで変わらないと言われる。司法試験の受験資格を得る方法として、他に法科大学院を卒業する方法が存在する。
※法科大学院:法曹人口増加を目指す、国の司法制度改革によって設立された制度。法曹育成に特化した大学院で、学者を目指すための大学院とは異なる。卒業により司法試験の受験資格が得られる。ロースクールとも。
 有名私大や難関国立大を中心に法科大学院を抱えており、自らの法科大学院の学生のレベルを維持するため、大学としては、司法予備試験を通じて司法試験の受験資格を得てもらうより、自らの大学の法科大学院を卒業することにより受験資格を得てもらうことを望んでいる、と考えるのが妥当だと言える。

 最後にこれは私個人の見解で、普段レポートを書かない法学部生に、いきなり卒論を求めるのは無理難題ではないか、というものです。『弱き者を助けてくれない法学部。』という記事で記しましたが、法学部の成績評価は試験1発勝負であり、これは裏を返すとレポートが課されることはない、という事を意味しています。そんな法学部生にいきなり数千文字のレポートはおろか、数万文字の卒論を書けというのは、踏むべき段階を無視していると言えます。


 このように、理由こそはっきりとしませんが、法学部には卒論がないことが多いです。しかし、あくまで多いです。どの大学でもないわけではないようです。
 また、これはあくまで法学部法律学科の話です。法学部政治学科とは普段から学習する内容が異なりますので、同じ法学部でも政治学科では話が違うかもしれません。

 そして、我こそは法律学の大家になるべく、法学部に進学しようと決心していたのに、自らの4年間の集大成たる卒論を発表できないなんて寝耳に水だ、というすばらしい志をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし安心してください。あくまで卒論なしに卒業できるだけで、卒論が禁止されているわけではありません。ですから、任意で「主専攻法律論文○○法」といったような授業を受講して卒論に準ずるものを執筆することはできます。
 また、卒論の代わりとしてゼミによっては「ゼミ論文」を課していることもあります(但し非常に意欲的なごく一部のゼミに限ります。ゆえに、卒論の代わりにゼミ論が課されているわけではありません)。

 いずれにしろ、法学部では、卒論執筆の自由は「個人として尊重される」(憲法13条)のです。





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