立花産婦人科。その産婦人科では、今までに死亡事故は起きたことがない。そのほかの医療事故も一切起きたことがない。とても優れた産婦人科だ。その産婦人科で、たった今一人の女性が出産を控えていた。陣痛が激しく、分娩室へと運ばれていく。
　分娩室へ入ると、夫がいた。
「みさこ！　頑張れよ！」
　みさこは、必死に気張った。
「落ち着いて呼吸してください！」
　助産師が言う。激しい痛みの中、徐々に顔が出てきた。
「もう少しです！　頑張ってください！」
　そして、無事赤ちゃんは産まれた。
「元気な男の子ですよ！」
　みさこは、赤ちゃんを抱き抱えた。
「これからよろしくね」
　泣きながら、みさこはそう言った。すると、みさこは何やらおかしなことに気がついた。それは、赤ちゃんのお腹にQRコードが付いていたのだ。みさこは、助産師に聞いた。
「このQRコードはなんですか？」
　すると、助産師は答えた。
「それはねえ、この子がどんな人生を歩むか映像で見ることができるものよ」
「へえ〜。不思議ね〜」
　みさこは言った。
「じゃあ、見てみようぜ」
　夫はノリノリで言った。
　そして、夫はスマホでQRコードをスキャンした。すると、動画が始まった。
　"今日この子は産まれました。名前は、恐らくしゅんぺいでしょうか？"
「えっ？　名前当たってるじゃん」
　みさこは不思議そうに言った。
"しゅんぺいは、すくすく元気に育っていきます。初めて喋った言葉は、「くるま」でした。しゅんぺいは、一人っ子として非常に愛されて育ちます。そんな、しゅんぺいは幼い頃からいたずらっ子です。家のものを隠したり、壁に落書きをしたり、両親は手に負えないでしょう。
　それでも、両親は懸命に育て上げ、しゅんぺいは小学生になります。小学校では、生徒会長を務めるでしょう。そして、みんなを扇動して、授業のボイコットを行うでしょう。しかし、中学生になってからは、大人しくなります。そして、高校大学と順調に大きくなっていきます。
　しかし、それはしゅんぺいの潜伏期間だったのです。しゅんぺいは、大人になり国家転覆計画というものを掲げ巨大な宗教を作り上げるでしょう。そして、徐々に信者を増やしていき政党を作ります。それは、未来党というものです。未来党は、徐々に勢力を伸ばし与党になるでしょう。そして、しゅんぺいは総理大臣になります。それから、日本はおかしくなり始めます。核を大量に作り、ほかの国を攻撃します。そして、世界大戦が始まります。世界大戦は五年間続き、最後は核戦争でどの国もボロボロになります。文明が滅び、人々は原始の生活へと戻ります。そして、しゅんぺいは齢五十歳で命を落とします。
　これが、この子の歩む人生です。改めて、ご出産おめでとうございます"
　ビデオが終わり、二人は呆然としていた。そして、助産師さんが口を開いた。
「どうしますか、、？」
　二人は、この子を育て上げる勇気がなかった。そして、その事を助産師に伝えた。
「分かりました。では、、」
　こうして、この産婦人科で初めて、新生児の死亡事故が発生するのであった。