【読書記録】2022年1月

ごきげんよう。ゆきです。

昨年12月の読書記録では「またいつかお会いしましょう」なんて、いかにも読書記録はしばらく出来ないみたいな匂わせをしていたくせに早速更新です(苦笑)。というのも、産後1ヶ月実家に里帰りしていて家事は全て実母が担ってくれているので、育児の手が空いたときにちょこちょこ読書ができたのです。2月以降は難しいだろうなあ。

もちろん毎日ヘロヘロで睡眠時間の確保が優先なので冊数はこなせませんでしたが、今月もゆるりとお付き合いくださいませ。

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御子柴礼司は被告に多額の報酬を要求する悪辣弁護士。彼は十四歳の時、幼女バラバラ殺人を犯し少年院に収監されるが、名前を変え弁護士となった。三億円の保険金殺人事件を担当する御子柴は、過去を強請屋のライターに知られる。彼の死体を遺棄した御子柴には、鉄壁のアリバイがあった。驚愕の逆転法廷劇!

『連続殺人鬼カエル男』『ヒポクラテスの誓い』と来て、私にとってKindleでは3冊目となる中山七里作品。全て主役は違えど登場人物は重複しており、著者の世界の一貫性に気付く。どのシリーズから読んでも楽しめるのが良い。

この著者は本当にハズレがない。どれも重厚で、だけれど読みづらさは全くなく、ミステリにずぶずぶに浸らせてくれる。主人公が刑事だろうと解剖医だろうと弁護士だろうと、まるでその職に従事した経験があるかのように鮮やかに会話も物語も進められていく。少しでもその脳内を覗くべく、著者の人となりを見てみたい。と思っていたら、私の大好きな有隣堂のYouTubeチャンネルに登場していた。バケモノのような生活を送っていることがわかった。

著者については一旦置いておいて本の話をすると、あらすじは上記の通りなのだが、すっかりそのあらすじにも騙されてしまっていた。いや、多分著者には騙すつもりなんて毛頭なくて、私が勝手に騙された気になっているのだろう。先入観とは恐ろしいもので、なんの疑いもなく脳内で「こいつは悪だ、こいつは善だ」と決めつけてかかっていた自分に気が付いた。著者の狙いはそういった、私のような読者への皮肉なのではないだろうか。

法廷での鮮やかな逆転劇、二転三転する真実、主人公の過去と葛藤と現実。400ページにこれでもかというエンタメ要素と、幾人もの苦渋や憎悪に塗れた人生が詰まっている。ミステリとしても申し分なく、真実を知った時には思わず「そうだったのかー!」と天を仰ぐことしか出来なかった。決して明るい物語ではないが、読了後の後味は不快ではない。むしろ主人公のこれまでに思いを馳せ、彼の未来に僅かな赦しがあることを少し夢見てしまう。贖罪の意味を考えながら再読したい物語である。

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以前に原田マハ著『アノニム』を読んだ際、怪盗モノの面白さを改めて感じたので超王道を攻めてみた。小学生の頃ははやみねかおる著『怪盗クイーン』シリーズを読みふけっていたが、ルパンは読んだ記憶がほぼ無い。どちらかと言えば画面でコミカルに動き回る三世の方が印象強いくらいだった。

さて本書、正直児童向け文学だと思って軽い気持ちで読み始めたがとんでもない、最高のミステリだった。下手な推理小説よりもトリックやサプライズが満載。大人が読むならハヤカワのこちらは大推薦できる(というか子ども向けでは最早ないと思う)。ルパンの芸術的な盗みの技に酔いしれてほしい。個人的には『アルセーヌ・ルパンの脱獄』がお気に入り。

いつも探偵気取りでミステリ小説に向き合っているくせに、今回は怪盗の逃亡を応援してしまうのだから自分の都合の良さに呆れる。近い将来、児童向けルパン小説を息子に手渡し、一緒に興奮できる未来を迎えたい。息子は探偵と怪盗、どちらに胸ときめかせるのだろう。

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本1冊読めれば上出来、くらいの慌ただしい日常だったので、2冊読めたことが普通に嬉しいです。弁護士と怪盗に極上のエンタメを提供してもらいました。楽しかった。探偵が出てこないラインナップも私にとっては珍しいですね。またちょこちょこと活字に触れられるよう、自分時間を見つけつつ育児頑張ります。

今回もお付き合いいただきありがとうございました。

またお会いしましょう。ゆきでした。

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