【読書記録】2021年2月

ごきげんよう。ゆきです。

育児に追われる日々の中で手軽にできる息抜きといえばスマートフォンをいじることなのですが、ある日メールを開くと疲れた目に飛び込んできた文言が《Kindle 小説最大70%オフセールスタート!》でした。(いいなぁ……気晴らしに読書したいけどそんな時間取れないしなぁ……)と逡巡しながらもセール会場を覗き、気がついたら6冊購入していました。わぁ怖い(棒)。

幸いにも息子は日中、私の膝の上でしか寝てくれないので読書時間は無事捻出できました。文字を追っていると寝不足も相まってどうしても寝落ちしてしまっていたので冊数は少ないですが、今月の読書記録にもよろしければお付き合いくださいませ。

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「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えてゆく。愛するものを失うことは、とても哀しい…。言語が消滅するなかで、執筆し、飲食し、講演し、交情する小説家を描き、その後の著者自身の断筆状況を予感させる、究極の実験的長篇小説。

筒井康隆ファンの父に聞いていたのでこの小説の存在は20年くらい前から知っていたが、どうやら最近TikTokをきっかけにバカ売れしているらしい。物語が進むにつれて平仮名が1つずつ消えていくという、無謀とも思えるコンセプト。だが読んでびっくり、最後の最後まで違和感なく楽しめるのだ。筆者の語彙力に脱帽である。

物語そのものが、そのまま作家である主人公の書く小説となっている。文字が無くなるとはどういう事か、言葉が消えていくというのはどのような変化をもたらすのか、読みながら想像が止まらない。

斬新なコンセプトゆえ面白いと感じながら読む反面、どんどん切なさが膨れ上がっていき、本を閉じる頃には自分でも分かるくらい神妙な顔をしていた。こうやってnoteに想いを綴ったり、何気なく誰かの名前を呼んだり、身の回りにあるものを当たり前のものとして受け取っているのは全て言葉があるからこそ。もう少し私は、世界は、言葉の存在に感謝しなければいけないような気がしてくる。

中高生がメインユーザーと思われるTikTokでこの本が紹介された事は幸運だったと思う。あまねく若者が言葉を大切に思い、扱うようになる日は近いかもしれない。

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アウトドアが趣味の公務員・沖らは、仮面の男・黒沼が所有する孤島での、夏休み恒例のオフ会へ。赤毛の女子高生が初参加するなか、孤島に着いた翌日、メンバーの二人が失踪、続いて殺人事件が。さらには意図不明の密室が連続し……。果たして犯人は? そしてこの作品のタイトルとは? 「タイトル当て」でミステリランキングを席巻したネタバレ厳禁の第50回メフィスト賞受賞作

私メフィスト賞にはとにかく目がなくて(以下略)。

ずっと気になっていたこちら、遂に読了。バカミスというジャンルがあるのは知っていたが、これほどまでに読みながら「んな馬鹿な!」と叫びたくなるミステリは他に存在するんだろうか。初めてのバカミス境地に介入してしまった。ちなみに全然嫌いじゃない。むしろ好き。

冒頭、事件を推理しながらタイトルも当てろという筆者から読者へ向けたメッセージから始まる。タイトルの〇には誰もが知る慣用句が当てはまるといい、ご丁寧に文字数まで提示されているのに読み進めても正解が全く思い浮かばず焦った。読了して思う。予想できるかいこんなもん。

80%読み進めたところで膝から崩れ落ちた私の気持ちを、未読の方にぜひ味わっていただきたい。これを「不快だ!」と取るか「痛快だ!」と取るかはその人次第だが、他の小説には無い衝撃を受けることは間違いないと思う。もちろんちゃんとミステリとして成立しているのでそこはご安心を。

他のミステリと違わずこちらも探偵役がいるのだが、犯人に切った啖呵がここまでアホっぽくなるのも珍しいな、とそんなところも印象的だった。Kindleでは読めない麻耶雄嵩さんの解説が気になるところ。実写化はまずもって不可能なので気になる方は本を読むしかない。ぜひ。ぜひぜひ。

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東京23区を侵食していく不気味な“力士シール”。誰が、何のために貼ったのか?謎を追う若き週刊誌記者・小笠原は、猫のように鋭く魅惑的な瞳を持つ美女と出会う。凛田莉子、23歳―一瞬時に万物の真価・真贋・真相を見破る「万能鑑定士」だ。信じられないほどの天然キャラで劣等生だった莉子は、いつどこで広範な専門知識と観察眼を身につけたのか。稀代の頭脳派ヒロインが日本を変える!書き下ろしシリーズ第1弾。

同著者の『探偵の探偵』を以前読み、「続編を欲しい本リストに入れた」とか言っておきながら別シリーズに手を出すという矛盾っぷり。しかもこちらは全22巻という『探偵の探偵』の5倍以上の長丁場。私は何をしたいんだろう……。

物凄い知識量と観察力で事件を解決に導く若い女性鑑定士が主人公。1巻のこちらはその女性が鑑定士になるまでの経緯を挟みながら、世間を賑わせる怪事件に立ち向かっていく様子が描かれている。次巻が解決編となるらしく、まだ大元の真相は明らかにならない。

ノベルス的文体で読みやすさは抜群。むしろ軽妙過ぎて少し物足りなさもあるくらい。ただ、雑学が初っ端からふんだんに散りばめられているのでそれを拾っていくだけでも楽しめる1冊になっている。中学生の頃に読んでいたらもっと世界に浸かれただろうし雑学も頭にインストールできたと思うと、この作品に今の年齢で出会った事が少々悔やまれる。

先にも書いたように全22巻ということでこの先果てしなく感じるのだが、一旦次巻まで読んでみてその先を追うかどうかを判断したい。嫌いではなかったが『探偵の探偵』の方が個人的には軍配が上がる。というわけで来月はきちんとそちらの行く末を見つめようと思う。

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3冊しか読めていないので決めなくても良いかなと思うのですが、今月のハイライトは『〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件』でした。たぶんあと2冊くらい読めていても同じセレクトをしたと思います。それくらいある意味で衝撃の作品でした。好き嫌いは激しく分かれるでしょうが、気になる方にはぜひ読んでみていただきたいなあ。

最近はセールで気になっていた本を手当り次第購入して読んでいる感じなので、また落ち着いたらテーマに沿った選書をしていきたいなと考えています。自分で決めたテーマに沿って本を選ぶ楽しさがもう懐かしい。低月齢の子どもがいながら読書ができるだけありがたいんですけどね。

今月もお付き合いいただきありがとうございました。

また次回お会いしましょう。ゆきでした。

See you next note.

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