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好きなものを好きと言えないってみんななるんじゃないん?って話。


物心ついた時から少年漫画を読んでいた。作品名をあれやこれやと覚えている訳では無いけれど、capetaとか、ロザリオとバンパイアとか、貧乏神が!とか、懐かしい。インクで指を黒くしながら月刊誌を読んでいた。りぼんやちゃおには触れたことがない。少女漫画というものを知らずにいた。
気づけば小学生、低学年、中学年とそれは続いていた。その頃にはアニメも観るようになっていた。化物語のタイトルも知らなかった頃、星を見るシーンが綺麗で、エンディングの曲が耳に残っていた、言葉が作中に羅列するのがたまらなく印象に残っている。NARUTOの写輪眼はかっこよかったし、悪魔の実は食べたかった。忍術やら魔法やら憧れて仕方なかった。この頃からオタクというものの道を突き進んでいたように感じる。

いつも通り月刊誌を読んでいた。そこで私の脳に知らなかった世界が現れる。

「腐歴女…?なにそれ?」

戦国無双、戦国BASARAも身近にあった日常。歴史に興味を持ち始めた私にとっては本当の意味で知らない世界。武田信玄の恋文?なんだなんだ、男性同士?なんだなんだ、なんて素敵なんだ。男女の恋愛に嫌な思い出があるとかそんな事は全くもってなかったけれど、何故か分からないけれど心のど真ん中を撃ち抜かれたような、そんな感覚だったのだろう。そう言えば戦国BASARAでも伊達政宗と真田幸村が対のように描かれている。石田三成と徳川家康もか?まさか、いやでも確かに…と言った具合で1人で黙々と、文字通りもくもくと妄想を進めていった結果、私は腐女子になった。
以降も黒子のバスケ free!HUNTER×HUNTERなどなど(ずっと腐女子の目で見ていた訳ではない!!)物語を楽しみ、世界観を楽しみ、胸打たれ時に涙し、テレビに齧り付くようにアニメを観て、脇道に逸れるように妄想をした。エンドカードや次回予告トークがとても好きだった記憶がある。なんなら文字起こしもしていた。今見るとなんと文字が汚いことか(ちがう)

さて、ここで私は気づく。この趣味は友人とは違う気がする、というか違う。友人が見るようなドラマももちろん好きだった。花より男子は「おい道明寺!」「花沢類好きかもしれん…!」と思ったし、イケパラは堀北真希ちゃんが可愛かった。ただ男性同士の恋愛について嬉々として話している友人は見たことがなかった。

中学生1年目にして盛大な暴走をかましてしまったと未だに思っている。当時オタクだからどうとかは思っていなかった。オタクに類するかもしれないなんてことも思ったことがなかった。人と違う趣味ということは知りながらも、突っ走った。休み時間にはソードアート・オンラインを読み、好きな漫画のノベライズを読み、OP・ED曲の歌詞を耳コピしてルーズリーフに書き集め、昼休みにアニソンに留まらずキャラソンを流すなどした。物の見事に引かれた。思えばそこから始まったのかもしれない。

「好きなものを好きと言えない。」

別に誰かに言うなと言われた訳では無い。もちろんひどく暴走したオタクだったため、その事をどうこう言われることはあった。でもそれ以上に自分の中に羞恥心というものが激しく生まれた。みんなと同じものを好きでいないといけない、みんなと同じことに興味を持たないといけない。そんな風に思った当時の私は知らないドラマの話に頑張って合わせ、「○○と△△どっちが好き?」によく分からないが○○と答えていた。一方でオタク友達とは交換ノートなどを通して「兵長かっこよすぎる、尊い」と覚えたての尊いという言葉を使っていた。そんな中途半端なところに居たからだろう。私はどちらに属することも無かった。体育の授業は1人だった、違う2人組に混ぜてもらうこともあった。休み時間は何人かが集まったグループの1人だった。

好きなものを好きだと言うと居場所が無くなるのかもしれない。もっと正確に言うならば周りと同じでなければ居場所が無くなるのかもしれない。以来高校生になるまで“そういった話”をしなくなった。自分の中で熱量を消化していた。
別にそれを可哀想だとかは思わない。だけど、もしかしたらそれってみんななることなんじゃないの?と、不意に思った。同調意識、空気を読む、趣味が合うことを友達や仲良くなる条件として大事にする層は一定数あるだろう。それは自分の趣味が一般化されているものであると確信づける為かもしれない。自己紹介の際に趣味を聞かれてなんて答えようか迷った人はいないだろうか。その理由に挙げられる趣味が無いから、は一般に言えるほどの趣味が無いという枠もあるのではないか。

好きなものを好きだと言えないこと、私はここで言えないと表しているが言わない人もいるだろう。好きなことを好きだと言うことが、ある種の正義だと思う流れもまた同調意識の中にあるのかもしれないと、可能性はいくらでも思考の余地ありだな、と感じた。

「好きなものを好きと言えないことってみんななるんじゃないん?って話」

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