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8歳の君へ

一昨日の帰り道、怒ってたね。
友達に「好きな男の子は誰?」と聞かれて、その質問の持つ意味がきっと分からなかった君は、素直に答えてしまって笑われたんだよね。珍しく泣いてたね。
「どうしてその男の子が好きなの?」と聞いたら、「優しくて一緒に遊んでいて楽しいから」。
その答えが君らしいなぁと微笑ましく思って聞いていたよ。
でも今日、その男の子のお母さんにたまたま会って、その男の子が支援級に行っていて話したりするのが皆よりもゆっくりなんだと少しだけ聞いて、私は胸がギューッとなった。

君は昔からそうだった。
相手が大人だろうが、年上のお兄ちゃん達だろうが、小さいよちよち歩きの子だろうが、君は人との間に壁を作らない。
君の好きな男の子は、喋り方や仕草が他の人と違うのかもしれないけど、君にとってはその子は“優しくて、一緒に遊んでいると楽しい子”なんだよね。
フィルターを通さずに人を見て、その人の属性や背景に関わらず仲良くなれる君のコミュニケーション力はちょっと普通じゃないと私は思う。
そういう風に人に接することができる人はとても少ないんじゃないかな。
私は君のようなタイプの素敵な人に出会ったのは初めてだから。

君にはそのままでいてほしい。
君がいかに忘れん坊で、おっちょこちょいで、消しゴムも定規も鉛筆もいつの間にか失くしてしまって、国語や算数の教科書がランドセルの中で大胆に折れ曲がっていても、机の中に何日前のか分からないハンカチが入っていても、私はそのことでガミガミ言ってしまうけれども、今のその君が全部大好きだよ。

実は少し面白いなとも思ってる。
どうして大事なもの、それも小さいものをベッドの中に入れるのかな?
どうして鉛筆を筆箱に入れないでそのままランドセルに入れるのかな?
どうして連絡ファイルのファスナーの持ち手は取れちゃったのかな?
「宿題やってこなかった人!」という先生の問いかけに「はい!」と堂々と手を挙げているのはどういうことなのかな?

おおざっぱなのに小さくて繊細ですぐに失くしてしまいそうなものが大好きなところや、
君の中で流行っている変な言葉遣い、
怒ったり落ち込んでいても唐揚げを作ると急に元気が出るところも、
朝、窓を開けて「行ってらっしゃい」と言うと、振り返って“あっかんべー”をしてから手を振ってくれるところも、
素直で、頑張り屋で、沢山お手伝いしてくれる君が大好きだけれども、ちょっと変で面白いところが、君らしくて大好きなんだ。

最近の君は、もうすぐ手を繋いで歩いてくれなくなりそうな気配があるけれども、一日でも長くその手を繋いで歩けたらと思っているんだ。いつも指先にカラーペンやノリやねりけしの破片がくっついている君の小さい手も大好きなんだ。
君とふざけながらいつまでも、どこまでも歩いていきたい。

でも安心して。ちゃんと放すよ。
君が自分で自分のしあわせをつかまえに行けるように、そっと放すから大丈夫。

実は手を放したあとの楽しみもあるんだ。
君が大人になったら一緒にワインを飲みたい。
どんなワインがいいかな。ゆっくりと、その瞬間を慈しむように長い時間をかけて楽しめるワインだといいなぁと思ってる。
私とワインを飲むことが君のしあわせや楽しみの一つになれたらいいな、なんて、夢を見てる。
君が大人になった時、フィルターを通さない優しくて厳しい君のその目で見て、「一緒に美味しいワインが飲みたい、話したい」と思ってもらえる人になっていたい。
だから、君のしあわせを精一杯応援しながら、私も頑張る。

いつも大好きだよ。
怒ってる時もね。
産まれてきてくれて、本当にありがとう。

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