見出し画像

映画業界、2020年代の幕開け。

こんにちは、“映画おばけ” です。

普段は、企業様の広告コミュニケーションや、
プロモーションを企画するお仕事をさせて頂いてます。

仕事で、映画(主に洋画)の広告宣伝業務に携わる立場ですが、今年の各配給ラインナップは次々と公開延期となり、作品供給が絶たれた中で映画の仕事を作ろうにも作れない、大変もどかしい1年を過ごしました。

そんなコロナ禍では、配信ビジネスのプロモーション業務が自分の仕事を支えてくれたことは、ありがたい気持ちと同時に、一人の映画(映画館)ファンとしては複雑な気持ちでもあります。

映画ビジネスの歴史的転換点

昨年2019年は、日本の映画市場が過去最高の2600億円を越え、動員数も述べ1.9億人となる等、記録づくめの1年となりましたが、2020年は一転してコロナショックが「劇場ビジネス<配信ビジネス」の流れを加速させました。

特に北米の映画マーケットは回復の見込みが立たない状況から、ワールドワイドの映画(コンテンツ)ビジネスは、劇場モデルから配信モデルへ、完全に切り替わろうとしています。

ディズニーカンパニーの株主向け発表のインパクト

画像1

画像2

20世紀スタジオを買収し、今やハリウッド市場の3分の1を握るディズニーの切った舵の方向からも、世界のコンテンツ市場の進む方向は、明白です。

株主向け発表のプレスリリースの日本語訳がディズニー社公式HPにも掲載されていますが、要約すると…

・Disney+の上位互換サービス「Star」がローンチされ2021年内の始動を目指す。

・ディズニーは100本の映画とテレビシリーズの新作を発表、そのうち80%がDisney+へ。

・2024年度までのDisney+加入者目標は3~3.5億人を目指す。
(Netflixは現在2億人)

・Disney+のコンテンツに80億ドルから90億ドルを費やす。(MCU作品の製作費が1本2億ドル前後)

という内容となります。

画像3

これまで長らくディズニーのコンテンツビジネスは、映画を中核とし、ライセンス、音楽、ゲーム、小売等で360度のタッチポイントを築いてきましたが、いよいよ本腰いれてビジネスの基盤を、映画配給からSVODへシフトし、D2C展開と業界再編に力を注いでいくことになります。

北米はコロナ収束まで、劇場公開と同時にストリーミング配信がスタンダードに

今月ワーナー・ブラザースは、2021年公開予定の映画17本すべてを、劇場公開と同時に自社の動画配信サービス「HBO Max」で配信すると発表したのだ。17本の中には、大型予算を投入した『マトリックス4』『ザ・スーサイド・スクワッド』『DUNE/デューン 砂の惑星』なども含まれる。これらの大作も、追加料金なしで見られるという。

(中略)

ワーナーに先んじてディズニーも配信をビジネスの中心に据えようとしている。今年10月、ディズニ−は大きな組織改革を行った。そこでは作品は劇場用か、配信用かを決めずに作られる。配給、配信はひとつの部署が管理し、クリエイターが「僕はこれを劇場用に作ったんだ! 配信に回すなんて許さない!」などと口出すことはできない。それはトラブルを避ける点でもディズニーにとって都合がいい。

(引用:東洋経済オンライン)

記事の通り、コロナ収束の目処が立たない北米では、映画マーケットにおける「劇場」の相対的な価値は、下がらざるを得ない状況です。

劇場という提供モデルが失われることは無いと思われますが、それでも今回のコロナショックで全世界のコンテンツ提供社が「一毛作」が危ないこと、ビジネスのリスク分散が必要であることを、嫌ほど痛感したはずです。

画像4

日本の映画市場では、鬼滅の刃が19年ぶりに歴代興行収入の記録を塗り替えるなど、全世界的みれば異常値といえる「劇場」の盛り上がりを見せてもいますが「劇場ビジネス<配信ビジネス」への転換が、市場からの要求であることに、国内コンテンツメーカーも危機感を感じてないわけがありません。

2020年、アメリカではディズニー、ワーナーの歴史的な配信シフトもあって、ストリーミングサービスと映画のヒエラルキーが完全に入れ替わってしまったように、日本でも数年以内にはNetflixをはじめとするストリーミングサービスが、長編作品の企画や製作においても既存の映画会社を追い越す可能性は高い。

そんな中、東宝の危機感は、共同配給作品の増加や「東宝グローバルプロジェクト」の推進にも表れていると言っていいだろう。いや、さすがにどの映画会社も危機感はあるはずだが、そこで長期的な視野に立って次の手を打てるだけの余裕があるのが、日本では東宝だけなのかもしれない。

(引用:リアルサウンド)

無論、ビジネスモデルのシフトには国内全興連との摩擦は避けられませんし、米国よりもずっと時間をかけた移行にはなると思いますが、日本においてもネトフリ、アマゾン、ディズニープラスでの新作コンテンツの視聴が一般化し、ユーザーの映画体験自体は、確実に変わりつつあります。

可処分時間の奪い合いという観点から、日本のコンテンツメーカーもメディア環境の変化に適応していくのは時間の問題で、ここだけの話、国内コンテンツメーカーのSVOD参入ニュースを、21年以降私たちは次々に目にしていくことになるでしょう。

いよいよ幕開ける、「2020年代」。

BC 2020 (コロナ以前)の10年間のポップカルチャー史を振り返るのに最良の一冊が、新潮社『2010s』(トゥエンティテンズ)です。

2020年代の本格突入の前に、これまでの10年を振り返るのにとても便利な1冊で、以下noteでざっくりまとめもしていますので、ご興味ある方はぜひ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?