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花を買い、コンビニ人間を読む

お花を買った。お花はすごい。
一気に家の中が華やかになる、見るだけでたのしい、うれしい。

オレンジのチューリップと白のスイートピー、白と紫のムスカリ。

できるだけ長く生きてほしい。
毎日お水を変えよう。


村田沙耶香さんのコンビニ人間を読んだ。

コンビニの店員でいるときのみ正常な人間になれる、世界の部品になれる、そんな人の話だった。普通、正常、わかる、異物、治る、修正、修復、排除などの言葉が印象的で正常な世界の強引さを感じる。

コンビニ店員として生まれる、コンビニ店員という動物という言葉も印象的だった。恵子は普通の人間とは確実に違うコンビニ人間なのだ。


勤務態度も悪く、女性客にストーカーまがいのことをして解雇された白羽のことを散々悪く言っていたコンビニ店員たち。その店員たちは恵子が白羽とつながりがあると知った途端、勝手に付き合っていると解釈しお似合いだと言った。同じ仕事をしながらも自分たちとは違う種類の人間だと思われていることが染み出ている一言だと思った。散々悪く言われていた白羽と18年間コンビニでひたすら働いている恵子は店員たちの中で同じ分類だった。

ずっと恵子目線で進んでいくのでコンビニのアルバイトでは使える道具になれている、世界の部品になれているという感じで描かれているが、周りからは一定の距離をとられていることがわかる。実際恵子は知らなかったが、他のコンビニ店員たちで飲み会をしていたとの描写もあった。白羽からもおかしすぎて何も言われなかっただけと言われていた。小学生の頃は直接教えてもらえたことが加齢により教えてもらえなくなる。まだ普通が何か、自分が周りからどう見られているかを理解している白羽のほうがおかしくないような感じになっている。


最終的に恵子は普通の人間であるよりコンビニ店員という動物であることを選んだ。私はむしろこういう人ばかりの職場のほうが楽そうだなーと感じる。

店員としてしっかり今日何をするべきかを考えて働いているし、勤務態度も良く感情的になることもない。他人の噂にも興味がなく、ただ店員としての役割を果たしに来ている。少し変わっているかもしれないけれど、トラブルがあれば急いでレジも変わってくれたり、周りも見ている。新人教育もしてくれてマニュアルに忠実。シフトにも協力的で良い人やんと思う。


私も職場には仕事をしにいっているという意識が強いタイプだ。だからこそ職場で友達をつくろうとするタイプの人が多いとしんどい。プライベートに干渉してきて飲み会に行き他人の噂をしたり悪口を言う。もちろん仕事をするうえでコミュニケーションは必要だし、人柄を知っているからこそ協力しようと思えることもある。しかし、それはプライベートのことまで他人が遠慮なく踏み込んでいいということとは違う気がする。多少の自己開示は人との距離を近づけるのに便利かもしれないが、そこに対して個人の常識を押し付ける必要はない。人柄を理解するための情報の一つくらいでとらえてほしい。

36歳、未婚、彼氏なし、正社員経験なし、18年間アルバイト生活。
これらを何かしらの判断材料にせず、ただの情報だと思ってくれたらもっと楽に生きれる人はたくさんいるだろう。

勤務時間以外も尽くせるほどのやりがいをもって働ける仕事に出会うことはそうそうない。恵子にとってはそれがコンビニでのアルバイトだった。そう考えたら恵子がコンビニ人間として生きていくことは他人にどう思われようとも自分を幸せにする選択なのかもしれない。

年を取るほど「普通」であることを押し付けられることが増えるだろうが、自分が幸せに過ごせるかを基準に選択していくことも大事なことだと思う。


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