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中途半端な欲望はどこにも辿り着かない

 袋入りのインスタントラーメンを作る際、指定されている量より水を100mlほど少なめにしてスープを濃い目にする。それもただのお湯ではなくて鰹節から採った出汁を使い、茹で時間は短くして麺を硬めに仕上げる。同時に冷蔵庫にあった肉や野菜、たまごなんかを適当に追加して調理する。そして、お湯で温めておいた器に盛り付ければ完成となる。最近のお気に入りはラ王の醤油味である。
 インスタントラーメンに手間を掛けるくらいなら、もっとちゃんとしたチルドのスープと生麺がセットになったタイプのものを買った方が良い気もするし、なんならラーメン屋に行く方が早い気もする。その場で出来る限りのベストを尽くすという発想自体は結構だが、このような中途半端な欲望はどこにも辿り着かない。僕はこんな風に「ラーメン欲」を因習的に下げているせいで、本当に美味いラーメン屋に出会う機会を逃し続けているのである。
 そもそもラーメンに対してそこまでの情熱があるのかと自問してみたが、多分ある。別にラーメンブログを運営していたり、各地の名店を回ったりする訳では全然ない。だが、好きな食べ物を考える時にラーメンは結構上位に食い込んでくる。愛というほど大袈裟なものではないが、このちょっとした好意のような感情に対して僕はもう少し真剣になるべきだろう。

 今まで食べてきた全てのラーメンの中で最も印象的だったものを一つ選ばなければならないとなると、僕は名古屋のら・けいこという店のラーメンを選ぶ。いわゆる二郎インスパイア系で、うどんくらい太い極太麺にくど過ぎる醤油豚骨スープ、大量のキャベツともやしにチャーシューとメンマが乗っている。食べている途中からちょっと後悔が始まり、食後には二度と来るかと思ったりもするのだけど、これが病みつきになるのだ。一度当時勤めていた会社の同期を何人か連れていった際には全員が否定的だったので、それくらい評価の分かれる店ではある。しかし個人的には、その強烈な味が学生時代の数多の思い出に紐付いているのも相まって、ちょっと特別なラーメンなのだ。最後に食べたのは遥か昔なので近々訪れようと目論んでいる。

 一方、僕は筋トレに励んでプロテインを飲んだりサプリメントを何種類か摂取したりもしている。ブロッコリーと鶏肉を買い込んでまとめて茹でておき、タッパーに保存しておいて少しずつ食べていくのはルーティーンとなって久しい。ジムに通っていた時期もあるのだけど、ここ数年は自宅でトレーニングを行なっている。ラーメンにもっと真剣に向き合うのならば、もう少しこちらも本腰を入れた方がいいかもしれない。

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